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第一章
6話 カリナの別れ
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ふらふらと裏路地を歩き回っていると、懐かしい革の香りに引き寄せられ、おおきな靴工房に辿り着いてしまった。
窓から中を覗くと、何人かの職人が忙しなく働いている。
「おい!こんなんじゃ売りもんにならないだろ!!やり直しだ!!」
投げつけるように渡されたブーツの受け取り、汗を拭う人を見て、思わず声を息を呑んだ。
夫だ。
結婚した時は30歳近かったから、まだ25歳くらい。小さな自分の工房を立ち上げたばかりで結婚して、店を経営するのに苦労したのを思い出す。接客が苦手の彼の代わりに、いつも店に立つのは自分だった。子供が生まれても背負って店に立っていた。
あの可愛い子どもたちを抱きしめることももうないんだと思うと、胸が切ない気持ちで締め付けられる。
だけど不思議と彼ともう一度はじめたいという気持ちにはならなかった。
あの80年で彼と歩む人生は終わったんだ。
革を撫で、縫い目を確かめるその横顔は、若いけどよく知るあの人そのものだった。
彼と一緒に切り盛りしたあの店は戦乱の中捨てて逃げるしかなかった。
きっといつか、彼はまた誰かと店を始めるのだろう。
その人とも可愛い子どもを作るのだろう。
それでいい。
私はやるべきことがある。
今度は彼が店を捨てずにすむように国を守るんだ。
「アメリア!」
突然肩を掴まれ、振り向かされると大きな身体に吸い込まれた。
息もできなくないくらい強く抱きしめられ、甘い香りであの人だと気づく。
「ヴァ・・ヴァルク?」
「はあ・・・勝手にうろちょろするな。いや、俺が悪い。君を1人にすべきじゃなかった。」
「く、くるしい」
肩を掴まれたまま、乱暴に引き離された。ヴァルクはいつもの彼らしくなく、汗まみれで、情けなく眉がハの字になっていた。
「泣いていたのか?」
真っ赤になった目を見て、ヴァルクはもう一度抱きしめて来た。今度は優しく体を覆われた。
「ひとりにしてすまなかった。」
ーーーヴァルクはなにも悪くないのに、何も知らない彼がなぜ急にこんなに優しいのか、わからないけど、抱きしめられたその腕の中が暖かく、カリナの人生が走馬灯のように思い出された。
あの子たちがどうか幸せでいますように。
子どもたちの、孫たちの生きる世界が、平和な世でありますように。
この世界で産んであげられなくて、もう会えなくてーーーーごめんね。
止めどなく溢れる涙を抑えられず、嗚咽しながら泣いてもヴァルクは何も言わず、ただずっと抱きしめてくれていた。
一体いつまでそうしただろう。
涙が止まると気恥ずかしくて、なかなか顔を上げられないままだったが、一向に何も言わないヴァルクにさすがに申し訳なくなってくる。
「ねえ…えっと…もう大丈夫よ。」
ようやくゆっくり体が離れ、心配そうに覗き込むその表情にドキリと心臓が高なった。
(本当に私のこと心配してくれたのね。)
「ごめんなさい、急にいなくなってしまって。なんだか色々と考えてしまって。」
「もう帰ろう。」
「ええっ嫌よ!せっかく外出許可が出てるのよ!!さっ気を取り直して、今度は露店を見てまわりましょう。」
ヴァルクの手を取って先を歩こうとすると強い手に引き寄せられた。
「本当に大丈夫か?」
ーーー私は彼と、ヴァルク・ストーンと生きてく
ーーーその先にアメリアの未来と国の未来があると信じてるから
「ええ、もちろんよ。」
その手を強く強く握った。
この手に必ず未来がある。
窓から中を覗くと、何人かの職人が忙しなく働いている。
「おい!こんなんじゃ売りもんにならないだろ!!やり直しだ!!」
投げつけるように渡されたブーツの受け取り、汗を拭う人を見て、思わず声を息を呑んだ。
夫だ。
結婚した時は30歳近かったから、まだ25歳くらい。小さな自分の工房を立ち上げたばかりで結婚して、店を経営するのに苦労したのを思い出す。接客が苦手の彼の代わりに、いつも店に立つのは自分だった。子供が生まれても背負って店に立っていた。
あの可愛い子どもたちを抱きしめることももうないんだと思うと、胸が切ない気持ちで締め付けられる。
だけど不思議と彼ともう一度はじめたいという気持ちにはならなかった。
あの80年で彼と歩む人生は終わったんだ。
革を撫で、縫い目を確かめるその横顔は、若いけどよく知るあの人そのものだった。
彼と一緒に切り盛りしたあの店は戦乱の中捨てて逃げるしかなかった。
きっといつか、彼はまた誰かと店を始めるのだろう。
その人とも可愛い子どもを作るのだろう。
それでいい。
私はやるべきことがある。
今度は彼が店を捨てずにすむように国を守るんだ。
「アメリア!」
突然肩を掴まれ、振り向かされると大きな身体に吸い込まれた。
息もできなくないくらい強く抱きしめられ、甘い香りであの人だと気づく。
「ヴァ・・ヴァルク?」
「はあ・・・勝手にうろちょろするな。いや、俺が悪い。君を1人にすべきじゃなかった。」
「く、くるしい」
肩を掴まれたまま、乱暴に引き離された。ヴァルクはいつもの彼らしくなく、汗まみれで、情けなく眉がハの字になっていた。
「泣いていたのか?」
真っ赤になった目を見て、ヴァルクはもう一度抱きしめて来た。今度は優しく体を覆われた。
「ひとりにしてすまなかった。」
ーーーヴァルクはなにも悪くないのに、何も知らない彼がなぜ急にこんなに優しいのか、わからないけど、抱きしめられたその腕の中が暖かく、カリナの人生が走馬灯のように思い出された。
あの子たちがどうか幸せでいますように。
子どもたちの、孫たちの生きる世界が、平和な世でありますように。
この世界で産んであげられなくて、もう会えなくてーーーーごめんね。
止めどなく溢れる涙を抑えられず、嗚咽しながら泣いてもヴァルクは何も言わず、ただずっと抱きしめてくれていた。
一体いつまでそうしただろう。
涙が止まると気恥ずかしくて、なかなか顔を上げられないままだったが、一向に何も言わないヴァルクにさすがに申し訳なくなってくる。
「ねえ…えっと…もう大丈夫よ。」
ようやくゆっくり体が離れ、心配そうに覗き込むその表情にドキリと心臓が高なった。
(本当に私のこと心配してくれたのね。)
「ごめんなさい、急にいなくなってしまって。なんだか色々と考えてしまって。」
「もう帰ろう。」
「ええっ嫌よ!せっかく外出許可が出てるのよ!!さっ気を取り直して、今度は露店を見てまわりましょう。」
ヴァルクの手を取って先を歩こうとすると強い手に引き寄せられた。
「本当に大丈夫か?」
ーーー私は彼と、ヴァルク・ストーンと生きてく
ーーーその先にアメリアの未来と国の未来があると信じてるから
「ええ、もちろんよ。」
その手を強く強く握った。
この手に必ず未来がある。
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(追記2018.07.24)
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(追記2018.07.26)
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