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第一章 少年、チカラの片鱗を見せる

第六話 少年は、未測定値。

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 チュンチュン

 まだ、太陽の姿は見えず、水平線の向こうが明るく染まっていた。目が覚めると、アランはすでにおらず、空になっていた。特に心配もせずに、窓を開け放ってみると、予想通り、宿の裏で剣の稽古をしていた。

 シュッ ヒュンッッ

 宙を切る剣の音は、一定のリズムを打っていく。剣は鞘に入れられた状態であり、大変重そうなのだが、まるで重さを感じさせないくらい、しっかりとした軌道を描いていた。

 ユウにとって、この朝の鍛錬の時間のアランは、嫌いではなかった。不気味な笑みを浮かべてはいるが、恐ろしいほど真剣なのは伝わってきた。


 
 「なぁ、あの朝の鍛錬をアランは毎朝しているのか?」

 「ったりめぇだ。……もぎゅ、ごくんっ、努力しないで強くなれるほど、世の中、甘かねぇよ。」

 鍛錬の後、朝ごはんを食べながら、何気なく聞いてみた。最近気づいたのだが、このいけ好かないイケメンは、意外にも、かなり努力家らしい。

 「僕も、剣は使わなきゃなのか?」

 「ん? 多少はできるだろ?」

 「いや、僕のいたところは平和だったから、まず、剣とか武器は、一般人は握らないし、ほとんど見ないよ。」

 「えっ……?? 見ないし、触ったことがない、だと?!」

 驚きを隠せないアラン。平和ボケな日本の世界なんて、おそらく想像すらできないだろう。

 「狩とかで、使わないのか? そうでなくても、自衛のために使うだろ?」

 おそらく剣は、持つはずがない。銃だったら、日本はないが、アメリカ家庭ならあるだろう。ヨーロッパでも、時たまに狩は見たが、小さかった自分が直接参加したことはなかった。

 「狩をしなくても、お店に行けば、既に解体された状態で売っているし、確かに危険な地域もあるけれど、剣は使わないよ。前の世界では、違う武器を使われていたかな。」

 「剣じゃない武器?」

 「んーと、引き金を引いたら、炎のマジックが発動するような武器だよ。まぁ、とにかく僕は、剣をこれっぽっちも使えない。」

 アランは、あからさまに、溜め息を吐いてぼやいた。

 「姫様のやつ、本当に剣を教えるつもりかよ? いっそのこと、今からでも、女として仕込んだ方が、まだいいんじゃねぇか。」

 確かに自分のような、細い腕で、背も小さい自分が、アランのように剣を振り回すのは、不可能に思えた。

 「なぁ、アラン。この世界は魔法があるなら、魔法を教えてくれよ。」

 「魔法っ……!? おまえ、魔法の才能が無いから、使えないんじゃねぇのか?」

 「そうなのか? 僕の世界には、魔法なんて無いから。」

 またもや度肝を抜かれて信じられないと言いたげに、穴が開きそうなほど優を見た。

 「……魔法がない? じゃあ、魔力や生命の流れマナも測ったことがないのか? だとしたら……よし、今日中には訓練所には着くから、ささっと測定してもらおう。」

 ゲームで聞いたことがあるような、魔力やら、マナとかが実在するらしい。優にとっては、思わずドキドキした。イギリスにいた時、あの、ハ○ー・ポッターを何回見たことか。もしかしたら、ホグワーツのような場所もあるかもしれない。







---作者の時間---


今回は短いです、うう、リアルが忙しいとか。
誰かぁ、もう少し、手と頭をわけてください~
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