【完結】モブの筈の僕がヒロインになった訳

水月

文字の大きさ
21 / 60
第一章

21:約束

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうのはテンプレで、薔薇の庭園でのお茶会も時間が来れば終了してしまう。

「カーディナル様」

執事の人がカーディナル様に声を掛けて来たのが合図となって立ち上がり僕をエスコートしてくれて椅子から降りる。

「もうそんな時間になっていたとは気が付かなかった。楽しい時間は早く過ぎてしまうものだな」
「ぼ、僕も同じことを思いました!」

手を繋いで屋敷に向かって歩きながらカーディナル様とお話をする。でも目の前に見えている屋敷までの距離が余りにも近くて、もう帰らないといけないのだと思うと自然と気落ちしてしまう。

段々と声が小さくなっていく僕にカーディナル様はふふふと小さく笑った。

「......?」

そんなカーディナル様を不思議に思って繋いだ手のひらの先にある顔を見上げると優しげに僕を見つめるカーディナル様のお顔があった。

そして僕は気が付く。

そうか、僕はカーディナル様が好きなんだ.....

お父様がお母様を好きなように、ずっと一緒に居たい....そんな意味で好きなのだと。だから逢いたくなったり、帰らないといけないのが淋しくなったりするんだと。

前世でもそんな経験をした事がなかったから思い付かなかった。

その想いに気がつけばストンと自分の中で納得がいった。でもその想いに気がついてしまったら余計に帰るのが淋しくなった。

.....それに僕にそんな風に想われてもカーディナル様も嬉しくないよね....? 

前世でも今世でもそんな想いを交わした相手がいないから僕にはわからない。

「どうした?ルテウス」
「僕.....僕、カーディナル様が大好きです....また逢えますか?」

じっとカーディナル様に目線を外さずに見ていると自然と涙が溢れてくる。それをカーディナル様が一瞬だけハッと驚いた表情を見せたのを僕は見逃さなかった。カーディナル様を困らせていることはわかったけど好きなんだもん。

「.....ルテウスは素直だな。素直過ぎて逆に心配になるな」
「え?」

カーディナル様が困った表情をしながらも笑みを浮かべて僕を抱っこすると、目線が同じ高さになる。綺麗でまるで吸い込まれそうな紫紺の瞳をじっと見つめているとチュッと温かい何かが唇に軽く触れた。

え?

近すぎる程近くにある紫紺の瞳に僕は一瞬何が起きたのか理解できなかった。

「次にルテウスがこの屋敷に来たら今度は屋敷内を案内しよう....約束だ」

フワリと笑みを浮かべてカーディナル様は僕を見つめてそう告げた。

え?いま....カーディナル様が僕にチュッてした?

キ、キッスした!?

ブワッと一瞬で顔が真っ赤に染まったのが自分でも自覚出来てカーディナル様の顔を間近で見れなくてカーディナル様の肩口に顔を隠すようにしがみついてしまう。そんな僕を見てカーディナル様はふふふと笑う。

「....私もルテウスが好きだよ。ルテウスがもう少し大人に....そうだな....15歳なって、それでも私を好きなら.....その時は私から君の家に申し入れをしよう」
「.....本当に?」

まだ顔をあげられなくてカーディナル様にしがみついたままポツリと呟くと、僕の背中をポンポンとあやすかのように叩いてくれる。

「ああ。私とルテウスとの約束だ」
「....ぼく、ずっとカーディナル様のこと好きだもん....」
「ふふふ。そうか」


それからカーディナル様は帰りの馬車の中で僕に約束通り庭園の薔薇を贈り、屋敷まで送ってくれた。次にまたお屋敷へ遊びに行く約束をしたから今度は淋しくなかった。











あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。