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第2章

22.女神見習いと伝説の魔道具師

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 「あ、エナお姉ちゃん、おはようっ」
 「ミーナちゃん、おはよう。あれ、ミーナちゃんのポシェット刺繍入れたの? かわいいね」
 「えへへ、これカーラ姉のぷれぜんとにおかーさんが刺繍してくれたのっ。今日は教会でお勉強があるからみんなに見せるんだっ」
 「見てもいい?」
 「うん、見るだけならいいよ!」

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 〈マジックバッグ 極小〉
 ポシェット型のマジックバッグ。
 ただし容量は極小のためあまり収納できない。
 紐の刺繍は母の愛がこもっている。特にマジックバッグに影響を与えない。

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 「あれ、これって」
 「ああ、これはカーラがダンジョンで見つけたのを誕生日にミーナにプレゼントしてくれたのさ。ミーナにせがまれて刺繍してあげたら、それから毎日寝る時もつけてるんだよ」
 「へえ、マジックバッグですか?」
 「エナちゃん、なんでわかったんだい?」

 おっと、やばい。

 「ミーナちゃんがポシェットに物を入れているところを見たので」

 これは事実。その時はたくさん入れてるなーって思ったんだよね。

 「そうか、エナちゃんはマジックバッグのこと知ってるのかい?」
 「いえ、あまり詳しくはないんですけど……」

 女神謹製のマジックバッグを持ってるなんて口が裂けても言わないよ!

 「そうなの……エナお姉ちゃんにミーナが教えてあげるね!」
 「うん、お願い」
 「えーっとね、マジックバッグはたくさんものが入るすごいバッグです!このポシェットもたくさんものが入るんだよっ!」

 うん、ごめん。それは知ってるかな……

 「といってもミーナのポシェットぐらいなら普通にカバン持った方が沢山入るんだけどね」
 「あとはねー、でんせつのまどうぐしカーティス・マールって人がいるよ!」
 「カーティス・マール?」

 おかみさんが代わって説明してくれるみたい。

 「伝説の魔道具師カーティス・マールっていうのは、現在確認されている魔道具の約7割を作り出したと言われる人のことだよ」
 「へえ、そんな人がいたんですね」
 「スキルを持っていたらしいけど詳しくはわからないね……残りの3割は神が気まぐれに残していくか、ダンジョンから出てくるぐらいって言われてる」
 「ねー、すごいでしょ!」
 「うん」
 「彼は数々の魔道具を作り出し、私たちの生活は劇的に改善されたんだ。十数年前に死んでしまったけど、彼はレシピを隠すことなく多くの弟子たちに魔道具の作り方を残した。それを弟子たちは作成し今も世に送り出しているのさ。ただ、レシピ通りに作るとはいえ魔道具師の腕や素材によって差は出るみたいだけどね」
 「へぇ……」

 おかみさん曰く
 基本的に神が持ち込んだものは珍しく効果も最上級。ダンジョンから発見されるものは程度はバラバラだが時にすごく貴重で値打ちの高いものも出るらしい。
 攻撃魔法が組み込まれた魔道具は制約がつくものも多いらしい。例えば街中では使用できない、一種類の魔法のみなど
 神やダンジョンから出た魔道具の仕組みを調べる研究者はいるのに伝説の魔道具師が残したもの以外作り出そうとするものはおらず、いても変人扱い。
 過去の研究結果として、ダンジョンで見つけた魔道具を誰でも使えるよう簡易化したものなんかもあるみたい。
 
 ただ、伝説の魔道具師が存命だった頃と打って変わり……現在、魔道具師はあまり人気のない職業。
 理由は魔道具師は残されたレシピ通り作るか、魔核や魔石の交換や魔道具のメンテナンスがメインになっているから新たに目指そうとするものは少ないとのこと。
 カーティス・マールは教えを乞うものに差別なくレシピや技術を教えたので、魔道具師の数も少なくない=職人過多で仕事があまりなくお金も稼げないらしい。


 伝説の魔道具師さんはトイレに不便さを感じていなかったということか……
 あれ、まさか簡易トイレとか見られたらやばいのかな……よし、私は何も気づかなかった。



 「うーん、じゃあマジックバッグは物によるってことですか」
 「そうだね、それなりのものは出回っているけど庶民には中々手が出せない価格だね。時間停止や大容量なものはまず貴重でオークション行きだよ。あとマジックバッグのパネルは他人には見えないから、長時間パネルを見て操作していると簡単にマジックバッグだとわかってまうから注意が必要。慣れないうちは中身の整理などは個室でやるのが無難かな。慣れてしまえばパッと出す分には全く問題なく便利だね」
 「そうですか」
 「それに中から大量に物を出さないか、自分で言いいふらさない限りぱっと見マジックバッグとは分からない。鑑定された場合をのぞいてだけどね……」


 基本的にマジックバッグは最初に本人登録をしているため、盗んでもただのバッグとしてしか使えないらしくあまり窃盗の心配する必要は無い。
 ただ、持ち主が死ぬと登録も解除されてしまうのでよほどいいものを持っている場合は命を狙われることがある。ただし中身は消失する、らしい。 
 ギルドで使用者登録を解除して売ることもできるが、特別な魔道具が必要で厳重に管理されている。
 時に粗悪品だとパネルは出てこないんだってー。まぁ入れられる数も少ないからパネルを見なくても困らないらしいけど……

 「ミーナのポシェットはカーラが上級ダンジョンに行った時に手に入れたらしいよ。時折、宝箱からマジックバッグが出でくるんだけど、中や大は稀でミーナのポシェットのように極小も多いのさ」
 「上級ダンジョンか……」

 あまり縁がなさそうだけど……

 マジックバッグ(中)以降になると市場に出ると即席オークションになることも……特に冒険者や商人の間で熾烈な争いになるんだって。

 私のマジックバッグ(ショルダーバッグ)は少しでも元の世界を感じたくて、ストレージが使えるようになってもずっと肩からかけている。
 他人に鑑定されてもマジックバッグ(小)としか表示されないみたいだし、その程度ならちらほら冒険者や商人が持っているので、さっきの注意事項さえ気を付ければあまり目立つことも無いみたい……よかった。

 「詳しいことはギルドの2階の資料室に本があるよ。本や資料の持ち出しは上位ランカーのみの特権らしいけど、資料の閲覧とか調べるだけなら受付でカーラにでも言えばいいと思うよ」
 「へぇ、ありがとうございます」

 ギルドの2階なんて行ったことないよ……資料室があるのも初めて知ったし。


 「だからね、カーラ姉のくれたポシェットすごいんだよー」
 「そっかー、大事なプレゼントなんだね」
 「うんっ」

 キラキラの笑顔が眩しいです。まあ、マジックバッグでも極小なら狙う人も少ないから安全なの……かな? 

 「教会まで気をつけてね」
 「ありがとう、エナお姉ちゃんっ。でもこのポシェットにたくさん入ってるから平気なのっ」
 「……エナちゃん、ウチの旦那が色々持たせてるから心配ないよ」

 ミーナちゃんのポシェットの中には親父さんの指示のもと防犯グッズがたくさん入っているそうです。

 おかみさんがボソッと……

 「それよりも旦那がこっそりミーナに付いて行こうとする方が困るよ……」

 へ、へぇ……それは聞かなかったことにしますね。
 


 
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