不快な世界

吉沢 月見

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コテージA

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 新しいコテージはダウンライトとベッドに備え付けの照明をつけても明るくない。妻の芽が悪くならないか心配だ。スマホのライトをつけてあげようか。

「なに読んでるの?」
 とベッドにうつ伏せになっている美也子に聞いた。読書が趣味である妻は文庫本も高くなったと嘆いていた。好きなジャンルは違うものの美也子は結婚してから僕の所有する本を読むことが楽しいようだ。それが結婚の醍醐味と言われているようで、嬉しい。

「山怪」

 なんでここへ来るのにわざわざそれを選んだのだろう。妻になったからって急に思考が理解できるわけじゃない。栄養士なのに食にもそれほど興味がないようだ。よくわからないが、一歩引いて見る相手としてはとても楽しい。

「夜中、怖くなって起きても知らないよ」

 ホラー映画は二人とも好きではない。

「あなたは起きてくれるわ」
 と言われたら、妻の言う通りにしてしまう。これが惚れているということなのか、尻に敷かれているのかもわからない。いろんなことをうやむやにしてゆくのが結婚生活だと気づき始めている。

「ベッド、ふたつあるからたまには別々に寝る?」
 と聞いてみた。返事がノーであることを祈りながら。

「寒いわ。あ、これなんて読む?」

 何の気なしにの文章を美也子は指さす。指が太いことも気にしている。

「なんのけなしに、って言わない?」

「何の気なしに振り返ると…、この先怖そう」
 と本を閉じた。ここでやめられる神経がわからない。これからが面白いところだ。もしかしてサイコパスなのだろうか。ミステリー小説の惨殺された死体にだけ興味があって犯人捜しはどうでもいい人だったらどうしよう。

 妻は、特段そそられる体ではない。しかし密着すれば、そういう気持ちにはなる。

 彼女はどこへ行くにも自分のパジャマを持参する。温泉だったら浴衣を脱がせたいし、ホテルならバスローブをはだけさせたい。上下の普通のパジャマでは家気分。

「コテージでよかった。グランピングのあの透明なテントだとセックス禁止らしいよ」

「どうして?」

 美也子は自らボタンを外していた。

「声が漏れるから?」

「人に覗かれるからかと思った」

 そっちのほうが好きなのだろうかと疑ってしまう。こんなにいい人がなんでこの歳まで一人だったのだろう。パンツまで自分で脱いじゃうからではないだろう。

 程好い肉づきを気にしているようだが、それがいい。なぜか妻はそれに気づかない。どこかしこを触ってももにもにしてちょうどいい。僕の手が喜んでいる。
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