龍の王〜Lord of Bahamut〜

朝比奈歩

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永泰の夜

第二十四話

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ユースィフ達が永平房に着いた時には、すでに陽はかなり傾いていた。
平安寺には、ジュードによって呼ばれた景興が待っている。
「何だというのですか、こんな急に…」
景興はかなり急いで来たのであろう、僅かにその髪が乱れている。
「すまない。でも、この件に巻き込んだ以上、事の顛末を見届けたいかと思ってな。前回はもっと急だったから呼べなかったが、今回なら来られると思って」
「それは、その通りですが」
景興はそう言うと、ため息を吐いた。
「貴方は何事も突然すぎるのです」
「はは、そうだな、よく言われる。気をつけよう」
ユースィフは、そう言ってからからと笑うと、全く気をつける様子もなくそう言う。
景興は、諦めた様子で件の墓碑に目をやった。
「で、何をしようと言うのです?」
「陸曄と羊桂英の魂を、浄化させる」
「何ですって?」
ユースィフの言葉に、景興は目を見開く。
この男はたった数日で、そこまで進めて居たのかーー。
今、陸曄と羊桂英の魂はその恨みや未練のため、いわゆる『悪霊』のようになってしまっている。
だから、その魂を成仏させるにはまず、魂の浄化が必要ということになるのだ。
そうすることによって、この地にとどまる未練がなくなり、二人は成仏しやすくなるのである。
「なるほど。では、羊桂英の遺灰は手に入ったのですね?」
「遺灰も、所縁の簪も手に入れた」
そう言って、ユースィフはその簪を取り出すと、景興へ見せる。
「これは…確かにあの時見た、あの簪だ!」
景興はそう言うと、その身がぶるりと震えるのを感じた。
あの日と同じ、日の暮れた墓碑の前に、ふわりと生暖かい風が流れる。
いつも通りもやが現れ、それが二人を形作っている。
景興はドキドキと脈打つ心臓の音をうるさく感じながら、二人の姿が現れるのを待った。
心なしか、前回よりも形が鮮明に映っているような気がする。
『ーーー』
『ーーー』
何事がいいたげな二人の前に、ユースィフは件の簪を差し出す。
羊桂英は嬉しそうにその簪を受け取ると、大切そうにその髪に差し込んだ。
『ありがとうございますーー』
『ありがとうございますーー』
二人は同時に頭を下げると、そう言って手に手を取り合って微笑む。
「声がーー」
アスアドの声に、一同は同じ思いだった。
ふわり、と二人を包む風が巻き起こり、そこには無いはずの花びらが舞う。
ザァ、と一際強く風が舞い、一瞬の後二人の姿は消えた。
「ーーこれで、怪異は出ない筈だ。ひとまずのところはな」
「ひとまずのところ?」
ユースィフの言葉に、景興は首を傾げる。
「二人は浄化されたのではないのですか?」
「されたさ。でも、まだ最後の仕上げが残っている」
「最後の仕上げとはーー」
「そこで、あなたに頼んだ詩が必要になるのさ」
景興はううむ、と唸った。
「しかしだ。まだいくつか謎が残っている。まずはそっちを解き明かしていこうーー」

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