俺はモブなので。

サイドストーリー③皇太子の復讐1

前世を思い出した時は一週間発狂するくらい狂った。


その後二週間もの間熱が出て精神が壊れかけたが、家族のおかげでなんとか立ち直った。


アイツはもういないんだ。

そう思ったのに...


「大丈夫かい？」

「あ...、し...皇太子殿下....」

差し伸べた手に触れられた瞬間、嫌悪感で気持ち悪くなった。完全な拒絶反応だ。

(この男は...)

話をしていく度に気持ち悪い笑み。そして癖のある動きが目につく。

すぐに前世で自分をイジメたアイツなんだと確信した。


カグラとの出会い後、初めの頃は復讐なんてせずに周りの人達がカグラの被害に遭わないように自分が犠牲になろうとカグラと恋人同士になる事を決意し、あたかも自分がカグラに惚れ込んでいるという演技をし続けた。


「シン様ぁ...」

猫なで声で身体を寄せられる度に嫌悪で蕁麻疹が出てきたが、必死に我慢する。

「カグラは可愛いね。」

早く寝てほしくて甘いジュースだと偽り強めの酒を浴びるほど飲ませたが、逆効果だったらしい。

カグラは焦点の合わない目で八杯目の酒を飲み干す。


「...ねぇ、カグラ。」

「なぁに？」

「カグラはどうして私を好きになってくれたのかな？」

酒が回っている内に聞きたい事でも聞いておこうと質問する。

カグラは私を好きで恋人同士にはなった訳ではない。私と一緒にいてもレイを目で追いかけているし男と遊びまくってるし、絶対に自分を好きな訳がないのだ。


「え～？殿下の事は好きですよ？かっこいいし！でもぉ、本当はレイ様の恋人になりたいんですぅ！」

カグラはここが前世で遊んでいたゲームの世界で自分は主人公に転生したんだと、レイを攻略する為にはまず皇太子である自分を攻略しないといけない事など、頼んでもいないのにペラペラと話してくれた。

「そうなのかい？じゃあカグラは前世では亡くなってこの世界に来たんだ？」

「そうだよ～。前世で殺されちゃってさ～」

「え？殺された？」

「うん。僕がいじめすぎて自殺しちゃった子がいたんだけどね？その子の母親が僕を線路に突き飛ばしてさぁ。電車に轢かれて死んじゃった。」

「...え？」


その言葉を聞いた瞬間、自分の心臓がズキズキと痛みだした。