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第3章
30.女神見習いと魔の森(2)
常設依頼を受けつつ瞬間移動で小屋へ行き、そのたびに掃除したり自分の過ごしやすいように小屋を綺麗にしていく。
拭き掃除したり、《清浄》を使ううち、だいぶ快適になってきた……
「壊れた家具はどうしようかな……まあポーション作りは床に座ってもできるし、また考えよう」
『女神の聖域』で結界を展開すれば多少の魔物も平気だし……とはいえ、目の前に巨大な虫がいたら気になるけど……あ、これ今ね、いるんですよ。人間サイズの巨大な蟻が。
結界のおかげで私自身は何ともないけど、多分噛まれたらひとたまりもないだろうし、結界に張りつき目の前で動く関節は気持ち悪い。
やっぱ巨大だから嫌でも目に入っちゃうよね……
「どうしよう……魔法で倒す? でも……あっ!」
私が悩んでる間にこの蟻、人が一生懸命綺麗に掃除した小屋の壁を壊しやがった。
「キリのいいところまで掃除したらポーション作ろうと思ってたのに!」
しかもまだ女神の聖域が展開できてない壁に。となりの壁は聖域内だったのに!
壁には穴が空き、小屋の中は瓦礫だらけに、出入り口がふたつになってしまった。耐久性が……小屋が……
「うん……これも身を守るためだよね? ほら、小屋が崩れたらわたし埋まっちゃうし」
こら、そこ『女神の聖域』があるんだから無傷だろうとか言わない!
本当は身の危険を感じた時にしか攻撃しないでおこうと思ったんだけど……人の苦労を無駄にされてちょっとイラッときたので退散してもらいましょう。
魔力をちょっと多めに込めて風魔法の《風刃》で蟻を攻撃する……結界の中から攻撃できるけど向こうの攻撃はある程度、通さないんだよ。すごくない?
透明な刃が結界から飛び出し、蟻の胴体に飲み込まれていく。
蟻はその場に倒れ動かなくなった。
「あれ? なんかちょうど胴体の付け根に当たったみたい……俗に言うクリティカルヒットってやつ? 運が関係してるのかな?それとも魔力込めすぎたかな?」
ただ追い返せればよかったんだけど……倒しちゃったみたい。
「でも胴体がまっぷたつになってるのに脚がピクピクしてるのは……生きてるとか?」
心眼すると
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【ヒュージアントの死体】
体長1.5メートルから2メートルになる巨大な蟻の魔物の死体。
顎の力が強く、噛まれたらひとたまりもない。
魔法により胴体が分断されている。
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「あ、やっぱり倒してたか……へぇ、この蟻〈ヒュージアント〉っていうんだ?」
とりあえずストレージへつっこみ何もなかったことにした……だって解体するの大変そうだし、何が素材になるかわからないだもん。マルガスさんに聞いたらまた呆れられそうだし……
気を取り直して瓦礫掃除に励む……崩れた石をひとまとめにし床をはいて拭き掃除ーー
「はぁ、疲れる……ポーションはまた明日にでも作ろう」
◇ ◇ ◇
ー翌日ー
魔法で《水》を出しつつ、ポーション作ってギルドで買ったポーションの瓶に詰めたり……漏斗を早く見つけないと溢れてもったいない。
『女神の聖域』はまだ小屋に長時間張っておけないからポーションを大量には作れない。
仕方ないから自分の周りだけに展開してちまちま作ること半日……
買い取り受付に行くとマルガスさんがすごい警戒する……なんで?
「今日はなんだ?」
「今日は常設依頼の買い取りです」
ヒュージアントなんて見てもいないし、倒してもいませんから!
なんかマルガスさんを前にすると言い訳したくなる。
「……そうか」
そして、常設依頼だと知るとホッとして、ポーションはないのか?と目で訴えてくる。
「3本分ならありますけど……条件があります!」
「なんだ?」
「漏斗を売ってるお店を紹介してください!」
マルガスさんがもしお店を知らなくても普通にポーション売りますけどね。
マルガスさんは眉間にシワを寄せて
「……ロウト?ってなんだ」
「……え? 漏斗ですよ? 瓶とかに詰め替えるのに便利な」
「は?」
「え?」
まさかの漏斗ご存知ない感じ?
「ちなみに、皆さんはどうやって瓶に液体詰めてるんですか?」
「……鍋の上で匙を使うか、鍋に瓶を突っ込んでブクブクっと」
あー、溢れても無駄になりませんね。
ブクブク……そういえばその方法もありましたね……
「でもそれ、匙はまだしも瓶を沈めるのはかなり量がなくちゃできませんよね!?」
「まぁ、そうだな……で、そのロウトとやら詳しく聞きたいからついて来い」
なぜマルガスさんが受付の時は毎回のように奥の部屋へご招待されるんでしょうか……はぁ。
「さて、そのロウトとやらをじっくり教えてもらおうか」
「いえ、お店を知らないならいいです……ポーション4本にしますから」
一瞬迷いを見せたマルガスさん。
よしっ!このままうやむやにしてしまえっ!と思ったのに……
「おや、エナくんでしたか……私の渡した紙の素材が見つかったのかな」
サブマスさん……なんてタイミングで来るんですかっ!もう少しで丸め込めそうだったのに……
サブマスさんにもらった紙に書かれた素材も一応探してはいる。今のところあまり成果はない。
でも朝早くあそこへ行けば採取できるかも……と目星をつけたのはあるけど
「いやぁ、そんな簡単に見つかるわけないじゃないですか! 私はしがないEランクの冒険者ですよ?」
「そうかな? エナくんならすぐに見つけてきそうだと思うけど」
「サブマス、話を戻してもいいか」
「うん……で、なんの話?」
「エナがロウトとかいう物を売ってる店を教えてほしいというんだが……俺には全く見当がつかない。詳しく聞こうと連れてきたらサブマスが来たんだよ」
「ふーん、そうなんだ。私も興味あるな……そのロウト」
なんてこった。話が振り出しに戻ってしまったじゃないか!
「はぁ……わかりました。漏斗とは噛み砕いて言えば、すり鉢状の器の底に穴が開いていて穴の部分に中が空洞の細い棒がついている……」
ふたりとも全くピンときてないな?
「すいません、紙と書くものください」
「ああ、これ使ってくれ」
「今の説明を絵にするとこんな感じです……正直、これで伝わらなければ絵も説明も限界です。諦めてください」
ふたりは身を寄せ合って紙を凝視している……
「ほほー、これはまた便利そうだね。エナくんこれの素材は何かな?」
「うむ。たしかに……これがあれば作業効率が上がりそうだな」
「わかってもらえてよかったです。素材はよくわかりませんけどガラスでできているものは見たことがあります」
だって、プラスチックとかシリコンなんてこの世界で発見されてるかわからないし、瓶が作れるならガラスがいちばん現実的かなって……落としたら割れるのが難点だけど。
「ふーん、そうか。ガラスかぁ……」
「マルガスさん、ポーションはまた今度ということで……」
「いや、ちょっと待て。ポーションは買うから……4本」
4本……それはさっさと引き上げる為だったのに。
はぁ、まあいいや。とっとと渡して帰ろう……マルガスさんにポーションを渡し、お金を受け取り席を立とうとすると
「ねぇ、エナくん……このロウト? 作ってみてもいいかな」
「いいですけど、わたしは作り方なんて知りませんので……」
「まあまあ、こういうの得意そうな知り合いがいるんだ。あ、もちろん商品化する時はエナくんに特許料が入るようにするから安心して」
……特許?
「いえ、そもそも私が考えたものじゃありませんし……特許もよくわからないので、もし作れたらわたしにも譲ってくれればそれで」
「うーん、欲がないなあ……じゃあ、私に任せてくないかな」
「えっと……よろしくおねがいします?」
なんかサブマスの瞳がギラッと光った気がするけど気のせい……だよね?
「あーあ、サブマスの好奇心を刺激しちまったか……こりゃ忙しくなるぞ……職人が」
すでに部屋を後にしたエナの耳にマルガスのつぶやきは届かなかったーー
後にサブマスが手配したエナの口座に特許料として大金が転がり込むことをこの時のエナはまだ知らない……
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