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第5章
63.女神見習い、ジャム作りに奮闘す
しおりを挟む「リディ、今日はジャムを作ってみようと思います」
「……ジャム?」
「そうだよー。パンにつけたり、お茶に落としたり、パイにすると美味しいんだよ」
じゅるり……あ、やべ、よだれが。
うん、なんだか無性にジャムが食べたくなったんだよね。
それに『黄金の羊亭』にジャムを持っていったら、パイを焼いてくれるって小耳に挟んだんだよ。
親父さんの作るパイ……美味そう……じゅるり。俄然やる気が出るというものですよ。もちろんお礼にジャムのおすそ分けもする。
メリンダさんから手に入れる予定のお茶にジャムを入れても美味しいだろうし……レシピ、うろ覚えだけど……成功させるぞー、おー!
「……ん、手伝う」
「うん、ありがとね」
髪の毛をまとめてエプロンつけて手を洗って……
「そうだ、ブランはちょっと離れた……え、だめ? あ、はい、結界を張りますね。念のためあんまり動かないでね?」
「ん、危ないことしなかったらジッとしてるって」
「そう……」
全然信用されてませんね……はぁ。
まあ、結界があるおかげで羽が入る心配もないし、ブランの羽ばたきで埃が舞うこともないから結果オーライかな。
ジャムの瓶は前に雑貨屋でリディのコップとかブランのお皿とかを買い物した時に安売りしてた分があるからそれを使うとして……
ひとつより10個まとめて買うと安くなるって言われて思わず……それに瓶が可愛かったんだよ。
《清浄》、さらに煮沸消毒して浄化……これでいいだろう、多分。
「まずはりんごからいってみよー」
「ん」
頭の中では裸の天使が出てくる料理番組の音楽が流れてる……え、口ずさんでた? ごめんごめん。まぁ、全然3分じゃできませんけどねー。そもそも時計ないし……
「えっと……まずはボウルに水と塩を入れ塩水を作って……」
「ん」
「あ、リディ。お水入れてくれたの? ありがと」
「……ん」
なんだかリディも楽しそう、よかった。
「次は包丁を使うんだけど、リディもやってみる?」
「ん、やりたい」
ブランが包丁って聞いた途端、ソワソワしだしたけど……ここは本人の意思を尊重するってことで。
リディに包丁を渡して、自分はナイフを。もちろんナイフは《清浄》してあるよ。
「リディ、怪我しないように気をつけて。ゆっくりでいいからね」
「ん、わかった」
りんごは皮を剥いて芯を取り、いちょう切りにしたらすぐに塩水にさらす。多少の形の悪さはジャムにしてしまえばわからないし、これくらいならなんとかできるよ、うん。
「おっ、リディ上手いね」
「ん」
なんか、リディのほうが手際がいい気がしてきた。
「次は鍋に水気を切ったりんご、砂糖、レモンから絞った汁を入れて中火にかけるよ」
「ん、わかった」
沸騰してきたら、アクをとって弱火にして30分ぐらい(体感で頑張った)煮たら完成。
「おおー、できた……」
「すごい……つやつやぴかぴか」
「ねー。熱いうちに瓶に詰めて蓋をして逆さまに置いておくとできるから」
「ん」
少しだけ味見用に分けてから、次はレモンジャムを……りんごより多少手間(薄皮を取り除くとか、レモンを絞るとか)はかかったけどなんとか完成。
ブランの視線が痛い……仲間に入りたいのかな?
「おおー、これお茶に入れたら美味しそうかも」
「ん、ブランはもうちょっと待ってて」
おー、リディに言われた途端大人しくなったよ。どうも、ブツブツ文句を言っていたみたい……
オレンジも同じような要領で作り、数日前に見つけた木苺もジャムにしてみることに。
リディ達と森の探索中に見つけた木苺……低木に実る木苺を身を屈めて摘む作業は腰にきたけど、リディと頑張って採取したよ……美味しいジャムのためだったと思えば腰の痛みもなくなるよね(実際は回復魔法かけました)
あ、ちなみにブランは周囲の警戒をしてたよ。時々つまみ食いしながらだけどね……結界を張ってるとはいえ、なんせ魔の森なので。
あの時に頑張って採取しすぎたせいか木苺まだまだ余るほどたくさんあるんだよ……
木苺は他のジャムを作ってる間……っていうか、リディが一生懸命、鍋をかき混ぜてる間に水につけて、何度か軽く混ぜたり水を替えて、汚れを取り除いておいた。
そしたら結構小さいゴミとか虫とか水に浮いててゾワッとした。うん、このまま使わなくてよかった。
汚れを取り除いたあと、鍋に木苺を入れ中火にかける。
火にかけるとすぐに苺の色が黒から鮮やかな赤に変わっていった。
「あ、色が……」
「綺麗な赤だね」
まるで、リディの瞳の色のよう……
「で、次がさっきと違うんだけど……沸騰したらアクをすくいながら5分くらい煮て、うらごしするんだよ」
「ん」
ザルがないから目の粗い布で代用した。ま、種が取り除ければいっか。
ブラン、そういうところにこだわらないから料理を失敗するんだよとか言わないで……ぐすん。
なんか最近、ブランの言いたいことがますますわかってきた気がする。結構辛辣なんだよね……あれ、妄想なのかな……リディには向けない鋭い視線のせいでそう感じるのかもしれない。
「あとは鍋にうらごししたものと砂糖をいれて、かき混ぜながら煮詰めていけば完成だよ」
「ん、わかった」
こうして出来上がったりんごジャム、レモンジャム、オレンジマーマーレード、木苺ジャム。全ての瓶が逆さまに並べられ外からの光を受けキラキラして美味しそうな光景だ……
今回は全て瓶3個分ずつ作った……ひと瓶はパイ用に親父さんに持っていく分、ひと瓶は家で食べる用、ひと瓶はおすそ分け用にした。
それぞれの果物も少しずつ持っていって豪華なパイにしてもらおう……じゅるり。
素早く後片付けを終えると、すでにお昼を過ぎていた……どおりでお腹が空くわけだ。
「リディ、味見してみよっか」
「ん……ブランも味見するって」
「……わかったよ」
りんごジャム、レモンジャム、オレンジマーマーレード、木苺ジャム……モグモグ。
「ん、美味しい」
「おー、ジャムだ……あー、もっと食べたい」
「ん……」
「パンにつけて食べたい」
「ん」
でも、味見用は既にない……はぁ。
こらっ、ブラン! お皿まで舐めるとはっ……うらやまけしからんぞ! よくそのくちばしで舐められるな……執念か……
あ、ちなみに砂糖は調味料セットのものを使ったよ!
若干、砂糖の量が足りなくて砂糖控えめになったり、レモンジャムは砂糖の代わりにハチミツを入れたものにしたりしたけど、味見したらそれはそれで問題なく美味しかったし。
私にしては材料を無駄にすることなく、なんとか作り上げることができた……料理スキルのおかげかな?
あ、すいません。ブランさん、ジャムを焦がさなかったのはリディが一生懸命鍋をかき混ぜてくれたからですよね……わかってますよ、ちょっと言ってみただけじゃん。そんな怖い目で見ないでよ。
砂糖は明日にでも買い足そうかな……すぐにジャム食べちゃいそうだし、木苺まだまだあるし、何よりリディも楽しそうだったから……ブランさえ納得してくれれば留守番中に作ってくれてもいいんだけどね。ブランはリディに関してはかなり心配性だからなぁ……
「じゃあ、明日にでも街に持って行ってみようか。リディ、大丈夫かな?」
「ん、大丈夫」
「いやー、パイ楽しみだね」
「……ん」
今日のところはパイを想像しながらいつものスープとパン……ジャムもっと食べたい、はぁ。
蓋をして逆さにして冷ましておけば明日の朝には出来上がってるはず……
「ねぇ、リディ……明日の朝にはジャムができてるだろうから朝ごはんに食べようね」
「ん、楽しみ」
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