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第3章
34.女神見習い、漏斗を手に入れる
小屋に住み始めてから10日……
あの後、泊りがけが増えるからと言って黄金の羊亭は出た。
ミーナちゃんは寂しがってくれて、おかみさんからは「困ったらいつでも戻っておいで」と温かい言葉をかけてもらった。
親父さんは言葉はなかったけれど沢山の料理を持たせてくれた。
なんだか、長い旅に出るみたいになってますけど、割とすぐここにも顔出すと思いますと言って笑ったのも記憶に新しい……実際その3日後には宿に泊まったしね。
あとで護衛任務をパーティで受けていて、いなかったカーラさんに質問責めにあったりもしたけど、概ね問題ない。
3~5日ぐらいの間隔で宿へ寄ってミーナちゃんに会って癒されたり、ご飯食べたり、食事を多めに作ってもらって持ち帰ったり、部屋が空いてたら泊まってる。
それでも、宿へ使うお金が半分以下になったので布団がわりになりそうなものを探して買った……これで石のベッドがだいぶ快適になった。
薬草とかも値崩れしないように気をつけないといけないし、美味しいご飯は作れないし。
ここ重要だよ!スキルとったのにかろうじて食べれる物しか作れないなんて……私の料理センスが壊滅的みたいじゃないかぁ!ぐすん。
あ、ちなみにかろうじて食べれる物は……味の薄いor濃いスープ、買ってきた果物をカットしたもの、買ってきた肉を焼いたもの(時々生焼けor丸焦げ)。
味の薄いスープはそのまま、濃いスープは水で薄めることで食べられる。
カットしただけの果物は時々、原型が残っていないけど購入したパンと一緒に食べれば問題ない。口に入れば一緒……
生焼けの肉は焼き直すと高確率で丸焦げになるということを勉強したのでスープに入れて煮込むことにしている。丸焦げの肉は外側を削ぎ落として小さくなった硬いお肉を食べる。
「なんで毎回同じように作っても全然違う出来上がりになるんだろう……」
まだまだのんびりできなさそう、はぁ。
◇ ◇ ◇
食料の買い出しの後、ギルドへ行くと……マルガスさんが待ち構えていた。なにごと?
「エナ時間はあるか?」
「ええ、まあ……」
「じゃあついてこい」
「……はい」
いつも通り奥の部屋へ通され……椅子に座る。
そういえば、ここ以外にもいくつか取引用の部屋があるらしい。だから私がこの部屋にいても他の部屋で取引はできるから、気にせずゆっくりしていけとマルガスさんに言われました……なんかこわいよ。
「最近ギルドへあまり来てないみたいだからなかなか捕まえられずに苦労したぞ」
「そういえば、そうですね……で、今日はなぜ?」
私まだ何もしてませんよね? ギルドへ入った途端マルガスさんに捕獲されたもの……
「ああ、もうすぐ来るはずだ」
来る? ……誰が?
突然、扉がバーンと開き思わずびくっとしてしまった。
「やぁ、エナくん。おまたせ」
「……いえ」
なぜまたサブマスさん?
「ああ、今日ここに来てもらったのはロウト?の試作品ができたからなんだ」
「おおー、早いですね」
よかった。普通の用事だった!
「でね、ちょっとチェックして欲しいんだ」
「わかりました」
「それでこれがその試作品なんだけど……その前に職人を紹介してもいいかな?」
「職人……あー、そうですね。直接話した方が細かいところも伝わるでしょうし」
「うん、じゃあちょっと連れてくるから待ってて」
「はい」
マルガスさん、マルガスさん……じっと目で訴えてみる。
「ん? 茶なら勝手に入れて飲んでいいぞ」
おー、通じた! じゃあ、お言葉に甘えて……ここのお茶、美味しいんだよねー。
しばらくまったりお茶を楽しんでいる(もちろんマルガスさんの分も入れたよ)と、またしても扉がバーンと開いてびっくりしてむせた……サブマスさん、心臓に悪いです。
「はーい、お待たせー。彼はギルド公認ポーション瓶職人のドネルだよー。僕の幼馴染なんだよ」
サブマスさんに連れられて来たのは今にも倒れそうな疲れた顔をしたおじさんだった……大丈夫かな?
「はぁっ、はぁっ。はじめましてっ、ガラス職人のドネルだ……君がエルネストを焚きつけた子だね」
サブマスを焚きつけた? なんのことだろう……
「……はあ。はじめまして、エナです」
「エナ、ドネルはロウト作りのせいでかなりサブマスに翻弄されたんだよ。まぁ、察してやれ。てことで、俺は業務に戻る……がんばれよ」
あちゃー、それはイコール私が焚きつけたということですね? ……こういう時はスルーしておこう、うん。
マルガスさんもさっさといなくなっちゃったし、それになんだかサブマスさんの視線が痛いし……
「あ、すいません。漏斗のチェックでしたよね」
「うん、そうだよ……はい、これよろしく」
サブマスさんに渡された漏斗は私の思い描く漏斗にかなり近かった。
「おー、あの説明でここまで再現できるなんてすごいです!」
「お、そ、そうか」
ドネルさんも褒められて満更でもなさそう……おじさんの照れ顔……スルーで。
「ええ、さすがギルド公認の職人さんですね。ただ、できればもう少しだけ筒の全体を細くするか先端に向けて細くしてほしいですかね……どんな瓶の口にも入るように」
「そうか……確かにそうだな」
「あ、あと個人的な希望を言えば取っ手がついてると便利かなーって思います。ガラスだと濡れたら滑りやすいと思うので」
「それは簡単にできるぞ」
「よかったです。ありがとうございます!」
頭の固い職人さんだとこういう意見を素直に受け取ってくれない場合もあるけど、ドネルさんはそんなことないみたいでよかった。
「うん、よかったねドネル。苦労したかいがあったでしょ?」
「……あ、ああ」
「それで、改良版はいつ頃できそうかな?」
「そうだな……ひと月もあれば出来ると思う」
「え? 3日以内?うわー、すごいねドネル!」
え……サブマスさん何を言ってるのかな?
「そんなのは無理だっ!せめて10日はないとっ」
「え、明日にはできるの? さすがギルド公認だね!」
うわー、サブマスさん鬼畜だ……みなさーん、ここに鬼畜がいまーす!
どうも、ポーションの瓶以外にも色々作ってるのにサブマスがガラス職人って紹介しないから仕事では瓶ばかり作っているらしい……
「わかった。明後日には持ってくるから、勘弁してくれ」
「んー、仕方ないなぁ。ということで、エナくんその頃に必ずギルドに来てね?」
「ハイ……」
この時サブマスを敵に回すことは絶対にしないと決めた。だって笑顔なのに怖いんだもん!
ちなみに、その3日後には私の手元に漏斗が……
何故だろう……そんな場面を見たことないはずなのに、やつれた顔でヘロヘロのドネルさんが頭に浮かび……ポーションをあげたくなった。
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