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俺の人生
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面接は社長直々に行われた。
「まだ小さい会社だがこれから大きくしたい」
社長は普通のおじさんで、社員はまだ六人らしい。惹かれた理由は特にない。働いて月給をもらう生活がしたかっただけだ。
入社してみると、保険や助成金が使えるからと屋根や雨どいを直す、詐欺ではないがろくでもない仕事。大雨や災害があると補修の連絡が客から入る。社員の中に職人も二人いたが、足りないときは他の職人に頼んだ。
あっという間に一年。外回りの仕事をしているせいなのか、
「この辺で安くてうまい飯知ってる?」
と職人や業者に聞かれることが多くなった。勝手に食通扱いされるのは妙であったが、よく食べるからだろうとある日、納得。
「小野里が教えてくれる店はどこも安くてうまい」
と社内でも話題になる。気をよくした俺はその日に行った店をブログで書くことにした。同僚や職人さんたちとごはんを共にすることもあり、楽しい日々だった。
仕事のやりがいもあるし、たまに客から、
「直せてよかったわ」
と感謝されることもあった。
ちょうどその頃、数名しかいない友達が立て続けに結婚をした。その頃から体系が太目に変わりつつあった。寂しかったのだ。
「お前が教えてくれる店はうまいんだけど女の子は連れていけない」
と知り合いに言われ、昼は仕事のついでに、夜は一人で個室完備の店などを回った。母はうちで食事を取らないことを心配してくれたが、
「仕事の付き合いだよ」
と言えばそれ以上口出しはしない。
二年目のとき、ちょっといいなと思っていた事務員さんが知り合いの職人さんと結婚退社が決まり、その送別会で初めて彼女ときちんと話した。
「小野里さん、最初は気持ち悪いなって思ってたんです。社会人経験がないから非常識に思えて。今はそんなことないですよ。逆に私が社会に染まってしまったんだなって、自分の思考が」
もう仕事を辞める人からなんでそんなことを居酒屋のトイレの前で言われなくちゃいけないのだろうと疑問に思った。家に帰ってから、注意でも僕を褒めたのではなく、彼女なりの会社から離れる寂しさから出た言葉なのだろうと風呂に浸かりながら推測した。水面に浮いているこの白い陰毛は父親だろうか。胸毛かもしれない。親に遺伝の責任を取ってほしいとも思わなくなってきた。思考が変わったのは退職した彼女のせいでもない。
人の感情などどうでもよかった。僕はおいしいお店を見つけること、新しいお店を発見することが生きがいになっていた。行動範囲から店の人に僕とわかられるのも嫌だったし、
『住んでるのこの辺?』
とブログを読んでいる人に思われるのも嫌だったので、徐々に他県まで足を伸ばすようになっていた。旅が趣味になると、結局はおいしいお店をネットから探してしまい、本末転倒。
仕事もそうだが、充実感が大事。
「まだ小さい会社だがこれから大きくしたい」
社長は普通のおじさんで、社員はまだ六人らしい。惹かれた理由は特にない。働いて月給をもらう生活がしたかっただけだ。
入社してみると、保険や助成金が使えるからと屋根や雨どいを直す、詐欺ではないがろくでもない仕事。大雨や災害があると補修の連絡が客から入る。社員の中に職人も二人いたが、足りないときは他の職人に頼んだ。
あっという間に一年。外回りの仕事をしているせいなのか、
「この辺で安くてうまい飯知ってる?」
と職人や業者に聞かれることが多くなった。勝手に食通扱いされるのは妙であったが、よく食べるからだろうとある日、納得。
「小野里が教えてくれる店はどこも安くてうまい」
と社内でも話題になる。気をよくした俺はその日に行った店をブログで書くことにした。同僚や職人さんたちとごはんを共にすることもあり、楽しい日々だった。
仕事のやりがいもあるし、たまに客から、
「直せてよかったわ」
と感謝されることもあった。
ちょうどその頃、数名しかいない友達が立て続けに結婚をした。その頃から体系が太目に変わりつつあった。寂しかったのだ。
「お前が教えてくれる店はうまいんだけど女の子は連れていけない」
と知り合いに言われ、昼は仕事のついでに、夜は一人で個室完備の店などを回った。母はうちで食事を取らないことを心配してくれたが、
「仕事の付き合いだよ」
と言えばそれ以上口出しはしない。
二年目のとき、ちょっといいなと思っていた事務員さんが知り合いの職人さんと結婚退社が決まり、その送別会で初めて彼女ときちんと話した。
「小野里さん、最初は気持ち悪いなって思ってたんです。社会人経験がないから非常識に思えて。今はそんなことないですよ。逆に私が社会に染まってしまったんだなって、自分の思考が」
もう仕事を辞める人からなんでそんなことを居酒屋のトイレの前で言われなくちゃいけないのだろうと疑問に思った。家に帰ってから、注意でも僕を褒めたのではなく、彼女なりの会社から離れる寂しさから出た言葉なのだろうと風呂に浸かりながら推測した。水面に浮いているこの白い陰毛は父親だろうか。胸毛かもしれない。親に遺伝の責任を取ってほしいとも思わなくなってきた。思考が変わったのは退職した彼女のせいでもない。
人の感情などどうでもよかった。僕はおいしいお店を見つけること、新しいお店を発見することが生きがいになっていた。行動範囲から店の人に僕とわかられるのも嫌だったし、
『住んでるのこの辺?』
とブログを読んでいる人に思われるのも嫌だったので、徐々に他県まで足を伸ばすようになっていた。旅が趣味になると、結局はおいしいお店をネットから探してしまい、本末転倒。
仕事もそうだが、充実感が大事。
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