【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ

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第二章

37話 灰となった真実

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「ヴァルク!!」

アメリアが壁に開けられた小さな穴へ近寄ると、その向こうからヴァルクの安堵した声が聞こえた。

「無事か? ここを壊す。離れてくれ」

「わかったわ! テティ、早く!」

アメリアはテティの手を引き、壁とは反対側へ寄った。
揺れとともに、穴がどんどん広がっていく様子を見守る。

やがて、人が通れるほどの穴が開き、ヴァルクがその中から姿を現した。

「大丈夫か?」

「ヴァルク!」

駆け寄ると、ヴァルクに強く抱きしめられ、その腕の力に思わず息を呑んだ。

「まったく……どうしていつも、こっちの心臓を止めるような真似をするんだ……」

「ご、ごめんなさい……」

「早く脱出するぞ」

「ええ。テティ、行きましょう!」

「嫌です!」

テティは逆側の壁に背を押し当て、激しく首を振った。

「もう、生きていても仕方ないじゃないですか!
どうせ私は罰される……放っておいてください!」

「な、何を言って……」

説得しなければと思った、その時だった。
穴の外から騒がしさが増す。

次の瞬間、誰かがアメリアの横をすり抜け、テティの前へと進み出た。

「死ぬなんて……絶対に許さないから!」

「ま、マリア様……」

「……誰がなんと言おうと、あなたは私の友人なの!!
あなたが私を……そう思っていなくても……私は、私は……!」

「やめてっ!!!」

「わたしたちが友達だったのは……」

「……子どもだったから……それだけよ……」

マリアとテティが互いに掴み合う様子を、アメリアは呆然と見つめていた。

その間に、ヴァルクが大きくため息をつき、ズカズカと二人の間へ割って入る。

驚いて見上げた次の瞬間――
ヴァルクは一切の迷いもなく、テティの首元へ手刀を落とした。

一瞬で力を失ったテティの身体を支えると、そのまま躊躇なく肩に担ぎ上げる。

「「え……」」

呆然と立ち尽くすマリアとアメリアを、ヴァルクは鋭く睨みつけた。

「さっさと出ろ。この状況で何をしている」

「は、はい! マリア、行きましょう!!」

「えっ、ええ!」

慌てて二人が外へ出ると、その後をヴァルクが続いた。

外では、待ち構えていた騎士団や消防団員たちが、消火活動のため次々と中へ入っていく。
煙を避けながら歩いていると、シンシアがこちらに手を振った。

「大丈夫か、アメリア! 本当に無茶するんだから」

「ご、ごめんなさい。心配かけちゃって……」

どさり、とヴァルクが躊躇なくテティを地面に下ろすと、マリアが慌てて駆け寄った。

「気絶しているだけだ。一刻もすれば目を覚ます」

「……はい、ありがとうございます」

その場に座り込んだマリアは、テティの頬にそっと手を伸ばす。
その仕草には、変わらぬ優しさと愛情が滲んでいた。

「あれ? 助かったんだね」

軽薄な声とともに現れた男を、アメリアは鋭く睨みつけた。
頬は赤く腫れているが、怒りは鎮まらなかった。

フィリップは、やれやれと言いたげに肩をすくめる。

「あのさ、本当に僕は関係ないから。
叔母のことも、この侍女のことも……僕が強制したわけじゃない。
全部、勝手にやったことだろ?」

「あなたには、人の心がないの?
こんなにもあなたを想っている人がいるのに、あなたが少しでも心を寄せていれば……こんなことにはならなかった!」

「人の心?」

フィリップは鼻で笑った。

「じゃあ、こいつらにあるのか?
みんな、僕の見た目が好きなだけだろ」

青い瞳が、氷のように冷たく光る。
その言葉が本心であることが、痛いほど伝わってきた。

「ストーン伯爵、僕は戻る。
後のことは君に任せるよ」

「……承知しました」

(なんでヴァルクに命令するのよ……)

アメリアが内心で毒づく一方、ヴァルクは特に気にした様子もなく、火の手が広がらぬよう的確に指示を出していった。

こうして別館の一部は焼け落ち、火が完全に鎮まるまで、アメリアたちは夜通しその場を見守った。

夜が明け、すべてが落ち着いた頃――
火元となった部屋は、跡形もなく焼き尽くされていた。

その部屋は、スーザン・モリス男爵夫人が温室で育てた植物を加工し、薬物へと変えるために使用していたものと思われる。
しかし、テティが火をつけたことで、その秘密は灰となった。

彼女を罰するための証拠として残ったのは、温室の植物とモリス公爵自身、そして彼の部屋で焚かれていた麻薬のお香だけだった。

スーザン・モリスの身柄は一度王都へ移されたものの、夫である男爵とフィリップの計らいにより、
温室の植物すべてを押収すること、そして男爵が彼女の身柄と行動に責任を持つことを条件に、公爵領へ戻ることが許された。

一方、テティはすべてを自白した。

スーザンが男爵邸へ戻ってきた際に、彼女との距離を縮めたこと。
フィリップの母代わりが薬物に長けた人間だと知り、彼女から多くの薬草を譲り受けたこと。
マリアの印章を使って書簡を偽造し、山の民へ依頼を行ったこと。
さらに、自分に気を寄せていた下級貴族を利用し、アレクサンダーとの橋渡しをさせたこと。
その貴族を殺し、その毒で再びアレクサンダーを殺害したこと。

そのすべては、フィリップの心を得たい一心からだった。

彼女の行いには間接的に男爵夫人が関与していたものの、
犯行はすべてテティ個人によるものと断定された。

そして彼女は裁判にかけられ、刑が言い渡された。
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