伝えし言葉

pulun

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街並み

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 そう言えば、ゆらはもうあいつと再会したのだろうか

まだあれから1日しか経っていないことを僕は思い出した、と同時に、ゆらとあいつの間にみらいという子どもがいて、みらいはあの若さでひとりぼっちになってしまったのだという、なんとも言えない悲しみにも気がついた

「あいつが何処にいるか知ってるの?」

「まだ知らないの、、」

そうか、、だが一つの疑問が湧いた。どうしてゆらは僕に手紙を託したのだろう。死後の世界の存在を知っていたのか、、?知っていたのなら自分がもうすぐあいつに会うであろうことはわかっていたはずだ

「どうして僕にこの手紙を?」

そう聞くと、何の返事もない。自分で考えてみても全く理由が思いつかない

「あそこのお店に入ってみよう」

ゆらは近くの本屋さんを指差した

死んでからの世界でも、生前と同じような暮らしができるのだなという安心感を感じてきた

 本屋に入る。僕は本が好きなので本屋の雰囲気に気持ちが安らいでいく

ゆらはきっとそれを知って中に入ろうと言ってくれたのだ。こういう心配りをしてくれるところも僕は好きだった

本屋をくるりと一周しおすすめの小説などの話をした。生前飲み屋以外にゆらと出かけることはあまりなかったので、こんな風に過ごせることも幸せだ

この世界は僕にとって最高の場所かもしれない

 そろそろ本題に入らなくてはいけない。ゆらもあいつの話をそろそろしたそうだった

「ここにはいないね、次は何処に行ってみる??」

ゆらに聞いた

「私行ってみたいところがあるの。彼がいるかわからないけど、そこに行っても良い?」

もちろんだ、ゆらの行きたいところなら何処にでもついて行く

「どこなの?」

「街外れの山の上にあるオルゴール屋さん」

「行ってみよう」

なんだか楽しそうな場所で心が弾んできた。ゆらはオルゴールが好きだったのか。職場やその他、たくさんの時間を共有したつもりでいだけれど、知らないことがたくさんあり過ぎる

 さて、移動手段はなんだろう。僕は幽霊になったら空でも飛ぶのじゃないかと思っていた。ここは死後の世界だが誰も透けてもないし飛んでもいない

「こっちよ」

ゆらは地下に繋がる階段の方へ僕を連れて行く

ゆらはこの世界の地図を何処で手に入れたのだろう。2人で階段を降りる




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