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10年前

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雨が酷く降る中、少年は傘も刺さず項垂れていた。男性と女性が1人ずつ血を流しながら倒れていた。それを両親と判別するのに時間は掛からなかった。少年の頭の中には倒れていることよりも誰がこの惨劇を生み出したのか、その原因を知りたかった。父は真面目なサラリーマンで人から恨まれるような人ではなかった。母も近所付き合いが上手く、人の悪口など聞いたことがないような人だった。その2人がなぜ血を流しながら横にならなければいけないのか?黒田誠也は怒りに満ちた目を作り上げた。
 その1週間後、犯人が捕まった。犯人は動機に「むしゃくしゃしていた。誰でもいいから憂さ晴らしのために傷つけたかった。」と話していたらしい。
 そんなどうでもいい理由で人を殺していいのだろうか、高校生の誠也にはその理由からこんな愚かな行動に移る意味がわからなかった。
 その一年後、裁判にて判決が決まった。懲役7年だった。傍聴席で見ていた誠也は目を大きくしながら固まった。人2人を殺しておいてたった7年。刑務所で過ごすだけで許されるのか?自分にとってはかけがえのない人を殺しておいて、ただの憂さ晴らしのために殺されたのになんで死刑にならないのか、死んで詫びるのが正しい贖罪ではないのか?その犯人が自分を見ながらニヤッと口角を上げたのを見逃さなかった。その時誠也は心に決めた。どんな犯罪者(クズ野郎)も絶対に許さない。自分のしたことを後悔させてやる。いや、後悔しても遅い。早く殺してくれと思い知らせてやる。その後のことなんか知るものか。犯罪者に同情の余地無し。裁かれて当然の人間に猶予なんか与えてやるものか。この国の正義は俺が正すと。
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