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二章 王都学院編

12話 地獄

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今、マリアは両手を縄で縛られ、馬車で王城へ運ばれていた、もちろん単なる贈り物と一緒にだ。この話を聞いた時、私はやっと解放されるのだと思っていた。クレイから『解放する』そう言われたからだ。

だが実際は違った。確かに解放はされた。それはクレイから解放されてカール第一王子に渡されただけなのだ。

カールに連れてこられた場所でマリアの希望は絶望に変わった。私の人生はここで終わるのだ。そう思った。


そこはアイエナ王国 王城地下の最奥の場所だ。辺りには全身文字通り傷だらけの女性たちが、檻に入れられていた。ほとんどの者は、精神が崩壊して、目は虚ろになり、触れただけで骨が折れてしまいそうなほどに痩せ細っている。



「どうだ、この素晴らしい壊れた美女コレクションは!美女を希望から絶望に叩き落として壊していくのは気持ちがいいんだ!」


この場所を表す言葉は、一つしか存在しない。


         【地獄】







⬛︎
マリアは自分が連れ去られたのは偶然だと思っていた。いや、偶然なのは間違いない、だがその偶然がマリアにとってはひたすら悪い方向へクレイにとってはひたすら良い方向へとはたらいていたのだ。

10年前、クレイに拉致されたマリアは何故か王城へと連れてこられた。マリアは果ての村から王都に着く頃には涙は枯れて、顔は虚ろになっていた。クレイが何を言っていたのか、何一つ覚えていなかった。だが微かに王城の一室で、クレイと知らない男が何を話していたのかは覚えていた。


「この女は…………必ずなるでしょう。第一王子…………なら…………あげますので、…………として私を上級騎士に…………」
「いいだろう、ただし………と思え」

マリアはこの会話が後の自分がどうなるのかの話だとは想像もしない。



この日からカールによるマリアに対するコレクション拷問が王城地下の最奥で始まった。



女性たちが救出されるまで1か月

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