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夜の街に。
エドワードが彼女、フローラと出会ったのは、夜の街、それも健全とは言い難い、そんな酒場だった。
あまり大きくない店構えの中には数人の女給。客はただ酒を飲むだけではなく、彼女らとの会話を求めてやってくる、という、そんな形態の店。
ただ酒を飲み食事をする、それが目的なら大きな広い酒場に行けば事足りる。
しかし。
エドワードの目的は違った。
後腐れのない女性。ある意味、お金で自分の目的のために利用できる女性。
そんな女性を探していたのだ。
そもそも、偽装結婚だなんて普通の女性に頼めるものでは無い、そう思っていた。
だってそうだろう。いくらお金を積んだとしても、自分の、人生のそれも一番若く本来であれば一番輝く時間を、数年だとしても手放すことができるそんな人、そうそういるものじゃ無い。
居たとしたら、それは自分の人生なんか捨ててしまっているような、そんな存在だと。
一応そう分析して、やってきたのがここ、夜の街。
夜の酒場街、だったのだ。
条件も、もちろんある。
世間体のためだけの相手だ。お飾りの侯爵夫人が務まるだけの容姿、気品、そういったものももちろん必要だった。
出身は平民であったとしても、少々の教育で貴族として振る舞うことができるだけの教養も欲しい。
そんな、都合のいい女性がそうそういるものか。
そもそもそんな女性であれば、本当の玉の輿だって狙えるだろうに、何を好き好んで人生の貴重な時間を犠牲にできるものか。
そういう疑念も、もちろんおいておいて。
それでも今の状態を解決するための手段として、藁にもすがる思いでこうして毎夜、夜の街に繰り出していたのだった。
カラン。
扉を開けるとそんな涼やかな鐘の音。
「あら、いらっしゃい。お一人?」
「ああ。一人だ」
「こちらにどうぞ、ふふ、よくみたら素敵なお召し物ね。ハナちゃん、このお客さんについてくれる?」
「はーい、ママ」
呼ばれてやってきた女性がエドワードの腰掛けたソファーの隣に、すっと潜り込むように座って。
ソファーはギリギリ二人が座れる程度の小ささだった。当然、身体は随分と密着してしまう。
「こんばんわ。お客さん、ここは初めて?」
「ああ」
「わたしはハナ。よろしくね。今日はお飲み物、何にします?」
「そうだな……、まずはエールを貰えるか」
「はーい。わたしの分もいい?」
「ああ」
「ママ、エール二つお願いね」
そうカウンターに声をかけるハナと名乗った女給は、軽やかに笑うとエドワードの顔を覗き込むようにして」
「お客さん、お貴族様、かな? あなたの瞳、宝石のように綺麗ね」
あまり大きくない店構えの中には数人の女給。客はただ酒を飲むだけではなく、彼女らとの会話を求めてやってくる、という、そんな形態の店。
ただ酒を飲み食事をする、それが目的なら大きな広い酒場に行けば事足りる。
しかし。
エドワードの目的は違った。
後腐れのない女性。ある意味、お金で自分の目的のために利用できる女性。
そんな女性を探していたのだ。
そもそも、偽装結婚だなんて普通の女性に頼めるものでは無い、そう思っていた。
だってそうだろう。いくらお金を積んだとしても、自分の、人生のそれも一番若く本来であれば一番輝く時間を、数年だとしても手放すことができるそんな人、そうそういるものじゃ無い。
居たとしたら、それは自分の人生なんか捨ててしまっているような、そんな存在だと。
一応そう分析して、やってきたのがここ、夜の街。
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条件も、もちろんある。
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出身は平民であったとしても、少々の教育で貴族として振る舞うことができるだけの教養も欲しい。
そんな、都合のいい女性がそうそういるものか。
そもそもそんな女性であれば、本当の玉の輿だって狙えるだろうに、何を好き好んで人生の貴重な時間を犠牲にできるものか。
そういう疑念も、もちろんおいておいて。
それでも今の状態を解決するための手段として、藁にもすがる思いでこうして毎夜、夜の街に繰り出していたのだった。
カラン。
扉を開けるとそんな涼やかな鐘の音。
「あら、いらっしゃい。お一人?」
「ああ。一人だ」
「こちらにどうぞ、ふふ、よくみたら素敵なお召し物ね。ハナちゃん、このお客さんについてくれる?」
「はーい、ママ」
呼ばれてやってきた女性がエドワードの腰掛けたソファーの隣に、すっと潜り込むように座って。
ソファーはギリギリ二人が座れる程度の小ささだった。当然、身体は随分と密着してしまう。
「こんばんわ。お客さん、ここは初めて?」
「ああ」
「わたしはハナ。よろしくね。今日はお飲み物、何にします?」
「そうだな……、まずはエールを貰えるか」
「はーい。わたしの分もいい?」
「ああ」
「ママ、エール二つお願いね」
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