50 / 120
第4章
50.女神見習い、少女を街へ連れていく(1)
翌日……
「まず、リディに話しておくことがあるのね」
「……ん」
「街までは瞬間移動をします……って言っても森の浅い部分までで、そこからは徒歩で向かうんだけど」
「……ん」
なんか反応薄いな……もっと驚くかと思ってたよ。
「前に見たの……」
どうやら私がどうやって日帰りするのか気になってこっそり見ていたらしい……
「そうだったの……あと門では門番さんが言うことに従ってね……大丈夫かな?」
こればっかりは従ってもらわないと街に入れないからなぁ……下手に逆らうと面倒なことになりそうだし
「……ん」
「じゃ、早速行こうか」
一応リディと手を繋ぎ、ブランを肩に乗せ……いつものように瞬間移動する。
「……よし。大丈夫?」
「ん、平気」
森を出て、草原を歩き門が見えてきた。リディの表情は硬い。
「リディ、無理なら今度にしてもいいんだよ?」
「……ん、大丈夫。行く」
リディの決意は固いみたい……
「わかった……もし瘴気が出そうになっても安心して。ちゃんと結界で周りに影響が出ないようにするから」
「……ん」
「それと、ブランは登録が済むまではリディの外套の中で大人しくしててね」
ブランは渋々ながらリディの外套の中へおさまった。うん、だいぶ涼しくなってきたから外套をまとっていても不自然じゃない。
リディと手を繋ぎ門へーー
「おはようございます」
「おう……その子は?」
なんてこった。強面お兄さんじゃないですか……リディ平気かな?……まったく怖がってない、よかった。
「私の連れです……身分証は今から取りに行きます」
「そうか……悪いが一応プレートに触れてくれ」
リディはおずおずとプレートに触れる……白く光った。
「よし、犯罪歴はないようだな。いくら連れでも身分証がない場合は街に入るときに保証金として銀貨1枚をもらうぞ」
「はい」
バッグから銀貨を1枚取り出し、門番さんへ渡す。
「じゃあ、これが木札な。繰り返しになるが、身分証を作ったら3日以内に木札と一緒に門へ持ってきてくれれば銀貨は返却するからな。ただし、3日以上過ぎると銀貨は帰ってこないから気をつけろよ」
「わかりました」
ふう……顔は強張ってるけどリディも頑張ってる。
「じゃ、冒険者ギルドへ行くよ」
「……ん」
リディはフードを深く被り、下を向いて歩いている……私が手を繋いでいなかったら今すぐでも逃げていてもおかしくない。
少し歩くとギルドが見えてきた。
「多分、今の時間は人も少ないと思うし、すぐ奥の部屋に案内してもらえるはずだから……」
「……ん」
ギルドへ入ると……
「エナさん、お待ちしてました」
「カーラさん、おはようございます」
よかった……あまり人もいないし、騒ぎを起こしそうな人もいないみたい。
「早速ですが、奥へどうぞ」
「はい」
緊張しているリディの手を引き、慣れた奥の部屋へ進む。
リディと共に椅子へ座り、ストレージからポーションを出してテーブルへ置く……一応ポーションの買い取りがここを使う名目だしね。
「はじめまして、カーラです」
「……リディ」
「カーラさん、登録お願いします」
「かしこまりました。では、こちらにご記入と手数料として小銀貨1枚いただきます。記入はエナさんの代筆でも大丈夫ですよ」
「わかりました。リディ自分で書く?私が書く?」
「……ん、自分で書く」
リディが記入している間に小銀貨1枚をカーラさんに手渡す。
「……ん、書いた」
「はい、ありがとうございます。では次にこちらに手をかざしてください。犯罪歴の有無を調べさせていただきますね」
リディが大人しく手をかざすのを見守る……本当はお茶を入れたいんだけど離れたら不安だろうし、我慢がまん。
「はい、犯罪歴はないようですので、このまま手続きに入りますね」
カーラさんが登録作業をしている間に、リディと一緒にお茶を入れる……うん、美味しいな。このお茶どこのなんだろ? ギルドで扱ってないのかな……
「はい、これで冒険者登録は完了しました。もし、紛失してしまった場合は再発行に銀貨3枚かかってしまうのでくれぐれもなくさないようにお気を付けください。こちらは身分証のみでなく冒険者のギルドカードとしても使用できますので、その際は受付で毎回提示してくださいね」
「はい」
リディもコクリと頷いた。
その後、ギルドの説明をひと通り聞きギルドカードを受け取った。
「今回はエナさんが後見人としての登録ですので冒険者のランクはEまでしか上がりません。13歳になれば後見人も必要なくなりランクもさらに上げることができます。現在リディさんのギルドカードにはエナさんが後見人だと記されていますので……」
「へぇ……」
後見人の自覚を持たないと……変なこととか犯罪などリディが不利益を被るようなことはするなってことだよね。もちろんするつもりはないけど。
「あとは……従魔登録ですね……あの、魔物はどちらに?」
や、やべー……ブランのこと忘れてたよ……ずっと外套の中だった。
「……ん」
リディが外套を開けると中から勢いよく飛び出してきたブランはちょっと怒ってるっぽいな……
「あ、この魔物です」
「暗殺者じゃないですか……」
カーラさんは途端に緊張しているみたい。
「暗殺者?」
「ええ、冒険者のなかでは暗殺者といえばこのキラーバードなんです」
「へー」
「警戒心が強い上、隠密スキルを保持しており上空から音もなく降下し、鋭いくちばして相手を背後から貫くことからそう呼ばれているんですが……」
あー、結構危険な魔物だからカーラさんも緊張してるのか……
「あ、ブランはリディの言うことは聞くし、リディの為なら少しは私の言うことも聞きますので……」
「そ、そうですか……」
なんか半信半疑っぽいな……でもここで信頼を得ないと討伐されかねないし……
「ブラン、ちょっとこっちきて」
ブランはこっちに勢いよく飛んできた……ねえ、わざと翼で顔をバサバサしてない? 嫌がらせかな、ねぇ……ずっと外套の中にいたのが窮屈だったかな。
「ブラン、『はい』なら右腕に『いいえ』なら左腕に乗ってくれるかな?」
ブランは右腕に乗った。よしよし。
「ブラン、リディのために協力してくれるかな?」
ブランは右腕に乗った。
「ブラン、街中でむやみに人を襲ったりしない? あ、もちろんリディが危険な場合はのぞくよ」
ブランは右腕に乗った。
「ブランはリディを危ない目にあわせますか?」
ブランは左腕に乗った……ブランさん爪が食い込んで痛いんですが。そんなこと聞くなっていう意思表示ですか。
「カーラさん、こんな感じでどうでしょうか? リディは私よりももっとブランと意思疎通ができますけど」
「……そうですか。従魔には主人がわかるよう印を身につけてもらうんですけど……もう付いてますね」
ブランは胸を張るように首輪を見せつけた。はいはい……リディとお揃いですね。よかったですね。
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。