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あしながおじさま。
気がついた時、ふかふかのお布団に寝かされていたことに気がついたあたしはものすごく恐縮して、旦那様に謝らなきゃと思ったのだけど。
「子供がそんなこと心配しなくていいよ。君はもううちの子だ。このまま学校にも通わせてあげるから」
そう優しくおっしゃってくださった旦那様。
ふかふかのお布団のお部屋は、旦那さまのお部屋のお隣だった。
そして反対側のすぐお隣にはこのお家のおぼっちゃまがいらっしゃる。
明らかに客間とも違う、家族用のスペースだったけれど……。
あたしはそのまま、実は今でも、そのお部屋で暮らしている。
「うちの子だ」
そうおっしゃってくれた旦那さま。
その言葉に嘘は無かった。
貴族院の小等部に入学したあたし。
恐れ多いとは思いつつも、その善意に甘えてしまっていた。
それに、ここに居ないと母さんのところに毎日顔を出すことなんてできない。
今あたしが一人このお屋敷を出ても、暮らしていく事はできない。
だから、意味もわからず言われるまま学校に通っていた。
自分が偉くなったわけじゃない、ただただ旦那さまの善意でこうして学校に通わせてもらってるんだって、それだけは忘れないようにしようとは思って。
「ボランティア、なのよ。資産家っていうのはそういう援助をどれだけしているかが社会的なステータスにもなるのよ。よかったわね、奇病のお母様がいて」
あたしに嫌味ばかりいうメイドのベッキー。
ある時彼女に言われたそんなセリフに、あたしはやっと納得できた。
彼女も結婚して退職していったからもうここにはいないけど、それでも彼女がいたからこそあたしは慢心せずに済んだのだと思う。
小等部を卒業する時、旦那様は言った。
「良いんだよ、君はこのまま高等部まで学校に通っても。そうして卒業しさえすれば、君は立派なレディになれる。好きな人と結婚することも、好きな職業に就くことも、自由だよ」
優しくあたしの目を覗き込むようにして、にこりと微笑む旦那様。
この時、あたしはなんだか突き放されるような気がして、さみしくて。
学校の図書館で読んだ「あしながおじさま」のように、貧しい少女に援助を惜しまないボランティアだ、と、それだけの関係なのだ、と、そう思い知らされて。
でも、だめ。
あたしは、旦那様のそばにいたい。
旦那様に、恩返しをしたい。
だから……。
「あたしは……、働きたいです。小等部を卒業したら、どうかここで働かせてください」
そう懇願した。
最初は渋っていた旦那様。
でも、最後は折れてくださった。
あたしのわがままを聞いてくれる形で、そのままここ、このお屋敷でメイドとして雇ってくださったのだった。
「子供がそんなこと心配しなくていいよ。君はもううちの子だ。このまま学校にも通わせてあげるから」
そう優しくおっしゃってくださった旦那様。
ふかふかのお布団のお部屋は、旦那さまのお部屋のお隣だった。
そして反対側のすぐお隣にはこのお家のおぼっちゃまがいらっしゃる。
明らかに客間とも違う、家族用のスペースだったけれど……。
あたしはそのまま、実は今でも、そのお部屋で暮らしている。
「うちの子だ」
そうおっしゃってくれた旦那さま。
その言葉に嘘は無かった。
貴族院の小等部に入学したあたし。
恐れ多いとは思いつつも、その善意に甘えてしまっていた。
それに、ここに居ないと母さんのところに毎日顔を出すことなんてできない。
今あたしが一人このお屋敷を出ても、暮らしていく事はできない。
だから、意味もわからず言われるまま学校に通っていた。
自分が偉くなったわけじゃない、ただただ旦那さまの善意でこうして学校に通わせてもらってるんだって、それだけは忘れないようにしようとは思って。
「ボランティア、なのよ。資産家っていうのはそういう援助をどれだけしているかが社会的なステータスにもなるのよ。よかったわね、奇病のお母様がいて」
あたしに嫌味ばかりいうメイドのベッキー。
ある時彼女に言われたそんなセリフに、あたしはやっと納得できた。
彼女も結婚して退職していったからもうここにはいないけど、それでも彼女がいたからこそあたしは慢心せずに済んだのだと思う。
小等部を卒業する時、旦那様は言った。
「良いんだよ、君はこのまま高等部まで学校に通っても。そうして卒業しさえすれば、君は立派なレディになれる。好きな人と結婚することも、好きな職業に就くことも、自由だよ」
優しくあたしの目を覗き込むようにして、にこりと微笑む旦那様。
この時、あたしはなんだか突き放されるような気がして、さみしくて。
学校の図書館で読んだ「あしながおじさま」のように、貧しい少女に援助を惜しまないボランティアだ、と、それだけの関係なのだ、と、そう思い知らされて。
でも、だめ。
あたしは、旦那様のそばにいたい。
旦那様に、恩返しをしたい。
だから……。
「あたしは……、働きたいです。小等部を卒業したら、どうかここで働かせてください」
そう懇願した。
最初は渋っていた旦那様。
でも、最後は折れてくださった。
あたしのわがままを聞いてくれる形で、そのままここ、このお屋敷でメイドとして雇ってくださったのだった。
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