74 / 120
第6章
74.女神見習い、ドワーフを拾う(2)
しおりを挟む「そ、それが集落に閉じこもっていたものでここ以外に知り合いはいないんです。鍛治職人として雇ってくれるような知り合いもいませんし、かといって工房を構えるにしてもまずは金が必要ですし……ど、どうしましょう!?」
急に焦り出したユリスさんは置いておくとして、となりの精霊が余計なことを言わないように手を打たなくちゃ。
「そうで……」
「ここに住めばいいじゃない!部屋も余ってるし。僕は賛成だよ!」
おい、精霊……人の言葉にわざと被せたな?
「えっ、いいんですか?そんなこと。それに女性の家にお世話になるのは……」
ほらこの人も遠慮してるから……ね?
「そうで……」
「大丈夫だよー。僕もいるし、エナは他に家もあるし……ね?」
だから人の言葉に被せんなって!
それに勝手に私を都合よく家から追い出そうとしてるな? あの、家を買った時の可愛さはどこいったの?
……ただ、あの頃は知らなかったけど、今の私は知っている。この精霊を怒らせるとひどい目に合うことを……なんか突然すごいうなされるようになるんだって。サブマスさんと同様にトラウマゴリゴリに削ってくるらしいよ……うん、知っててよかったのかどうか。知らない方が良かったかも。
「はあ……わかりました。私は他の家を行ったり来たりしているので、突然現れても驚かず、何も聞かないと約束するなら……ここに下宿しますか?」
「ほ、本当にいいんですか?……でも、家賃を払う金がありません。私にできるのは鍛治仕事だけなんです。あっ、でも料理はそこそこ得意です」
なんだって! 料理が得意……美味しいご飯が食べられるようになる? 私、料理しなくていい?わーいわーい!
それに……ええ、いいんですよ。その分精霊に働いてもらいますとも面と向かっては言えないので
「まずは工房を確保しましょう。あれだけの物が作れるなら腕前も保証されてますし、とりあえずの費用はお貸しします。家の家賃と利子は私の望むものを作るということでいかがですか? 工房の費用はおいおい返していただければ。そのかわり、かなり無茶な依頼をするかもしれませんが……あと美味しいご飯を毎日作ってくれるなら」
最近お金に余裕があるからこそ言えるこの言葉……数ヶ月前には言えなかったよ。全力でお帰り願っていたはず。
彼は驚いたように一瞬目を見開き
「こんなこと言うのも何ですけど、見ず知らずの私をそんな信用してよろしいんですか? 費用を持ち逃げするかもしれませんよ」
「そんな人なら精霊は気に入りませんよ。それに、もしそうなった場合は世界の果てまで追いかけます……精霊が(トラウマゴリゴリですよ)」
この時のわたしは怖いぐらいの真顔だったことだろう
「ははっ、そうですか。何から何まで世話になりますがどうぞよろしくお願いします」
若干顔を引きつらせながら深々と頭を下げたドワーフ、隣で嬉しさが抑えられない精霊、苦笑いの私。またひとり住人が増えたようです。
「ねえ、工房なら庭にあるフィンの使ってた作業場は?」
「あー、そういえばそんな小屋もあったなぁ……」
「少し、見させていただいてもいいですか?」
「うん、こっちだよー」
早速庭へ出て小屋へ
「うぉー寒っ」
「こっちだよ」
「はい」
そういえば小屋の中見たことなかったな……ユリスさんが小屋の内部をチェックするのを横目に
「へぇ……こんな風になってるんだ」
「はい。すごく懐かしいです。ここで手伝わさせてもらった頃のままです」
「使えそうですか?」
「ええ、少し掃除して調整すれば充分使えると思います」
「そうですか、よかったです。ちなみに作ったものはどうやって売るつもりなんですか」
「工房兼店舗ならそこで売りますし、店舗に持ち込んで置いてもらったり、名の知れたひとなら店舗などなくても直接訪ねてくることもありますし……色々ですね」
んー、やっぱ店舗がいるのかな?
「あっ、そうだー。僕、いい店舗知ってるよー」
「ん? なんで?」
「え、そりゃあ……時々いたずらしてたら誰も来なくなっちゃったんだよね」
あれ、キュリエルまたなんかやらかしてるな?
「はあ……そこって近いの?」
「うん!この家の裏ー」
どうやらこの家のせいか精霊のいたずらのせいか人が入ってもすぐに出て行ってしまう物件でここ何年かはずっと空室だったとか。
はあ……また商業ギルド行かなきゃかな。
結局、店舗だけは家の裏にある古びた店舗になった。
そこは在庫を置ける部屋と陳列棚とカウンターでいっぱいになる小さな店舗だった。
カウンターの隅でひとりが休憩できる程度のスペースしかなく、こじんまりとした雰囲気。かつては2階部分が住居スペースだったようだが、長年の放置された結果、とても住めるようなものじゃなかった。
例のごとく商業ギルドに行ったら即解決でしたよね……なんかすいません。
賃貸か悩んでこれも格安で買い取ってしまいました。うん、家よりも安く買えてしまいましたよ。どうやら持ち主さんも持て余していたらしい。
帰りにはポーションも納品して用事を済ませた。
いやぁ、勢いって怖い……ユリスさんがすぐにいなくなったらどうすんだっていうね……まあ、そうなったならカウンターでちまちまポーションでも売ろう。用心棒は精霊に押し付けてせっせとタダ働きさせてやるんだ。へへ。
最近、金遣いが荒い気がしてならない……うん、ポーションの納品の量増やそうかな?
幸いにも、畑で育ててる薬草がスキルのおかげか、たくさん収穫できてるから森で収穫したものと合わせれば初級と中級なら問題なく増やせんるだよね。
無事開店したら、店舗の隅に少しポーション置いてもらって店番もお願いしよう。あ、ブランの羽を置くって手もあるな。楽しみが広がるなぁ……
「とりあえず今日はゆっくり休んで、明日から小屋と店舗の掃除と商品作り頑張ってください……部屋は2階の好きなところを使ってください。あと、水場とかトイレなんですが……まだ交換してなくて使いづらいかも知れませんけど」
私は1階しか使ってないし……トイレも昔のままだからなぁ。今のところ毎回、簡易トイレで代用してるし。
「はい、ありがとうございます」
「あと、出来れば朝晩の食事作りもお願いしたいんですけど」
「それは、構いません。料理は好きですから」
「それはよかったです。えっと……キュリエルとユリスさんと私と……あと2人分お願いします。キュリエルとユリスさんの分以外は別の鍋にでも分けてもらえると嬉しいです……鍋とかお皿はマリーさんが使っていたものがあるので。食材代はこちらに請求してください。とりあえずブラッドベアのお肉を1キロほどと、銀貨1枚置いて行きます」
まだ余ってるから美味しくしてくれるといいな……
「何から何まですいません……ブラッドベア……ですかっ。あ、ありがとうございます。精一杯頑張りますね」
「こちらこそ、美味しい食事期待してますね。あ、そうだ。店舗のことですが、後々ユリスさんが買い取っていただいてもいいですしお任せしますね」
「はい……まずはそうなれるように頑張って稼がないと」
「店番は僕も手伝ってあげるー。さっき、店舗もテリトリーに入れたから他の人にも見えるよ」
「あ、そう……」
どこかへ行ったかと思えば、そんなことしてたのね……
「何かわからないことはキュリエルに聞いてください。私なんかより家のことは詳しいので……では、今日のところはこれで」
「はい」
そういえば、さっき店舗を契約しにドワーフさんを商業ギルドへ連れて行った時のメリンダさんの目が光った気がしたんですが気のせいですよね?……ですよね?
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる