あなたがすき、だったから……。

友坂 悠

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木漏れ日。

「おばさま、こんにちわ」

「あらあらマオさん。今日はお仕事お休みなの?」

「ええ。今日は1週間ぶりのお休みなんです。だからちょっとお寝坊しちゃいました。でも、そのおかげでおばさまとお会いできて嬉しいです」

「うふふ。お仕事の時は毎朝早起きしてこちらにきてるんですってね。看護師さんに聞いたわ」

 看護師……。レイン師長のことかな……。

 まったりとした木漏れ日が照らすおばさまのお顔は、とても優しそうにみえる。
 母さんを愛してくださってるんだって、よくわかるから。

「一日に一回は母さんのお顔、見たくて……。そうすると朝しか無理なので……。看護師さんたちには無理言って入れてもらってるんです」

「あなたは良い子ね……」

「いえ……。母さんのところに毎日押しかけるのも、あたしのわがままですから……」

「確かに、病院のルールは破ってるのでしょうけど……。なんでも全て杓子定規に守らなければいけないものでもないわ。あなたが普段お仕事で夕方の面会時間には間に合わないことくらい、ここの看護師さんたちは皆ご存知のようですもの」

 うん。ほんと、看護師さんたちには頭があがらない。

「ええ。ほんと看護師さんたちには助けてもらってます」

「良い病院ね……。ここは……。この子も、フローラも、早く目を覚ましてくれると良いのだけれど……」

 目頭を抑え、そうおっしゃるおばさま。






 この10年の間でわかったことが一つだけある。

 母さんの病気は、実は自然な病気、ではなく、呪いの類だろう、ということ。

 一体、どこの誰が母さんを呪ったというのだろう。
 闇の魔法には人を呪うものがあるという。
 貴族院の小等部で習った魔法の基礎に、そうあった。

 貴族であれば誰しも多かれ少なかれ魔力がある。
 だからこそ、貴族院という学びの場で、その魔力の使い方を学ぶ義務があるのだという。
 まあ、小等部は基礎だけで、高等部に上がってから本格的な学びに入るということだったから、あたしはほんと基礎のさわりの部分しか学んでいないのだけど。

 母さんは男爵家の娘で、一応貴族だったのだろう。
 だったらなぜ母さんは父様の元から姿を消したのか。
 平民と貴族、ならともかく、侯爵と男爵令嬢であれば、多少の身分差はあってもそこまでの話じゃない。世間ではよくある、そんな身分差結婚でしかないのだから。

 日記には、あいしていたから身を引いた、それだけしか書かれていなかった。

 どうして三年だけの偽装結婚なんてことをしていたのかも。
 お父様の素性も、何も書かれていなかった。

 だけど、きっと、あたしがお父様の子だとわかるとお父様に迷惑がかかる、母さんはそう危惧していたのだろうということは察することができた。
 おばあさまも、それが分かっているから、あたしに名乗り出てくれないのかもしれない。
 それでも。
 今のあたしの幸せを自分のことのように喜んでくれた。
 それだけは、真実だと思うから。

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