【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ

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第二章

20話 死

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ただならぬ気配が場に走った瞬間、アメリアは思わずヴァルクの方へと振り返った。
さきほどまで主賓席にいたはずの彼の姿は見えず、周囲を探すと――国王のすぐ隣に控えているのが目に入る。
護衛たちが国王の前で跪き、そのうちの一人がヴァルクへひそかに耳打ちした。

「これは……なにかあったねぇ……」

舞踏会の中心で立ち止まっていたことに気づき、アメリアはフィリップを見上げる。
視線を受けた彼は、少しだけ目を細めた。

「そろそろお開きだろうね。
それと、さっきの話だけど――君が僕を全く見なくなったのは、ストーン伯爵のせいだよ」

「え?」

「彼が伯爵位を賜った頃からかな……君は僕に興味がなくなった。
どうして……か――それは、本当は僕が聞きたいことなのかもしれないね」

フィリップの青い瞳が、まっすぐアメリアを射抜く。
深い海の底に引き込まれるようなその瞳には、どこか痛みが沈んでいるようにも見えた。

「アメリア」

その声とともに、気づけばヴァルクが隣に立っていた。
彼はアメリアの手を取り、フィリップに穏やかな笑みを向ける。

「ダンスの相手をありがとう。すまないが――そろそろ返してもらおう」

「もちろんだよ、ストーン伯爵。
ふたりを祝福できてよかった。では」

フィリップは丁寧に礼をし、マントを翻して舞踏会場をあとにする。

背中が見えなくなったとき、ヴァルクがアメリアの耳元に低く告げた。

「……アレクサンダーが死んだ。
すぐに現場へ向かいたいが、俺だけ別行動では不自然に思われる。
――一緒に下がってくれ」

「……っ」

耳に届いた言葉にアメリアは息を呑んだ。
一体誰が――。
問いかけかけた口を、両手で覆って止める。

アメリアはヴァルクを見上げ、そっと頷いた。



****



「なにがあった?」

アレクサンダーが幽閉されていた塔へ足を踏み入れると、氷狼騎士団の第一部隊が固い表情で控えていた。
その中心に立っていたのは、ヴァルクの腹心――ライオネル・テリーだ。

「申し訳ございません。いつもどおり食事を提供したあと、突然苦しみ出し……一瞬のことで、医者も間に合いませんでした」

「原因は?」

「食事に、毒が盛られていました」

報告にヴァルクは短く息を吐いた。
ライオネルの近くにいた男――看守らしき者が、青ざめた顔で深く頭を下げる。

「誰が食事を持ってきたんだ?」

「王宮の侍女です……。
アレクサンダー殿下は一応、ユーラシアの王子という扱いでしたので、食事は王宮で用意されていました。
いつも同じ侍女で……まさか毒が……申し訳ございません」

アメリアがその先を見る前に、ヴァルクが彼女の腕を強く掴んだ。

「持ってきた侍女に事情を聞け。ただし……関係ない可能性が高い。参考程度にしておけ。
ライオネル、アメリアを部屋へ送ってから、すぐ戻る」

「承知しました」

ヴァルクに引かれるまま、アメリアは塔を後にした。

「どうしてですか? 気になるのですが」

「死体を見ることになる」

その冷ややかな一言にアメリアはたじろいだ。
そのまま自室へと連れ帰られる。

部屋に戻ると、ヴァルクはローラたち侍女を一度下がらせた。

「これから状況を確認するが……おそらく犯人は捕まらない。
城にいる間も、くれぐれも一人にならないように」

「わかりました。
……何かわかったら、私にも必ず教えてください!」

「……わかった」

どこか不服そうなヴァルクの裾を、アメリアはぎゅっと掴んだ。

「絶対ですよ!」

「……ああ」

踵を返そうとしたヴァルクは、ふいにアメリアの前で立ち止まる。

「ひとつだけ」

「はい?」

ヴァルクはアメリアの顎をそっと指で持ち上げた。
一瞬だけ目が合った――そう思った瞬間、唇が塞がれた。

最初の触れ方は驚くほど優しかったのに、次の瞬間には噛みつくような熱が宿る。
腰を掴む大きな手の力が強く、身体が浮きそうになり、思わずヴァルクの二の腕を掴んだ。

口付けはさらに深く激しくなり、生温い舌が拒む間もなく口内へ入り込んでくる。

息が上がり始めた頃、ようやくヴァルクはアメリアを解放した。

「……やはり、ダンスは禁止にしよう」

「な……なにそれぇ……」

「嫉妬で、狂いそうになる」

その声は熱を帯び、アメリアの胸が大きく脈打った。
怒ったように膨れっ面になるアメリアに、ヴァルクは軽く口付けを落とし、優しく髪を撫でた。

「祝宴もお開きになっているはずだ。
今日はもう、ゆっくり休みなさい」

まるで幼い子をあやすような声音だった。

――アメリアはヴァルクにとって、深い愛と強い庇護の想いが重なる、唯一の存在なのかもしれない。

さきほどの激しい口付けに心は揺さぶられているのに、奇妙なほど冷静にヴァルクをみる自分がいた。
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