8 / 120
第1章
8.女神見習い、神様に会う
しおりを挟む加護を与える機会は少なくなりつつも、まだ忙しく過ごしていたある日ーー
その生活は突如終わりを迎えることになった……
女神降臨という名の異世界トリップから15日目のことだった。
あの時、気づくべきだったのだ。
女神は数百年ぶりの降臨だというのに……人々が最低でも1年に1度は加護を授かっていたということに。
そう、神様が降臨したーーーー
いつものように部屋へ運んでもらった朝食を食べていた時……教会が騒がしいことに気づいた。
私がこの世界にやってきた時と同じような鐘の音が鳴り響いている。
何か起きたのかな? 事件とか……不思議に思っていると慌てた様子の司祭さんが部屋に飛び込みこう告げたのだった。
「女神様っ! 本日、大地神アルネルディ様がご降臨なさいましたっ」
……は? 神様降臨?
まず思ったのは……神様って他にもいたの?
じゃあ、私が無理して女神様やる必要なかったんじゃ……ということだった。
思わず固まってしまったのも無理ない、よね?
「女神様、神様は西地区の教会に降臨なされたそうです」
「……はぁ」
その神様は他の教会に降臨したらしい。
ちなみにファルニトにはいくつか教会があり、中には貴族の地区や孤児院が併設された教会などがある。私が降臨したのは北と東の中間にある教会だそう。
「……その教会に案内してください。ご挨拶がしたいのです」
動揺を隠し、とにかくその降臨した神様に会うべく、ざわざわする心を何とか落ち着け教会へ早足で向かう。
西地区の教会には鐘の音で神の降臨を知った者が集まりだしていた。
そして、その中心には遠目からでもはっきりとわかるオーラを放ち、いかにもご利益がありそうで人当たりのよさそうな白髪頭の神様がいたーー
司祭さんたちが気を利かせたのか、奥の部屋で今は神様と2人きりだ。
「はじめまして、女神見習いをしております。エナと申します」
「おぉ、お主がエナか……噂には聞いておったが誠だったのだな。わしは大地神アルネルディだ。よろしくのぉ。気軽にアルちゃんと呼んでくれ」
噂になるって……それに流石に神様にちゃん付けはできないでしょ……
「あの、アルさん?……いくつか質問したいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
さん付けにちょっと不服そうだったけど、頷いてくれたので聞きたかったことを質問していく。
「神様の降臨というのは頻繁にあることなのでしょうか? 同じ土地に同時に複数の神様が降臨して問題はおこらないでしょうか……そして私が女神の代わりをしていてもよいのでしょうか?」
矢継ぎ早に質問しすぎたかと思ったけど、アルさんは気にすることなく教えてくれる。
「わしは、かれこれ約30年間、ふた月に1度程この街にいくつかある教会にランダムに降臨しておる。降臨後はだいだい5日ごとに教会を移りまんべんなく回っておる。それにのぉ、同じ土地に2人以上の神が降臨することも特段珍しくはないんじゃ。よっぽど仲や相性が悪くなければ問題はないので安心せい」
「そうですか……」
神様ってたくさん降臨してるんだ……
「女神見習いに関していえば問題ないわけでもないがの、責められるのはあ奴であってお主ではないわ……突然違う土地に飛ばされ、さぞ混乱しおののいたであろう。ましてやその力を悪用せず、女神の代わりをしっかりとはたしているではないか。だから気に病む必要はないぞ」
「……ありがとうございます」
あの女神様が数百年前に降臨したきりなのに理由は多々あるらしいが、その多くは女神がめんどくさがり時間だけが過ぎていたということらしい……女神様さぼりすぎ。
ほかの理由は女神フィラに聞きなさいと言われてしまった。
そうか……この世界で女神として生きる以外にも道があったんだ……
時間の許す限り、アルさんに知らなかったことを色々と教わった。
この国の教会は国が運営しており税を納めていれば基本的に誰でも利用可能なこと。
教会さえあれば神様が降臨してくれるかもしれないと小さな町でも教会がいくつもあるということ。
普通、国が教会を運営すれば問題も起こりそうなものだが、神がそこかしこ降臨するため下手なことができない状況にあり、教会について悪さをすると過去には天罰が下ったという話もあるらしい。
「実際にはお仕置き程度じゃよ」
ほんとかな……神様のお仕置きって結構だと思うけど。
それから、人が少ない土地やそもそも神を信じない人が多いなど、信仰が薄い地では神の降臨の頻度が開くこと。
降臨するためにはある程度の信仰が必要で、それと引き換えに降臨しているということ。
つまり、降臨の頻度が高い神様は人々にとても感謝されていたり、信仰の厚い地域だったりするらしい。
降臨の頻度は何も地上だけでなく天界での立場も変わるといい、降臨の頻度や信仰の厚さで神様たちの立場が決まり、会議などの発言に力を持ったり議長なども務めるんだとか。女神フィラも10年に1度ぐらいなら余裕で降臨できるらしい……
天界の裏事情ですね……
ちなみに、神様たちは毎日会議会議会議で降臨するのは息抜きも兼ねていて
「降臨期間中は1度でも天界に戻ると溜まった書類や報告が待ち受けているからの……なるべく地上で羽を伸ばすんじゃ」
「へえ、そうなんですね。降臨して天界に帰るときはどうするんでしょうか?」
「ふむ。それは様々じゃな。神によって降臨の期間はバラバラでの。1日で帰ってしまうやつもいれば何か月も滞在する神もいるのじゃ。だから突然、神が消えてもみな不思議に思わず、それが当たり前だと受け入れているようじゃの」
ただの見習いにそこまで話してもいいんでしょうか……それにしても今の話を聞く限りアルさんはかなり立場の上の人な感じがする。
「あの、女神フィラさんはどういった立場なのかお聞きしても?」
「あやつはただの問題児じゃ。会議には出んし、ほとんどのことを部下に丸投げしておる。皆ほとほと手を焼いておるわ……」
やはり部下のコルドさんは苦労人の様子です。
そうなんだぁ。って素直に驚いてしまった……えっ? 女神の知識に含まれてるだろって……残念ながらありませんでしたけど何か。
女神様……都合の悪いことは知識から削除されているんでしょうか?
「色々と教えていただきありがとうございました」
もうそろそろ教会が開く時間なのであまり長居もできない……話を聞き終え、若干顔色の悪くなった私を見たアルさんは
「お主も大変じゃな。何か困ったことがあればいつでも相談に乗ってやるわい」
笑いながら連絡先を教えてくれました。優しい言葉に思わず泣きそうになってしまった……女神ひとりで判断しちゃだめだね。
------
【交信】
新たな連絡先 《大地神アルネルディ》が登録されました。
------
こうして神様との邂逅を終えて手に入れたもの。
神様の連絡先。知らなかった知識。この世界で初めて常識のある神様の知り合いでした。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる