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しおりを挟む「ー…今宵は城を解放し、旦那様と騎士団の帰還を祝ってささやかではありますが宴が催される予定でございます」
昼が過ぎた頃、医師と昨夜捻った足の様子を見に来たロバンがそう言った。
オルテガが城にいる以上、妻であるラニエラが部屋でひとり食事をするのもあまり外聞が良くないのも分かっている。
昨晩は許されたけど、今回はどうだろう—…そう窺うようにロバンを見るとやはりロバンは困ったような表情を浮かべている。
垂れてくる自身の髪がカーテンの様にラニエラの表情を隠す。
暗くなった視線で考えるのは数時間前の事。
正直、宴なんて行きたくない。
オルテガを前にして食事が喉を通るとは思えないし、あまり人前で食事を取りたくなかった。
ルファンフォーレ領は内陸部に位置する為かラニエラが過ごしていた帝都とは食糧事情が異なる。
勿論、城の食事は領民のものに比べると豪華ではあるが、それでも帝都で食べていた食事には遠く叶わなかった。
加えて、辺境にある事もあってあまり他の領と交流もないからなのか味付けの種類も多くなく、もとより欠けている食事への興味を一層無くしてしまっていたからだ。
それでも—…
ちらりと髪の間から盗み見たロバンはいつもより疲れて見える。
いつもなら隙なく丁寧に後ろに束ねられている灰色の髪もすこしだけ乱れている気がする。
主人が帰ってきて執事長として多忙なのだろうが、果たしてそれだけだろうか…。
そこまで考えるとため息が漏れそうになるが、ため息をつきたいのは彼の方だろうとラニエラは唇を噛んだ。
この間、無言ではあったがラニエラの前ではこれが常だった。
そしてロバンはラニエラが此処に嫁いできてからというもの、その常を守り、待ち、そしてラニエラという人間を尊重してくれた。
小さく頷いたラニエラに、ロバンは「ありがとうございます、奥様」とそれは嬉しそうに返し、浮足立つ足取りで部屋を後にしたのであった。
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