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しおりを挟む「おい、聞いたか!今回の遠征も圧勝だったらしいぞ」
「当たり前だ!なんたって軍を率いているのがあのルファンフォーレ伯爵だからな!」
「もうすぐ領地に戻られるんだろう」
賑わう街は領主の凱旋の話題で持ちきりでした。
それもそのはずーー・・・・
かつてのルファンフォーレ領地は鉱山が採れる豊かな土地。
しかし資源というのは有限。採ってしまえば無くなるもの。
栄えたのはたったひとときで、いつしか色を失くし、荒廃し、ルファンフォーレという名前さえ消えかけていました。
そんな時、やって来たのが今の領主だったのです。
オルテガ・ルファンフォーレ
男爵家出身の騎士であったオルテガは、南国との戦争で最前線で兵を率いて戦い、帝国に勝利をもたらしました。
その褒美として国王から与えられたのがルファンフォーレ領地だったのです。
「それにしても領主様も大変なこった」
「そうだよなぁ。新婚間もないってのに国王に次から次へと招集されて、領地に帰って来られるのももうどれくらいぶりだ?」
「結婚式の夜には遠征に出られていたよな。つまりは…」
「やめだ、やめだ。やっと領主様が戻られるめでたい時なのに、そんな話してちゃせっかくの気分も下がっちまうよ」
領主のオルテガの結婚を領民たちは喜んでいました。
それに加えて、嫁いでくるのは帝国で名の知れたアンシルヴィア家の伯爵令嬢だとも既に領民たちの間では噂になっていました。
これで伯爵家という帝国でも権威を持つ家門の後ろ盾ができると、領民は戦に明け暮れる領主の支えができると安堵していました。
式が取り行われたのは一年前。
よく晴れた、結婚式日和。
青空の下、馬車から現れたラニエラ・アンシルヴィアという女性を見て領民の誰もが息を飲んでいました。
洗練されたその姿に、身に纏うドレスや宝石の豪華さに、驚いたのです。
オルテガが領主になって領地が整い領民の暮らしが楽になったとはいえ、ラニエラを迎えるにはルファンフォーレ領地はあまりにも貧しいのではないかと、その時誰もが思いました。
それを体現するかのように、アンシルヴィア伯爵家は降りる花嫁を馬車の中で見送るとルファンフォーレ領地の土をその足で踏む事無く帝国へと引き返していきました。
教会の中で待つ領主と顔も合わせずに去っていくというのは、いくら伯爵位でも許されない無礼でした。
領民は身を粉にして領地に貢献しているオルテガが侮辱されたことが許せませんでした。
しかし当人のオルテガは、アンシルヴィア伯爵家に侮辱にも等しい対応を受けたにもかかわらず、それでもラニエラを妻として迎え、式は最後まで取り行われました。
誓いの口付けを省いて。
そして領主は新婚に関わらず結婚式を挙げたその日の夜、遠征へ。
元々この結婚は国王の名の下、進められたものでした。
アンシルヴィア伯爵家は名のある家門ではありましたが、年々とその力は失われつつありました。
そんな時、舞い降りたのがこの政略結婚だったのです。
この結婚でアンシルヴィア伯爵家は、帝国屈指の戦力であるルファンフォーレの騎士団を動かせる名目ができるようになります。
そしてルファンフォーレ伯爵は、力を失いつつあるとは言いますがそれでも帝国で大きな力を持つアンシルヴィア伯爵家という後ろ盾ができます。
これは両家にとって、とても有意義な結婚だったのです。
そういった背景から愛の無い政略結婚だと、噂になるのも仕方のない事でした。
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