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一夜目
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綺麗な海だった。
夕暮れの中、リゾートホテルの一室のベランダから見下ろす海は、とても現実では、あり得ないような淡い色彩で、ただ見惚れるだけだった。
浜辺に目をやると、夕日に照らされた淡い色の海で、一人の少女が波打ち際に佇んでいる。
彼女を知っている
なぜか直感的に理解した
肩まで伸びた茶髪が潮風に吹かれ、色の白い首筋が見えている
彼女から目が離せない
景色よりも彼女に意識が集中していく
彼女は泣いている
顔は見えなくても感じた
だけど、自分がなぜここにいるのか、どこから来たのか、何をするのか、なんて考えるまでも無く、ここが夢の中だと分かる。そう皆んな感覚的に理解している…
ああ、これは夢だって
人は目覚めた瞬間に夢の大半を忘れてしまうらしい。なぜだろうか、忘れるくらいなら最初から夢なんて見なければ良いのでは無いか。
そんな事を考えながらも、僕の日常は始まる。
一言で言うなら、代わり映えのない毎日。自宅は郊外にあるマンションで電車で予備校に通う浪人生、それが僕だ。
断っておくと、僕は特段、偏差値の高い大学を目指している訳ではない。ただ大学には一つも受からなかった。
そう、ものの見事に全滅したわけだ。
そんな僕は今日も電車に揺られて予備校に向かう。電車の中で勉強なんてするはずも無く、イヤホンから流れる音楽に身を任せる。邦楽も悪くはないが洋楽の方が好きだ。歌詞は理解できない方がリラックス出来る。
そして向かいに座る彼女をそっと見る
彼女も同じ予備校に通っている。
艶のある長い黒髪を後ろで括り、姿勢正しく座っている。前髪から覗く形の良い眉と長いまつ毛、透き通るような肌に淡い唇…
そんな参考書を開いている姿に思わず、ずっと眺めていたい衝動に駆られるのを我慢する。
一目惚れなんだろうか。
毎日同じ時間、同じ車両に乗っているせいか彼女から意識が離せない。
きっと向こうは僕の事など眼中に無いのだろうけど。
浪人生なのだから色恋より勉強するべきだ
それは当たり前なのだが、電車に乗っている間くらい癒しの時間があってもバチは当たらないだろう。
予備校も終わり、家に帰れば部屋に篭る毎日だ。
ウチの家は共働きである。
両親は遅くまで帰って来ないし、人権のない浪人生に構っていられるほど暇でない。
家に居たとしても無言だ、つまり喋る暇があるなら勉強しろという事なのだろう。最近は目も合わせてくれない。
つくづく浪人生とは肩身が狭い。最低限の勉強を行い、早々にベッドに入る
ベッドに横たわっている瞬間が至福の時だ。いずれ来るであろうキャンパスライフを夢見ながら毎日、浪人生は眠るのだ。
景色が流れる
いつもの電車の窓から見える街並みは雨模様で、はっきりとしない。向かいには彼女が座っている。
車両の中には雨なのに人がいない。
僕と彼女しか見えない。
彼女は俯いている
これは夢なんだろう
なら、彼女に話しかけてみようか
夢だと分かると人は大胆になれるものだ
「ねぇ」
腰を浮かせようとした瞬間、隣から声が聞こえた
思わず隣を見る
ショートボブの女が座っていた
はっきりとした目鼻立ち、気の強そうな綺麗な女性だ
大学生だろうか
服装も今どきで、スカートから色の白い脚が見えている。髪も茶色に染まっており、耳には小さな十字架のピアスが付いている。
「そんなに見つめないでよ」
慌てて視線を正面に戻す。
まさか、隣に人が居たとは全く気が付かなかった。
僕に何か用だろうか、友達にこんな美人はいないはずだ
「ねぇ、何してるの?」
僕に構わず矢継ぎ早に言葉を投げかけてくる
ナンパだろうか
いや、お世辞にも容姿に自信がある訳ではない。
となれば怪しい勧誘かもしれない。
怪訝な顔をしていたと思う。
「まぁいいや、また明日ね」
あっさりと別れの言葉を残すと、別の車両に移ってしまった。
気がつくと向かいにはもう彼女がいない。
車両の中には僕だけだ。
夢の中なのに、あの女性をやけにリアルに感じた
夕暮れの中、リゾートホテルの一室のベランダから見下ろす海は、とても現実では、あり得ないような淡い色彩で、ただ見惚れるだけだった。
浜辺に目をやると、夕日に照らされた淡い色の海で、一人の少女が波打ち際に佇んでいる。
彼女を知っている
なぜか直感的に理解した
肩まで伸びた茶髪が潮風に吹かれ、色の白い首筋が見えている
彼女から目が離せない
景色よりも彼女に意識が集中していく
彼女は泣いている
顔は見えなくても感じた
だけど、自分がなぜここにいるのか、どこから来たのか、何をするのか、なんて考えるまでも無く、ここが夢の中だと分かる。そう皆んな感覚的に理解している…
ああ、これは夢だって
人は目覚めた瞬間に夢の大半を忘れてしまうらしい。なぜだろうか、忘れるくらいなら最初から夢なんて見なければ良いのでは無いか。
そんな事を考えながらも、僕の日常は始まる。
一言で言うなら、代わり映えのない毎日。自宅は郊外にあるマンションで電車で予備校に通う浪人生、それが僕だ。
断っておくと、僕は特段、偏差値の高い大学を目指している訳ではない。ただ大学には一つも受からなかった。
そう、ものの見事に全滅したわけだ。
そんな僕は今日も電車に揺られて予備校に向かう。電車の中で勉強なんてするはずも無く、イヤホンから流れる音楽に身を任せる。邦楽も悪くはないが洋楽の方が好きだ。歌詞は理解できない方がリラックス出来る。
そして向かいに座る彼女をそっと見る
彼女も同じ予備校に通っている。
艶のある長い黒髪を後ろで括り、姿勢正しく座っている。前髪から覗く形の良い眉と長いまつ毛、透き通るような肌に淡い唇…
そんな参考書を開いている姿に思わず、ずっと眺めていたい衝動に駆られるのを我慢する。
一目惚れなんだろうか。
毎日同じ時間、同じ車両に乗っているせいか彼女から意識が離せない。
きっと向こうは僕の事など眼中に無いのだろうけど。
浪人生なのだから色恋より勉強するべきだ
それは当たり前なのだが、電車に乗っている間くらい癒しの時間があってもバチは当たらないだろう。
予備校も終わり、家に帰れば部屋に篭る毎日だ。
ウチの家は共働きである。
両親は遅くまで帰って来ないし、人権のない浪人生に構っていられるほど暇でない。
家に居たとしても無言だ、つまり喋る暇があるなら勉強しろという事なのだろう。最近は目も合わせてくれない。
つくづく浪人生とは肩身が狭い。最低限の勉強を行い、早々にベッドに入る
ベッドに横たわっている瞬間が至福の時だ。いずれ来るであろうキャンパスライフを夢見ながら毎日、浪人生は眠るのだ。
景色が流れる
いつもの電車の窓から見える街並みは雨模様で、はっきりとしない。向かいには彼女が座っている。
車両の中には雨なのに人がいない。
僕と彼女しか見えない。
彼女は俯いている
これは夢なんだろう
なら、彼女に話しかけてみようか
夢だと分かると人は大胆になれるものだ
「ねぇ」
腰を浮かせようとした瞬間、隣から声が聞こえた
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大学生だろうか
服装も今どきで、スカートから色の白い脚が見えている。髪も茶色に染まっており、耳には小さな十字架のピアスが付いている。
「そんなに見つめないでよ」
慌てて視線を正面に戻す。
まさか、隣に人が居たとは全く気が付かなかった。
僕に何か用だろうか、友達にこんな美人はいないはずだ
「ねぇ、何してるの?」
僕に構わず矢継ぎ早に言葉を投げかけてくる
ナンパだろうか
いや、お世辞にも容姿に自信がある訳ではない。
となれば怪しい勧誘かもしれない。
怪訝な顔をしていたと思う。
「まぁいいや、また明日ね」
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