俺はモブなので。

ときめいてなんか

「気持ちもスッキリしたし、お茶でもしたい気分ね。

クレノはこの後空いてるかしら？一緒にお茶をしたいんだけど.....」

しばらく時間が経ち落ち着いたのか、シャーロットが俺をお茶に誘ってきた。


「ん？うーん....どうかな....」

今日はいつもの第二皇子との時間がなかった。
だからこの後もしかしたら誘われるかもしれない。そう思った俺は、シャーロットの誘いを受けようか悩んだ。

そんな渋る俺に、シャーロットが言葉を続ける。

「一緒にお茶しましょうよ！昨日友人になったばかりだから、私はクレノともっとお話してクレノの事をもっと知りたいのよ！！」

「お...おう....」


シャーロットからの圧にたじろぎながら、俺は今日くらい良いかな。とシャーロットの誘いを受けようと口を開いた。


「分かったよ。じゃあ行こ「クレノ！！！」

「へ？」

声を出した瞬間大声で名前を呼ばれ、驚いた俺は声がした方向へと目線を向けた。

そこには.....


「殿下！？」

急いでいたのか、息を切らしている第二皇子の姿があった。


「クレノ！！」

俺の名前を呼びながら第二皇子が近付いてくる。そして俺の前まで来たかと思えば....

「どうし....わっ...！！！ちょ....殿下！？？」

急に手を引っ張られ、それに驚いて顔を上げればすぐそばに第二皇子の顔があり、俺は第二皇子の香りに包まれた。

そして自分の置かれている状況を把握した瞬間、俺の顔に熱が集まるのを感じた。

(え...俺今....第二皇子に抱き締められてる！？)

気付いた時には、第二皇子に正面から強く抱き締められていた。
第二皇子の行動に驚きを隠せない俺は、なんで急に自分を抱き締めたのかと頭の中が混乱する。


 「あ、あの....殿下？こ、これはその...あの....恥ずかしいというか、なんというか....と、とりあえず離して.....」

「ダメだ、離さない。」

動揺して噛みまくっている俺の頭を撫でながら、第二皇子がため息混じりに言葉を発した。
 

「お前を茶に誘おうと探し回ったが姿が見当たらなかったから、もしや私が知らぬ間にまた何かよくない事があったのではと....

よかった....お前が無事で、本当に......」

そう言って安心したように声を出す第二皇子に、俺の心臓が大きく跳ね上がる。


(俺の事、心配してくれたんだ.....どうしてか分からないけど、凄く嬉しい......)

ドクドクと早くなっていく心臓を手で押さえつけながら、俺は第二皇子を見つめる。

(近くで見るとマジイケメン.....まつ毛長いし肌綺麗だしカッコイイ.....

って何考えてるんだ俺は！仮にもこの国の第二皇子で攻略対象の一人だった、それも俺と同じ男だぞ！！)

ジッと見つめている俺に気付いたのか、目が合った第二皇子が優しく微笑んだ。

そしてまた、俺の心臓が大きく高鳴る。


(っ.....違う！俺はときめいてない！断じてときめいてなんかない！！)

そう心の中で言い聞かせながら恥ずかしくなった俺は第二皇子から視線を外し、赤くなった顔を隠すように皇子の胸に顔を埋めた。