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第一章
7話 デートの続き
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露天が並ぶ街の中心街に入ると、ヴァルクに肩を抱かれた。
ちらりと彼を盗み見ると、行き交う人々に目を配る中、時々視線が外れる。その先を見てみると、街には似つかわしくない騎士がどうにか馴染もうと至る所に立っている。
「もしかして……護衛の方達ですか?」
さきほどまでは確かにヴァルクひとりだったはずなのに、この通りには不自然に武装した男たちがいる。
「ああ、さすがに、何があるかわからないから、あなたの行きたいであろうところに配置しておいた。まさか一番初めに鍛冶屋に行くとは思わなかったがな。」
自然と微笑む彼は悪くない。
いつのまにか彼にときめく回数も増え、80歳で人生を終えたとは思えないくらい心は若返っていた。
(身体が18歳のアメリア様だから、心も連動しちゃうのかしら。)
いい年した自分がドキドキと胸をときめかしているのはどうなのだろうと思ったが、目の前に広がる色とりどりの品物に気持ちは移り、思わず足を止めた。
小さな木箱に並ぶ、花を樹脂で閉じ込めたアクセサリー。その中に、淡い霞草を閉じ込めた涙型のネックレスがあった。
「ねえ、これ素敵だと思わない?」
首元に当ててみせると、ヴァルクは一瞬だけ目を丸くした。その瞳がすぐに緩み、柔らかな光を帯びる。
「……悪くない」
短い言葉に胸が跳ねる。
すると彼は店主に銀貨を数枚差し出すと、あれを貰おうと声をかけた。明らかに額が多いので店主が慌てて返そうとするも、礼だと言うと、アメリアの手からネックレスを受け取り、フードを下げた。
「あっあの自分でできます!」
慌てて止めようとするも無言で後ろに回ると首元にネックレスを回わされる。
冷たい金具が首筋に触れた瞬間――指先がかすかに肌をかすめ、アメリアは小さく息を呑む。
ヴァルクの大きな手が三つ編みに編まれた長い髪ををそっと持ち上げる。その仕草は驚くほど優しく、まるで宝物を扱うかのようだった。
金具がカチャリと留まる音がして、彼は流れるように髪を戻し、再びフードを被せる。
そして真正面に回り込むと、真っ直ぐに目を合わせてきた。
「ああ……凄く似合ってる。」
熱を帯びた低い声に、アメリアの頬は一瞬で真っ赤に染まった。
真っ赤になったアメリアを見て、ヴァルクもまたゴホンと咳払いをして目を逸らす。
すっかり優しい男に変身した彼にどんな反応をしていいか迷い、誤魔化すように口を開いた。
「なんだか、暑くなって来ました。なにか冷たいもの食べたいですね。」
「ああ、それなら向こうにジェラートが売っている。有名店らしいから美味しいんじゃないか?」
たしかにそこは有名なジェラート店でカリナもアメリアと共に食べに行ったことのある店だった。彼がジェラートを食べる姿はなんだか想像するとくすりと笑ってしまうが、そんな若い子が好きそうな店を知っていることに驚いた。
ふたりは並んで歩き、色とりどりのジェラートを選んだ。
アメリアは苺のピンクを、ヴァルクは無難に白いミルクを。
一口食べたヴァルクが眉を動かし、ぽつりと呟く。
「……意外と悪くないな」
その素直すぎる感想に、アメリアは思わず笑みをこぼした。
「本当とても美味しい!よくこんなお店知ってましたね?私が思っていたよりもあなたは女性の趣味を心得ているのかしら?」
少し意地悪な言い方をしてみると、困ったように苦笑する。
「それなら良かったのかもしれないが、残念ながら騎士団の部下たちに聞いたんだ。
気に入ってもらえて良かったよ。」
「…実はずっと気になっていたんですが、あなたから甘い匂いがするんですけど。」
チラリと見ると、思いもよらない指摘を受けたからか、ヴァルクの顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「そ、それは…あっあいつらにかけられたんだ!変な匂いの水を!訓練した後の汗臭いまま行く気かとかなんとか言ってっ」
焦って弁明する彼はとても可愛く感じる。
「くすくすっそうだったんですね。
汗臭いだなんて感じなかったですが、あなたから甘い匂いがするので不思議だなぁと思ってたんです。」
「ったく、あいつら……あとで覚えてろよ。」
照れ隠しなのか、ブツクサと文句を言う彼の隣はとても心地よかった。
やがて通りを抜け、丘の上に出ると、視界が一気に開けた。
傾き始めた陽が街を黄金色に染め、遠くの屋根や川面まで柔らかい光で包み込む。
「わあ……きれい」
ジェラートを手に夕陽を見上げるアメリアの横顔を、ヴァルクはしばらく無言で見つめていた。
ちらりと彼を盗み見ると、行き交う人々に目を配る中、時々視線が外れる。その先を見てみると、街には似つかわしくない騎士がどうにか馴染もうと至る所に立っている。
「もしかして……護衛の方達ですか?」
さきほどまでは確かにヴァルクひとりだったはずなのに、この通りには不自然に武装した男たちがいる。
「ああ、さすがに、何があるかわからないから、あなたの行きたいであろうところに配置しておいた。まさか一番初めに鍛冶屋に行くとは思わなかったがな。」
自然と微笑む彼は悪くない。
いつのまにか彼にときめく回数も増え、80歳で人生を終えたとは思えないくらい心は若返っていた。
(身体が18歳のアメリア様だから、心も連動しちゃうのかしら。)
いい年した自分がドキドキと胸をときめかしているのはどうなのだろうと思ったが、目の前に広がる色とりどりの品物に気持ちは移り、思わず足を止めた。
小さな木箱に並ぶ、花を樹脂で閉じ込めたアクセサリー。その中に、淡い霞草を閉じ込めた涙型のネックレスがあった。
「ねえ、これ素敵だと思わない?」
首元に当ててみせると、ヴァルクは一瞬だけ目を丸くした。その瞳がすぐに緩み、柔らかな光を帯びる。
「……悪くない」
短い言葉に胸が跳ねる。
すると彼は店主に銀貨を数枚差し出すと、あれを貰おうと声をかけた。明らかに額が多いので店主が慌てて返そうとするも、礼だと言うと、アメリアの手からネックレスを受け取り、フードを下げた。
「あっあの自分でできます!」
慌てて止めようとするも無言で後ろに回ると首元にネックレスを回わされる。
冷たい金具が首筋に触れた瞬間――指先がかすかに肌をかすめ、アメリアは小さく息を呑む。
ヴァルクの大きな手が三つ編みに編まれた長い髪ををそっと持ち上げる。その仕草は驚くほど優しく、まるで宝物を扱うかのようだった。
金具がカチャリと留まる音がして、彼は流れるように髪を戻し、再びフードを被せる。
そして真正面に回り込むと、真っ直ぐに目を合わせてきた。
「ああ……凄く似合ってる。」
熱を帯びた低い声に、アメリアの頬は一瞬で真っ赤に染まった。
真っ赤になったアメリアを見て、ヴァルクもまたゴホンと咳払いをして目を逸らす。
すっかり優しい男に変身した彼にどんな反応をしていいか迷い、誤魔化すように口を開いた。
「なんだか、暑くなって来ました。なにか冷たいもの食べたいですね。」
「ああ、それなら向こうにジェラートが売っている。有名店らしいから美味しいんじゃないか?」
たしかにそこは有名なジェラート店でカリナもアメリアと共に食べに行ったことのある店だった。彼がジェラートを食べる姿はなんだか想像するとくすりと笑ってしまうが、そんな若い子が好きそうな店を知っていることに驚いた。
ふたりは並んで歩き、色とりどりのジェラートを選んだ。
アメリアは苺のピンクを、ヴァルクは無難に白いミルクを。
一口食べたヴァルクが眉を動かし、ぽつりと呟く。
「……意外と悪くないな」
その素直すぎる感想に、アメリアは思わず笑みをこぼした。
「本当とても美味しい!よくこんなお店知ってましたね?私が思っていたよりもあなたは女性の趣味を心得ているのかしら?」
少し意地悪な言い方をしてみると、困ったように苦笑する。
「それなら良かったのかもしれないが、残念ながら騎士団の部下たちに聞いたんだ。
気に入ってもらえて良かったよ。」
「…実はずっと気になっていたんですが、あなたから甘い匂いがするんですけど。」
チラリと見ると、思いもよらない指摘を受けたからか、ヴァルクの顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「そ、それは…あっあいつらにかけられたんだ!変な匂いの水を!訓練した後の汗臭いまま行く気かとかなんとか言ってっ」
焦って弁明する彼はとても可愛く感じる。
「くすくすっそうだったんですね。
汗臭いだなんて感じなかったですが、あなたから甘い匂いがするので不思議だなぁと思ってたんです。」
「ったく、あいつら……あとで覚えてろよ。」
照れ隠しなのか、ブツクサと文句を言う彼の隣はとても心地よかった。
やがて通りを抜け、丘の上に出ると、視界が一気に開けた。
傾き始めた陽が街を黄金色に染め、遠くの屋根や川面まで柔らかい光で包み込む。
「わあ……きれい」
ジェラートを手に夕陽を見上げるアメリアの横顔を、ヴァルクはしばらく無言で見つめていた。
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