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第7章
83.女神見習いと受付嬢のお願い(2)
しおりを挟む「……ダンジョンですか? 訳を教えてください……それにどうして私なんでしょうか」
「それは……」
「いいよ、カーラ。理由は俺が話す」
「ジョセフ……でも、平気?」
「ああ、ステラ。大丈夫だ」
ジョセフに関わることなのかな?
「エナ……俺の弟のジャックは10日前、街の外の草原に薬草を採りに行った……これなら僕でも稼げるからって」
「はい」
「だが……帰ってきたその夜、突然高熱を出し寝込んでしまい……それからは弱っていく一方なんだ。草原には魔物なんて出ないはずなのに……教会に行ってもまだ女神様は降臨していなかったから、司祭に浄化を施してもらった。それもほとんど効果が無く……司祭も短期間でこんな悪化するなんて今まで見たことがない程だって……」
「そうですか……」
「ああ、とにかく力の付くものをと思い、なんでも試した。そして、エナの公認の中級ポーションがわずかに体調を好転させることがわかって以降、飲ませ続けた……ようやく5日前に女神様に浄化してもらえたが……今はポーションと女神様の浄化で生き長らえている状況なん……だっ……くっ」
ジョセフは顔を覆いそのまま黙り込んでしまう……
「ここからは私が。『深淵のダンジョン』で取れる材料で作るポーションが瘴気に効くらしいと話を聞いたの。でも、本当に見つかるかどうかはわからないし、レシピもはっきりしなくて……噂にすぎないかもしれない」
カーラは少し言いづらそうに
「それに間に合うかどうかも……エナには材料が見つかった時、どうにかそのポーションを作ってほしいのです。ジョセフの弟に効いたポーションを作れるエナにどうしてもお願いしたいくて今日ここに来てもらったの」
そんな訳だったのか……
「『深淵のダンジョン』は浅い階層は初心者向けだけど、下へ潜れば潜るほど危険で難しいダンジョン構造で有名で、その材料があると噂の場所もかなり下の階層らしくて。失礼は承知ですがエナはかなりの上位ランクなので腕も立つ。そう考えた結果エナしかいないんです」
「もちろん、ダンジョンで手に入ったものはすべてエナの物にしてくれて構わない。どうかジョセフとその弟のために協力してくれないか?」
「お願い……」
「お願いします」
「どうか、頼む……」
みんな頭を下げ、私の返事を待っている……まぁ、それぞれメンバーはギルドに関わってるっていうし、いくら秘密にしていてもランクは知ってるよなあ。
それについてどうこう言う気はない。そもそも公認になった時点である程度わかるのは仕方ないし。
それにしても強い魔物がいない草原(いたら絶対に話題になっているはず)で瘴気に侵されるなんてアレしか考えられないんだよなぁ……はぁ。
つまり、ジョセフの弟はその日呪われた人物と接触していた……というもの。
その人物から発生した瘴気に当てられ寝込んでいると考えられる。
それも、多少の呪いではここまで悪化はしない……かなり強い。それこそジョセフの弟の命を奪いかねない呪いだと思う。リディと同等の……いや、それ以上の。
瘴気に当てられた状態はいわば呪われた状態とほとんど変わらない。違うことといえば本人から瘴気が発生するかどうかぐらいみたい。
余談だが、瘴気にさらされてから時間が経ち過ぎると体が弱っていき抵抗力がなくなり完全に治すことができない。理由としては無理に浄化を続けると体が耐え切れず死亡してしまうため。
回復魔法を使えばいいじゃないかと思うが、なぜか瘴気が完全に浄化しきれていないと効果が出ないのだ。それなのにポーションはわずかながら効き目があるという。
つまり体力は回復させられるが瘴気には効果がないということ。
瘴気にさらされてから時間が経ってしまった場合の対処法はポーションで体力を回復させつつ、神様や教会で浄化をしてもらう。それを繰り返し打ち勝てるかどうかは本人の体力次第。時間がかかるため亡くなってしまうこともあるとか……
そうなることがないように教会には最低1人は浄化を使える者がいるが、やはり神と比べると効果に歴然の差が出るらしい。
呪われた人物でひとり思い当たるのはリディだけど、リディが原因ではないことは確かだ。
リディは草原まで行くことはない。行くとしても私と一緒だ。
それに最近のリディは滅多に濃い瘴気が発生しない。そもそも瞬間移動して街に直接来てるから草原を通ってすらないし……
うーん。強力な魔物が草原まで出てきた。もしくはリディ以外の呪われた人物か。どっちも噂になりそうなものだけど……はぁ。
それにしてもさ……さっきカーラが言ってた材料で作れるのってあのポーションだよね? リディにも使えるやつ。
アルさんにもらった材料で実験してできた解呪ポーション。さっき特許申請してきたばかりの……アルさんもたまたま手に入れただけで、使い道もなく持て余していたので宿代としてくれたらしく、魔結晶がどこにあるかまでは把握していなかったのでこれは大きな情報だ。
魔石はたくさんあるんじゃが……と残念がっていたのもつい最近の話だ。
ジョセフの弟がメルさんの浄化とポーションでなんとか生き長らえているということは正直あまり時間がないと思う。いつ命の灯火か尽きるか……話を聞く限り、そのダンジョンで探しに行くのは魔結晶のようだし、他の材料は比較的揃えるのが容易だ。
考える余地はない。行きます、即答です。
「わかりました。ダンジョンへ行きます。その代わりポーションの材料以外の物はきっちり等分にしてください。その他、ポーションに使える材料は遠慮なくいただきます。あとは、これが今持ってるポーションです。弟さんにどうぞ……上級じゃなくてごめんなさい。ダンジョンで材料が揃ったらそれも作りますね」
とりあえず手元にあった中級ポーション3本を渡し、1度状態を見たいと明日ジョセフの弟さんに会いに行く約束を取り付けた。
あー、納品前ならポーション腐るほどあったのに……しかも渡せたのは品質:可だけしかなかったよ。初級なら多少あったんだけどなぁ……
「ありがとう、ありがとうっ」
「でも、戦闘には全く自信がないので……」
今までの魔物に関しては、ほぼまぐれですからね……
「そこは俺たちが力の限りフォローしますから」
「ああ、もちろんだ!」
「「まかせて!」」
「よろしくお願いしますね。それと、カーラの言っていたポーションのレシピも多分わかると思います……さっき特許申請してきたので」
「「「「えっ」」」」
「すいません、こちらも事情があって……魔結晶はたくさん欲しくて」
「そ、そうですか」
目に涙を溜めて頭を下げたり驚いて固まっているメンバーをなだめつつ時間がないので、話を詰めることにした。
なるべく早い方が良いというので、明後日の早朝に出発。
装備は各自で用意し、道中の手配はカーラがすることに決まった。
一応自分でも準備しておこう。特にポーションの材料は念入りに準備しよう。
明日、ジョセフの弟にポーションを届ける約束をして早々に帰宅した。
リディたちにも説明しないといけないし、明日渡す分とダンジョン用にポーションも作らないと……
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