彼と私は時々キスをする

美衣

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2章

彼の変化

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お互いが何かを忘れ、お互いがお互いを求めた。


「珍しい…ね。志乃から、こんなに…してくるの。……どうしたの?うれしいけど…」


キスの合間に話す彼の唇をまた私は塞いだ。

私から、彼に何かを求めることはしてはいけない事だと決めていたから。少しでも重い女だと、面倒くさい女だと思われたら、貴方はもう会ってくれなくなるでしょう?
そして、触れてくれなくなるでしょう?

だから。……でも…ー


「き…だか…ら………っ……好き、だか……ら……ー」


「初めて…こんなに言われた。俺も、好きだよ。」


そしてまた、唇を重ねる。

その時、けたたましく携帯の着信音が響き、驚いてお互いの顔を見つめあった。次に、階段の外を見るとやはり彼女達はいなくなっていた。


「まさか、マナーモードじゃなかったとは。あの子達がいる時に鳴らなくて良かったね。」


鳴ったのは、私の携帯電話。


「…ごめ…ほ、ほんとだよね……」


いきなり現実にひき戻されて、恥ずかしくて彼の顔を見られなかった。


「迎えが来たんだね。」


携帯を取り出すと、ディスプレイには幸助の文字。彼がM駅に着いた事を意味する。


「もしもし?」


ー志乃?着いたけど、どこいんの?


「あ、トイレいる。ちょっと待ってて、今行くからあああっ!!」


え、何?ちょ、し…信じられない!!


私は振り向き、悪戯そうに笑う彼を睨んだ。
電話で幸助と話している私の首筋をあろう事か彼は舐めたのだ。


ーえ?どうしたの?


電話の向こうで心配そうな幸助の声が聞こえる。


「な、何でもないよ。ごめんね、今行くからじゃあね!」


絶対に不自然だった。
確実にあとで何かを問われてしまう感じで、電話を切ってしまった。
他の男の人とキスをした後、その人の膝の上で何事も無かったかのように彼氏の電話に出る私も私だけれど。
でも、


「何するの!」


「いや、なんか可愛くて。」


か、かわ…可愛いって……

私もどれだけ純情なんだ。彼に可愛いと褒められただけで、言葉を失うくらいにはときめいたらしい。
……幸助にバレたら、そうも言っていられないのだけれど。


「…もう。私、そろそろ行かなくちゃ。」


そうして、彼の膝の上から降りた。上った階段は5段くらいだから、そのまま階段も降りようとした。


「ねぇ……」


そう言いながら、彼は私の腕を掴みまた自分の元へと引き寄せる。
階段の上に立ち上がっていた彼の胸が、私を受け止めた。


「…っくりしたーー…。階段なんだから、危ないで「…愛してる」


………。


「………。」


「じゃ、気をつけてね」


そう言って彼はわたしの頬に軽くキスを落とし、階段を降りて行った。


「あ、うん。…また、ね」


歩いて行く彼の後ろ姿に言葉を残し、私も反対方向に歩いて行く。
頭がぼーっとしていて、少し前まであったことがまるで夢のように感じる。

ー私、今まで彼と一緒にいたんだよね。…お店で飲んでた時から、なんか様子がおかしかったし…。あんな甘える彼も初めて見た。


「志乃!こっちこっち!」


路肩に車を停め、その外でタバコを吸っていた幸助が私に向かって手を挙げた。

ー外であんなにキスされたのも初めて。


「あ、幸助。いつもごめんね、ありがとう」


そう言って私は車の助手席に乗った。
続いて幸助も運転席に座り、車を発進させる。


「志乃、お疲れ。今日はこっちの店舗に戻ってきたの?」


「あーううん。今日お店終わってから、高城さんと飲んでたの。愚痴聞いてもらってた。」


そして、さっきまで貴方に言えないことをしていたんだよ。


「高城さん、優しいなー。大事にしなきゃね。」


貴方を裏切る原因になった人だけれどね。


「うん。本当に尊敬してるから、ずっと仲良くすると思う。」


私の家に向かって走る車の中で、幸助と1ヶ月ぶりに直接会っての会話をしていた。
…のに、私はまったく違うことを考えていた。


ー…愛してる

ねぇ高城さん、さっきの何……?













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