【完結】モブの筈の僕がヒロインになった訳

水月

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第二章

42:罰 (カーディナル視点)

泣き疲れて眠ったルテウスに自分の上着を被せて抱き上げる。こんな場所にいつまでも居させたくなくて早く自分達の屋敷に帰りたかった。

部屋から出ればクライズが顔を青くしながら私に近づいて来る。正直今はこいつらの顔を見ると怒りしか沸いてこないので相手をしたくないが、貴族と言うものはそう言う訳にはいかない。

「カーディナル....ルテウス君は?」
「泣き疲れて気絶するように眠った。私達はもう帰る。後の事は明日にでも聞く....それで構わないか?」

このまま眠ったままだとしても、明日の朝までルテウスの側に居てあげたい。

「ああ、勿論.....本当に済まなかった!」
「.....口だけの謝罪は結構だ。お前達の誠意を行動で見せろ」

それだけ言えば、私の側近をずっとしていたクライズなら理解出来るだろう。

身内だからと、甘い処分は許さない。

私はそれだけ告げて馬車に乗り込み公爵邸を後にした。馬車に揺られながら膝の上に抱き抱えたままのルテウスの寝顔を見れば、痛ましいぐらいの頬の腫れと涙の跡が目元を赤くしている。明日は両方腫れてしまうかも知れないから屋敷に帰ったら冷やしてあげないといけないな、と思う。

「ルテウス....怖かっただろう....ほんの少しでも一人にしてしまった私のミスだ。謝るべきは誰でもない....私だ」

ルテウスの目が覚めたら謝罪をしよう。もし許してくれなくても、許してくれるまでずっと謝ろう。私にとってルテウスは失くせない大事な愛しい人なのだから.....。



翌朝、ルテウスが私の腕の中で目覚めた時、いつもと変わらぬ笑みを浮かべて私におはようと挨拶をしてくれた時にはらしくもなく涙が出そうになった程だ。ルテウスを守れなかった私を許してくれる愛情の深さに、ますますルテウスを愛しく思ってしまう。

ルテウスの目と頬は昨夜眠っている時に少し冷やしていたのが良かったのか、そこまで腫れる事なく済んでいる。そんなルテウスを置いて昨夜の件で城に行かなければならないのが悔しい。だが、処罰を見届けなければ私自身が後々納得出来ないし、ルテウスにも報告をしなければならないと思い城へと向かった。


時間をかけずに王城へと着いた私は謁見の間ではなく、客間へと向かう。国王へと非公式の場で会う時に使われる部屋で、中に入れば既に国王夫妻と宰相、そしてクライズが居た。

「遅くなりました」

時間通りだが私が最後だったので一応建前として告げ、空いている席へと座る。

「いや、問題ない」

国王陛下が私を見て首を横に振る。見れば隣に座っている王妃陛下は憔悴しきっているような顔色だった。まぁ自分達の息子が友人の息子であり、私の妻を強姦しようとしたのだから当然か。

「....王弟殿下、此度は私の息子がとんでもない事を引き起こし大変申し訳ありません」

見れば宰相も顔色が悪い。恐らく朝まで国王陛下達と処罰を検討していたのだろうな。流石に宰相も自分の息子がまさかこんな事を仕出かすとは思っても見なかっただろう。

「言葉だけの謝罪はいらないとクライズにも言った筈だ」

それだけでは当然許せる筈もないし、今回の件は私の怒りを抜きにしても犯罪行為なのだ。例え王族だろうが公爵家だろうが罪は問われなければならない。

「勿論です。ダリア公爵家総意として、エアデールは廃嫡の上、北の砦へ平民兵として送ります」

北の砦。

隣国との境界にある魔獣が大量発生する大きな森があり、一度中に入れば出てこれるのは奇跡と言われており、死の森とも呼ばれている。砦は魔獣との戦いで常に人手不足もあり死ぬ者も多いと聞く。つまりそこに平民として送り出すと言う事はいつ死んでも構わないと同義だ。

「.....そうか。国王陛下、ロティスはどうなりますか?」
「ロティスは廃嫡後、北の塔に生涯幽閉に決まった」
「廃嫡の上、北の塔ですか.....まぁ妥当なところですね」

殺人を犯した訳ではないから極刑には出来ない事はわかっていた。その上で一番重い処罰を2人は提示してきたのだ。

「....ロティスとエアデールは今は城の貴族牢に入れている。逃亡されない為と、他者から害されない為に。数日中にはそれぞれ移送される」
「本人達から理由を聞かれましたか?」

何故こんな事を仕出かしたのか。

「聞いたが.....宰相の息子はロティスの指示だからやった、王族の命令は絶対であり自分は言われた通りにしただけだと反省もなく、ロティスはロティスで話しにもならなかった....5歳の茶会で挨拶をした時から婚約者にすると決めたとか、成人したら妻にする予定を立てていただとか....どれもこれもあやつの妄想なのだ。話をしても無駄だと感じた。このままにしておけば、何度でもルテウス君は狙われるだろう....カーディナル、本当にルテウス君には済まない事をした....」
「カーディナル、本当に本当にごめんなさい」

国王陛下も王妃陛下もいつの間にか涙をながしながら謝罪をする。....まぁ私に謝られても仕方がないのだがな。傷つけられたのはルテウスの心なのだから。

「....はぁ、もう良いでしょう。ちゃんと処罰さえ与えて頂ければ私からはもう何も言う事はありません。だが、今回の事でこれ以上ルテウスが傷つけられないようにだけ配慮をお願いします」

体もだか、心も。

勿論私も出来るだけ沢山甘やかすつもりだ。ルテウスがもう嫌だと言う程に、私からの愛を与え心の傷を癒してやりたい。


最後に私はロティスに会いに貴族牢へと向かい、徹底的にルテウスに対する愛をへし折ってやった。


少し遅くなったが屋敷に戻るとルテウスが私に抱きついてきた。昨日の今日で私が居なくて心細かったのだろう。私がルテウスを抱き上げてただいまのキスを贈ると、ルテウスも未だに恥ずかしそうにお返しのキスをしてくれた。顔の腫れは朝よりは良くなっているようで、数日もすれば完全に治るだろう。

それまでは学園も休ませるつもりだ。
そしてその間、惜しみ無い愛をルテウスに贈ろう。






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