高卒サラリーマンが脱サラして田舎でスローライフするだけの話

らいお

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閑話-持たざる者の行く末

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 私は、周囲から疎まれた存在だ。
 他の者とは違い、生まれ付き持つべき物を持って生まれる事ができなかった。だけどそんな事は私にはどうしようも無い事だ。誰に責任転嫁する事もできない事だ。
 だけど、なぜ持つべき物を持って生まれなかっただけでこんなにも疎まれなければいけないのか。毛の色や体の大きさなんかは他の者と同じだ。ただ、持っていないだけ。持ちすぎるよりもずっといいだろうに。

 生まれて最初のうちはよかった。生まれたばかりでは皆持つべき物が顔を隠しているからだ。だが、成長と共にそれは顔を出してくる。
 そりゃあ私も最初のうちは「なんでだろう、皆と成長の速度がちょっと違うのかな?」と思っていたさ。だが一向にそれは顔を出さないので、小さい頃からよく聞かされていた生まれ付きそれを持っていない者がいる、が私なんだと理解するのはそう難しい事ではなかった。
 そして、私は周りから蔑まれ、疎まれ、理解されなかった。

 皆は楽しそうだ。仲間と共に毎日穏やかに過ごしている。私も皆と同じだったら、あそこに混ざれたんだろうな。
 皆が一斉の動き出した。きっと、食事の時間だろう。
 食事は全員に配当されるが、当然のように私は最後で、余り物だ。
 私は、こんなつまらない日常を過ごしながら老いて、死んでいくんだろうな。誰でもいいから、助けてくれないかな。いや、そんなモノ好きはいないか。私の願いなんて、誰も叶えてくれやしないんだ。

 疎まれ出してから、どれくらい月日が流れただろうか。そんな事を気にしても意味無いか。私は毎日、同じような日々を過ごすだけだ。
 そんな事を思っていたが、今日は少し違かった。どうやら、外からの来客があるらしく、皆騒々しく騒いでいる。
 すると、1人の男と、1人の少女が現れた。2人は楽しそうに話しながら私達を眺めている。
 何だろう、これから何が起こるんだろう。私の中で、胸騒ぎなのか、期待なのか。よくわからない感情が芽生えてきている事が分かった。
 少女と目が合った。私は咄嗟に視線を切るように顔を背けたが、2人は私を見ながら何かを話している事が分かる。
 2人が近づいてきた。周りの皆は2人が私に近づくにつれ、どんどんと距離を取りながら離れる。
 2人が私の前で止まった。私をじっと見つめている。

「――――、―――――――――!」

 少女が男に向かって何かを言っているようだけど、私にはよく分からない。

「――――――――――?」
「―――、―――――――――――――――!」

 男は困ったような表情でため息をつきながら、少女は目を輝かせながらどこか興奮したように何かを話している。私はいったい、どうなってしまうのだろうか。
 すると、いつも私たちに食事をくれる男が現れ、2人と話をしだす。そして、私は急に布かなにかで顔を覆われ、視界を奪われてしまった。
 あぁ、私はこれから死ぬのかもしれないな。だけど、それもまた良いだろう。こんな何もない、楽しくもない日々を過ごすくらいだったら死んでしまった方がマシというものだ。

 それから私はよく分からない箱に入れられ、少しの間揺られることになる。私は不規則に揺れるせいで踏ん張ることができず、箱の中で小さく蹲る事しかできなかった。

 突然揺れが止み、箱が開けられる音がしたと思ったら、顔を覆っていた布を剝がされた私は突然光が目に入った事で視界が眩み、目を硬く閉ざしてしまう。

「――――――、―――。――――――――――」

 また何かよく分からない事を話しかけられる。恐る恐る目を開くと、男と少女が笑いながら私の事を手招いていた。その笑っている顔は、皆が私に向けるような嘲笑ではなく、どこか安心するような朗らかなものだった。
 私はそれを見て、特に疑うことなく立ち上がり歩みだす。2人に近づくと私の事を男は優しく抱き上げ、歩き出した。
 少し歩くと私は地面へと降ろされる。辺りを見ると、そこはとても広い場所だった。草が生えていて、地面は柔らかく、私以外に誰もいない。とても心地良い空間だ。

「―――――、―――――――――――。―――――――」
「―――――――――!」

 男と少女は私に話しかけ、優しく頭を撫でてくる。
 これまで優しくされた経験なんてほとんどなかった私は、2人の行動に少し困惑しつつも、穏やかな心情だった。もう、蔑まれる事もない、疎まれることもない。ここが、私の居場所だと理解した。

 ……あぁそうか。私は、ここにいていいんだな。ここでは、自由に過ごしていいんだな。

 私は走り出す。今までの鬱憤を晴らすかのように。そして、これからの自由を喜ぶかのように。
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