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クレノの為に~sideレイ~
しおりを挟む(やっと会いに行ける。)
生徒会の仕事が終わり、一週間ぶりに時間が空いた私はすぐさまクレノを茶に誘うべく普通科の教室へと足早に向かった。
だが教室に着き中を覗いたが、クレノの姿はどこにもない。
教室の中にいた生徒達に聞いて回っても、どこに行ったのか分からないと言われてしまう。
今日は諦めて戻ろうかとも思ったが、会いたい気持ちが抑えきれずクレノを探し回った。
そして噴水の前を通った時。
なにやら噴水の前が騒がしいなと不意に顔を向ければ、私が探し求めていたクレノと、そのクレノを囲うように立っているノア・カーティスとその取り巻き共が見えた。
(何をしているんだ?)
そう思いながら、私はゆっくりとその集団へと近付く。
だが、次の瞬間.....
「僕に......伯爵家の次男であるこの僕に、たかが貧乏子爵の次男風情が!!」
ノア・カーティスが手を振り上げた瞬間、私は走り出し、ノア・カーティスが振り下ろそうとしていた腕を強く掴んだ。
(私の大切な人に....よくも.....)
私がこの場所を偶然通らなければ、クレノは傷付けられていただろう。
ノア・カーティスに対しての怒りが私の身体の中を渦巻き、今すぐこの場で殺してやろうかとも思った。
だがなんとかその殺人衝動を抑え、今までにないほどの怒りをノア・カーティスにぶつけた。
私に許しを乞い、足に縋りついてきたが許すつもりは毛頭ない。
今まではこの男が誰になにをしようが、家の権力を使い気に食わない生徒達を退学させていようが私には関係ない、どうでもいい事だと思っていた。
だが今回は違う。
この男が学園に在学している限り、クレノは嫌がらせを受け強制的に学園を退学させられてしまうだろう。
大切な人が傷付くのも、会えなくなってしまうのも嫌だ。
(この男を退学させてしまおう。)
そこからの私の行動は早く、すぐさま学園長並びにノア・カーティスの父親であるカーティス伯爵を呼び出し、今回の件とその前から起きていた他の生徒達への悪質な嫌がらせを、証拠書類の数々と共に報告した。
「ノア・カーティスは生徒へ悪質な嫌がらせをし、その生徒を退学させていました。」
最初は二人共信じられないとでも言うような顔で私を見てきたが、証拠書類に目を通した途端、彼らの顔は次第に青ざめていった。
まさか自分の息子がそんな事をしているとも知らず、話を鵜呑みにして生徒達を退学させていた伯爵と学園長は怒りに震えながら書類を握りしめている。
そして話し合いの結果、ノア・カーティスは退学処分となった。
学園長と伯爵との長い話し合いが終わり、今度こそ茶に誘おうとクレノがいる場所へと私は足を向けた。
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