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第1章

11.女神見習い、初めての買い物(2)

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 感謝ポイント以外に必要な物を買うために市場へーー

 冒険者の服を着て外套のフードを目深にかぶり、教会からこっそり抜け出す。
 簡単に抜け出すとか言ってはいるけど……これさぁ、地味に難易度高いんだよね……教会内って静かだし少しの音でも結構響くから。
 まぁ、そのおかげで司祭さんがマシンガントークしに部屋に来るのを事前に察知して寝たふりが出来てたんだけどね。

 服も別に市民の服でもよかったけど、どうせこれ着て移動するなら移動するなら汚れてもいい方にした。   
 市民の服がまだコンパクトな状態だったってのも大きな理由だけど。えへ。

 教会から路地をまっすぐ進むと大通りが見えてきた。

 「割と近くて助かった……迷子になったらひとりで教会に戻れる気がしないからね」

 大通りに出ると結構遅い時間なのに、広場はにぎわっていて、お店もたくさん並んでいた。

 「お店の良し悪しなんてわからないし、とりあえず目に付いた店に入ろうかな」

 最初に入ろうと思ったお店はよく教会に訪れる人のお店だったので、慌ててフードを深くかぶり直し、なるべく教会に来ていない人のお店へーー


 ~衣料品店~

 「いらっしゃいませ」

 小綺麗な店内に入ると優しそうな老夫婦が迎えてくれた。
 店内には中古の古着がたくさん置いてあり、店の一角には試着ができるスペースまであった。
 へぇ、こんな風になってるんだ……

 キョロキョロと店内を見回しつつ、中古コーナーでサイズが合いそうで割ときれいな服の上下をいくつか選ぶ。

 「すみません。これを試着してもいいですか?」
 「はいはい。こちらにどうぞ」

 試着室でアレコレ試着した結果、触り心地がよく寝間着や汚れ仕事にもできそうな服に決めた。
 感謝ポイントの方がお得っぽいけど、やっぱり寝るときは着替えたいし……教会で用意されていた着替えは置いていこうと思ってる。
 なんとなく、教会から何かを持って出るのはためらう。

 「あの、エプロンとかってありますか?」

 ポーションとか作れたらいいなって思ってるからあったら便利かなって考えたんだけど……

 「エプロンねえ……必要な時はみんな生地買って自分で縫うから……」
 「そうですか……」

 そっかー。新品が欲しい場合はオーダーメイドするか、布を買って自分で縫うんだ。
 それで生地のコーナーにたくさん布が置いてあるのか……

 「……ばあさん、あれがあったんじゃないか?」
 「ああ、そうでした。お嬢さん、ちょっと待っててくれるかい?」
 「はい」

 おばあさんが店の奥へ行き待つこと数分……その間にいくつか袋も選んでおこう。

 かなりの量になった仕分け用の袋を選び終えた頃、おばあさんは真新しいエプロンとともに戻ってきた。

 「これね、孫娘が嫁に行くと決まった時に作ってやったんだけど……取りやめになってね。あ、心配しないでおくれ。今はもう違う人に嫁に行って幸せに暮らしてるから。ただ、縁起が悪いから孫娘には違うものを贈ったのよ……」

 おばあさんが見せてくれたエプロンは白地に様々な花の刺繍が入っていて、使うのがもったいないと感じてしまうほどとても綺麗なものだった。
 ……きっとこのエプロン、お孫さんが幸せになるように願いを込めて作ったんだろうな。

 「やっぱり嫌だよね。縁起が悪いもんなんて……」
 「いえいえっ! あまりに綺麗なので見とれてしまいました。ぜひ、譲っていただきたいです!」
 「そうかい? じゃあ、小銀貨1枚でどうだい?」
 「いやいや、安すぎませんかっ?」

 だって、さっきの中古の上下だけで小銀貨5枚するんだよ? どう考えても安すぎだよ……

 「いいんだよ。もらってやっておくれ」
 「でも……」

 おじいさんもおばあさんも値段を変える気はないようだ。

 「ありがとうございます。大事に使わせてもらいますね」

 そう言うとふたりは嬉しそうに笑った。こちらの胸まで温かくなった。

 その後、布巾やタオル代わりになりそうな生地も多めに購入した。

 持参した背負い袋がかなり膨らんだけど、とてもいい気分だったので、店を出た後にこっそり、ふたりとお店に女神の祝福をかけた。



 ~食料品店~

 衣料品店を後にし、近くにあった食料品店へ――

 表には瑞々しい野菜や果物が所狭しと並んでいる。

 「お、美味しそう……」

 感謝ポイントで交換した携行食以外、食料が全然ないから長持ちしそうなものをいくつか買いたいな……

 「おう、嬢ちゃん。いらっしゃい」
 「こんばんは、旅にお勧めの食材って何がありますか?」
 「うーん、そうだな。まず干し肉は持ってた方がいいな。ナッツ類とパンもあれば便利だな。あとはジャガイモとか玉ねぎなんかは長持ちするが、なんせ重いからな……」
 「あ、多少の重さは平気です」

 ふっふっふっ、わたしにはストレージさんがあるからね。

 「お、そうか。まあ、道中に料理するんじゃなければ携行食を持っていくのがてっとり早いんだがな……」

 料理……するかな? でも携行食は感謝ポイントで交換したから……

 とりあえず干し肉とナッツ類とパン、ジャガイモと玉ねぎを多めに購入することにして、塩や油も売ってたから購入。
 あ、この国は南に海があるらしく塩もそんなに高くなかったよ。

 あとリンゴがおいしそうだったので思わず買ってしまった。道中に木の実とかなってないかなぁ……
 

 若干、親父さんがそんなに買うのかって驚いてた気もしないでもないけど、同じものを買えば袋を気にしなくていいから、ストレージの枠も埋まらずに済むし……

 ストレージも時間経過しないってことは腐らないってことだよ! 
 少し買い過ぎた気もするけど……ほ、ほらっ腐らないからね!?

 他のお客さんもいて忙しいはずなのに、一緒になって悩んでくれた親父さんのおかげで満足する買い物ができた。

 「ありがとうございます。おかげで助かりました」
 「そりゃよかった。旅、気をつけてな」

 ただ、料理は全然自信ないから毎日同じもの、もしくは干し肉とパンだけになりそうな予感。気が向いたら料理に挑戦してみようかな?

 そういえば野菜や動物なんかの名は一部を除き元の世界のものとほとんど変わらないみたい。
 流石に元の世界に存在しない野菜や果物もあったけどね。
 多少のニュアンスの違いなんかは多分、言語翻訳スキルが解決してくれているんだと思う。 
 1から言葉を覚えるのは大変だし、このスキルあってよかったよ。なかったら早々に詰んでたかもしれないし……

 ここでも店を出た後にこっそり親父さんとお店に女神の祝福をかけた(2回目)

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