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第6章

79.女神見習い、家が神の宿屋になる(1)

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 お正月は気分的に家でまったりした。ご飯はユリスさんのデリバリー……ま、自分で取りに行くんだけど。
 みかんの代わりにオレンジ食べて雰囲気を出してみたり……リディも不思議そうにしていたけど、エナの国の作法ならって付き合ってくれた。

 「あー、まだのんびりしたいけど……ポーション売りに行かないといけないし、最近ユリスさんのデリバリー?に頼ってたから食料がなくなる」 
 「ん、わかった」
 「リディはどうする?ユリスさんに料理習う?」
 「ん、そうする」

 新年のせいか街も賑わっていて市場にもいつもはいないお店が出店してたりして、楽しかった。


------

 【交信】
 《愛の女神 メルディ―ナ》から交信されています。

    [はい(許可)] [いいえ(拒否)]

------

 「あれ、メルさんからだ」

 [はい]を選択する。

 『エナちゃん、元気~?』
 「メルさん……はい、元気です」
 『ワタシさっき降臨したのよ!』
 「そうなんですね」

 街へ行った時に冒険者が多いと思ったら年越しのせいじゃなかった……メルさんの降臨時期だったらしい。半年ぶりくらいかな?

 『うん、だから今日からお泊まりしてもいいわよね? アルがよくてワタシはダメなんてことないわよね?』

 うわー、これ断ったら後々まで響くやつだ……
 
 「はあ……」
 『場所とか同居人のこともアルに聞いてるし安心してね! 夕方にはそっちに行くからー』

------

  【交信】
 《愛の女神 メルディ―ナ》との交信を終了しました。

------

 はぁ……リディにまた説明しないと……


 「ねえ、リディ……今日お客さんが来るみたい」
 「ん、アルさん?」
 「ううん……それがね……女神様」 
 「……わかった」
 「うん、多分泊まると思う……」
 「ん」
 
 はぁ、とりあえずわかってくれたみたいだけど……大丈夫かな?


◇ ◇ ◇


 「エーナーちゃーん、メルお姉ちゃんが来たよー」
 「あ、メルさん来たみたい」
 「ん」

 玄関を開けると庭には不釣り合いな美人さんが佇んでいた……オーラあるなぁ。

 「メルさん、お久しぶりです」
 「やーん、なにこの子可愛いっ」

 メルさんは私に見向きもせず、リディに抱きついてしまった。あちゃー

 「メ、メルさん……離れてあげてっ」
 「ん、離して」

 ブランがそわそわしてる。私だったらめっちゃ怒るところだけど、女神様相手に怒っていいのか葛藤してる。

 「ごめんなさいね……可愛くて、つい」

 あーあ、メルさんに抱きつかれたから、リディめっちゃ警戒しちゃったよ。

 「はぁ。リディ、ブラン……こちらは愛の女神のメルディーナさん。メルさんこちらはリディとブランです。抱きつくのは控えめにお願いします」
 「はぁい。リディちゃん、ブランちゃんワタシのことはメルお姉ちゃんて呼んでね?」
 「…………ん、メルさんよろしく」

 いやー、アルさんより距離がありますね……

 「じゃ、ワタシも張り切って改装してもいいかしら?」
 「え? 別に必要ないですよね?」
 「だって、アルがしてるのにワタシがしないなんてっ」

 なんか力説されてしまったので……つい

 「あ、お願いします」
 「よーし!張り切って改装するから外で待っててねー」
 「はい」
 「ん」

 言われた通り外で待つことしばらく……

 「リディ、大丈夫?」
 「ん、ちょっとびっくりした」
 「だよね……私でも驚くよ」
 「ん……なんか家が……」
 「えっ」

 なぜか外見まで綺麗な2階建ての建物に変貌した……アルさんに張り合った結果がこれか。結界大丈夫かな?

 「メルさんすごいね……」
 「……ん、すごい」
 「よーしっ、できたよー。結界はギリギリだけど今のままで大丈夫だよ」
 「そうですか……」

 こうして、メルさんの滞在がはじまった。少し広くなったお風呂にリディと入りたがったり、断られて私を誘ってきたり……リディに警戒されてガッカリしたり……それでも浄化は毎日して少しずつ距離を詰めようとしたり。


 数日後にやって来たアルさんは少し悔しそうにしていた。

 「アルさん、こんにちは」
 「うむ。どうやらメルに先を越されたようじゃな」
 「ええ、まあそうですかね」
 「うむ。すっかり宿屋じゃな」
 「アルさん、宿みたいになっちゃってますけど……ここって宿として機能しますか?」

 なし崩し的にアルさんやメルさんが止まることで宿っぽくなってて少し気になった……

 「機能するも何もすでに何人か神が泊まったり滞在しておるぞ。とは言ってもここ数日のことじゃが」

 ……え、なんだって?

 「宿代は大抵宿全体への加護じゃな……あとはこっそり、家の家具が綺麗になったりしておるな」
 「えー、そんな……なんのもてなしもしてないんですが。というかいたのすら知らないんですけどっ。部屋だって……」
 「まぁ、あやつらはあまり姿を見せぬから気づかなくても仕方ないわ。それにわしが天界で自慢しとったからの……そのうちたくさん泊まりにくるんではないかの?」
 
 アルさんに言われてステータスを確認すると称号に神様の宿屋主人てなってる。
 リディは神様の宿屋看板娘、ブランは神様の宿屋用心棒だって……

 「あっ、そういえば昨日テーブルの上に紙?が何枚か置いてあったんですけど……」
 「おお、それも宿代じゃな……珍しいの。あやつまで来ているとは……」 

 どうやらこの紙は契約をするときに使える紙で金貨などを偽造しようとしたり、神の名の下に交わした契約の違反などに神罰を下すらしい。
 契約時に法と契約の神の名の下にと誓約することにより拘束力が増すらしく、その処理に忙しいため数少ない降臨しなくても問題にならない神様なんだとか。
 あー、ギルドの特許の時に聞いた神様かな……

 「てっきり置き忘れてたのかと……」
 「いや、宿代じゃな……ま、あやつは泊まるほど時間はなかったはずじゃから、見学代かの?」

 へー……って完全に宿屋と認識されてるじゃないですか。それにほいほい勝手に家に入られてたとか防犯面が……まぁ、神様相手に何言っても無駄ですよねー。

 アルさん、宣伝した責任とって改築してくれますよね……してくださいお願いします。神様が泊まれるくらいに。そしてお風呂とかトイレもするなら街の家に余ったやつください。あ、設置もおねがします。
 息もつかず一気に言い切った……だって隙間があったら断られちゃうかもしれないし。

 「うむ……」

 この家に関しては宿代としてアルさんがやってくれることになった。メルさんに先に改装された家を手直しできるのが嬉しいらしい。なぜか『神の宿屋』という看板まで設置されてたけどね……それを見てメルさんが悔しがったのはまた別のお話。

 街の家への流用は残念ながらできないようで、その場でコルドさんと連絡とって感謝ポイントの交換一覧に設置込みのお風呂とかトイレ、冷蔵庫、冷凍庫、キッチンなどを増やしてくれた。
 おおー……かなりのポイント消費だ。桁がひとつ違うね。だけど便利だな……今度、街の家に設置しよう。 
 あと、キュリエルさえ良ければ街の家のキッチンも変えてしまおうかな。そうしたらもっと美味しいご飯が食べられるだろうし……
 でも、全部交換したらポイント足りないかもなぁ。
 あ、ちなみに全て魔道具扱いらしいよ。

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