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ミーシャの存在。

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 コーラスのお家でお茶会して楽しんで馬車に乗ってお家に帰り。

 夕食を食べてお部屋に引き籠ったわたし。

 正直なところ、魔法に関しては本を読むだけで大概理解ができたし普通の魔法ならまったく困らず息をする様に使える。

 今の学校でどれだけのことを教えてくれるのかはしらないけど、周りのみんなの初心者ぶりを見ればそうそうわたしだけ特別扱いも無いだろう。
 要はそんなに期待は出来ないってことだ。

 友達に会いに行くんじゃなかったら誰があんな所行くもんか、そうも思ってる。


「ただいまぁミーシャ」


 猫目石を撫でながら。

 今夜はこれを抱いて寝ようかな。

 さわってると今でも暖かい気持ちが溢れてくる。

 ほんと癒されるなぁ。



 別にラギレスの再来って言われることがどうしても嫌だってことじゃないよ?

 いろいろな人に話を聞いたり記録を調べたりすればするほどラギレスがどれだけ凄い人だったんだなって事はわかるし自分の親戚にそんな人がいたってことも誇りに思う。

 頑張ってあなたもラギレスの様に立派な聖女になるのよ。

 そう言われている間は別にそんな悪い気もしなかった。

 無邪気にわたしも聖女になるの! って、そうはしゃいでいたものだ。

 だけど。


 わたしのチカラがどんどん強くなってきたことがわかった時、魔力紋検査があって。

 それ以来、かな。

 周りの目が変わったのだ。

 皆がわたしのことをラギレスの再来、と呼ぶ様になり。

 お母様は、まさかこの子がラギレスの生まれ変わりだったなんて、って。

 そんなことも言い出した。

 わたしがあんまりにも泣いて怒るものだからそれ以降そんな言い方はしなくなったけど、それでもラギレスラギレスって事あるごとに話題に出す様になったのだ。


 もう、思いだすとなんだか悲しい。

 ねえ、ミーシャ。

 あたし、どうしたらいい?

 だって、ラギレスはミーシャだもん。

 ミーシャが勇者を守って死んじゃって。でもそのことは誰も知らなくて。

 あたしがラギレスの生まれ変わりだなんて言われたら、ミーシャの存在が無かったことにされそうで。

 みんなは知らないからそんなこと言うんだ、って、腹も立って。

 悲しくて。

 辛い。



 あたしはまるでミーシャが丸くなって寝ているかの様にそこに在る、そんな猫目石を抱いて寝た。

 ほんわか暖かくて。

 苛立っていた気持ちが少し、和らいだ。
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