94 / 120
第7章
94.女神見習い、少女の誕生日を祝う(1)
しおりを挟むある夜のこと、わたしは重大な事実を知ってしまった。
事の次第はブランの激しい主張により発覚したのだが……その方法が問題だった。
最初は簡単だったのにね……
「話があるの?」
と聞けば、右腕に乗った。
「リディのこと?」
と聞けば、また右腕に乗った。
この方法はリディがいない時に使っているけど、ほとんど視線で何か訴えるのでこうやって腕に乗られるのも久しぶりだ。
リディに通訳してもらえばいいのにと思ったけど、どうやらリディには内緒みたいだ。だって、リディが来た途端あからさまに私に視線で何も言うなと制し、飛んでいったから。
それを何十回も続け、左腕に傷ができたのは言うまでもない。
「リディが困っているの?」
と聞けば、左腕に乗り
「料理のこと?」
と聞けば、左腕に。一応確認のため
「リディには内緒なの?」
と聞くと右腕に乗った。
今、わかったのはリディについて内緒の話があるってことだけ……うん、全然わからない。
ブランがだんだん痺れを切らし、左腕に乗るごとに爪が痛くなってきた。
「はぁ……なんだろうな。リディの服がいるとか?」
ちがった。
「なにかリディにプレゼントしたいとか?」
ん?惜しい系?
「んー、プレゼントはしたいけど他にもやりたいことがある?」
おっ、あってるみたい。
「んー、記念日?って言ってもリディと出会ってまだ記念になるような日にはなってないし……」
あれ?右腕に乗ってるな……
「記念日かぁ……定番は誕生日とか、結婚記念日とかだけど……え?誕生日なの?」
度重なるブランの主張を噛み砕き、時に顔にバサバサと翼を当てられた爪がでギュっとされた末、ようやく知ったその事実……
「まさか、リディの誕生日だなんてっ」
ブランが右腕を強く掴んだ。
「え、まじかー。いつ?明日?」
違うみたい。
「まさか、今日じゃないよね?」
違うかー。
「明後日とか?」
おおー、まじで明後日なんだ?
「もっと早く教えてよー……あいたた!あ、そうかダンジョンに行ってたんだった」
え、これダンジョン長引いてたらなにも知らないまま、誕生日すぎるとこだったじゃん!
「あー、リディも遠慮して言えなかったのか……ねぇ、ブラン。アルさんやメルさんにも教えて誕生日パーティしよっか?」
おおっ!ブランが私の周りをぐるぐると飛び回った。賛成ってことだね。
アルさんとメルさんもギリギリ滞在してるので、誕生日パーティーを企画することにした。
うわー、メルさん帰るギリギリだったね。
メルさんはいつも範囲魔法とかで済ませちゃうからアルさんと比べても滞在期間が短いらしい。
傷を回復した後、リディに見つからないようアルさんとメルさんを探す……って言ってもふたりで酒盛りしてたからすぐに見つかったんだけどね……
「て、ことなんですけど、協力してもらえますか?」
「うむ、もちろんじゃ!」
「任せて!でも、よかったー。帰る前で!」
「ですねー。それで少し聞きたいんですけど……」
「うむ、なんじゃ?」
「この世界ケーキってあります?私のとこでは誕生日にケーキでお祝いするのが一般的だったんですけど……」
「うむ……ケーキか。確か王都のどこかの店にあったような。わしに任せておくれ」
「えー、アルがケーキ準備するならワタシは美味しい食事を差し入れるわ!」
「わー!嬉しいです。お願いしますね。あと、このことはサプライズでお祝いしたいので、リディには……」
「「わかったぞ(わ)」」
こうして、リディに内緒のサプライズパーティの準備がはじまったのだ。
「んー、プレゼント……どうしよう……あっ!ユリスさんに頼んで短剣とかプレゼントしようかな?ダンジョンでたくさん素材も持ち帰ったし……で、あの宝石とか埋め込んだらいいかも」
ん?なにさ、ブラン……
「ブランも1枚噛みたいとか?」
おー、右腕に乗りましたね……そしておもむろに緑色の宝石を差し出した。
「ん?これを短剣につけて、私とブランからのプレゼントってことにすればいいのね?」
ブランは満足気に私の周りを1周した。
「リディはもう寝たかな?」
そっと、部屋を覗くとぐっすり眠っているようだ。
「ブラン、今からユリスさんとこいってくるからリディのことお願いね」
さっそく街の家へ瞬間移動……
「あれー、エナ。今日も泊まりに来たの?」
「ううん、ユリスさんに用事があってきたんだけど……」
「んー、ユリスならまだ工房にこもってるかなー」
「そっか……行ってみるね」
「僕も行こーっと」
庭に出て、まだ明かりのついているユリスさんの工房を訪ねる……
「ユリスさん、いますかー?」
「え、あっ、はい!」
「すいません……こんな夜遅くに……」
「いえ……何かご用ですか?」
少し困惑気味だけど、工房に入れてくれた。
「それがですねー……リディの誕生日が明後日ということが発覚しまして……」
「そうなんですか!?」
「できればユリスさんにプレゼントの製作をお願いできないかと……時間があまりないので夜遅くにお邪魔した次第です」
「喜んで、と言いたいところなんですが……材料が足りません」
「あ、ダンジョンでたくさん素材とか金属とか持って帰ってきたので好きに使ってください」
いくつか素材や金属を見せると作れそうだと言う事なのでデザインの相談だ。
「できれば短剣に宝石を埋め込んで欲しいんですけど……できますか?」
「はい、大丈夫です」
「んー……ブランの刻印とかも出来ます?」
「はい」
「えー、ずるいな。僕の刻印も入れてよー」
いや、キュリエルなんもしてないじゃん。でも、怒らせるとやばいから……
「じゃあ、持ち手の表にブランの刻印と緑の宝石を。裏にキュリエルっぽい刻印と黄色の宝石でお願いします」
「わかりました。期限は明日の夜までってところですかね?」
「そうですねー……できそうですか?」
「ええ、夜を徹して作業すればなんとか……」
「あ、そうだ。代金は?」
「まだ、返済も終わってないので……欲を言えばもう少し素材を分けてもらいたいです」
「そんな事でしたら、どうぞどうぞ」
「ねえ、そのパーティ僕たちも行っていい?」
「うん、いいよー」
「ユリスもね」
「あ、はい」
「そうだ、料理は他の人が待ってきてくれるので大丈夫です」
「わかりました」
「じゃあ、パーティ前に迎えにきますので、短剣もその時に」
「はい」
まぁ、これで瞬間移動がバレちゃうけど……ユリスさんなら信用できるし問題があってもキュリエルがなんとかしてくれそうだし大丈夫だ。
あ、あとでアルさんとメルさんに人数が増えるので料理とケーキの量の追加をお願いしないと……
「リディ、喜んでくれるといいけど……」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる