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22話:王太子殿下

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学園の正門から中に入り渡り廊下を通り、階段を登った先が六学年が使う教室のようだった。

「クラスは成績順にAクラスからFクラスなね別れていてね、基本的にAクラスは殆ど顔ぶれが変わらないんだよ。在校生には既に最後の試験結果で次学年のクラスも本人に伝えられているから、新しい教室に案内したんだ」
「そうなんですね」

だからこの間まで使ってた五学年の教室じゃなく六学年の教室なのね~。

ガラッと扉を開けて中に入れば思ったよりも教室内は広くない。日本人だった記憶の中の学校よりも少し広いぐらいかしら?

「思ったよりも広くはないんですね」
「まぁ勉強さえ出来れば問題ないからね。ご令嬢が制服じゃなくてドレス着用だったら広くないと無理だっただろうけどね」

た、確かに......。制服にしたのはそれもあっての事かもしれないわね!

「お兄様は今まではどの場所の席だったんですか?」
「僕は右端の一番後ろの席だよ、一番先生から目立たない席だから有り難かったよ」
「まぁ!お兄様ったら」

実際試験の成績表で常に上位にいるお兄様なら席の場所等関係無いのだろう。

「やぁ、楽しそうな声が外まで聞こえてきたよ」

唐突に私とお兄様以外の声が会話に加わり私が慌てて声のした方へと振り返ると、そこにはお兄様ぐらいの金髪の少年が立っていた。

「王太子殿下......何故ここにいらっしゃるのですか?」

お兄様の声がさっきまでよりワントーン低くなった気がする......。もしかして怒ってるのかしら?いや、それよりも今、お兄様大変な事言わなかった?王太子殿下って言ったわよね!?

「アルスが今日学園に妹君を案内するって話を聞いてね。せっかくだから私も参加させて貰おうと思ってね」

ニッコリとお兄様に笑みを向け、次に私に視線を向けた。

「君がアルスの妹のルナ嬢だね?噂通りだね」

う、噂?私のどんな噂が流れてるんですかー!?
思わずお兄様の後ろに隠れてしまう私をお兄様が庇ってくれる。

「殿下、妹は大変な人見知りな為、同行はお断りします」

王太子殿下相手にも一切引かないお兄様が今までで一番頼もしく見える。

「どうしても駄目かい?アルス」
「駄目です。余り無理を言うなら僕は殿下の側近候補を今すぐ辞退しますよ?」

お、お兄様が王太子殿下の側近候補!でもよく考えたらそうよね。公爵家の嫡男で成績優秀、見目も良くて性格も良い!お兄様が側近にならなくて他の誰がなると言うのよ!!

アルスの背後で目を爛々と輝かせるルナに二人は気がつかない。

「......ふぅ、それは困るな。仕方ない、今日のところは素直に帰るとするよ」
「懸命な判断ですね」

潔く諦めた王太子殿下にお兄様はニッコリと笑みを返す。

「じゃあまた新学期にね、アルス。ルナ嬢も学園入学おめでとう」
「あ.....アリガトウゴザイマス......」
「ふふっ」

小さな声で返したお礼の言葉を殿下はちゃんと聞こえたようで笑顔を浮かべて去っていった。



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