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第九章 束の間の休息(海賊の末裔の地キエラにおいて)
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「今、バートリエの話をしていたところだ。おまえのところの技術者に、砲撃の振動で城壁が落ちるように坑道を設計させたが、あちらに行ったら、どの地点にどれだけ打ち込めばよいのか、おまえ自らがもう一度確認してくれ。手間取ってみせるわけにはいかんからな」
「畏まりました」
殿下は再びソランへと目を向けた。
「城壁を壊し、降伏してくるならよし、そうでなければ、町も大砲で破壊する。生き残って投降すれば受け入れるが、でなければ町と運命を共にしてもらうまでだな」
「少々よろしいでしょうか」
ジェナスが手を挙げ、口を挿んだ。
「なんだ」
「その場合、あの砲弾だけでは、かなりの数を打ち込まねばなりません。一日がかりでも無理かと思われますが」
「かまわん」
「ですが、炸裂弾を混ぜて使えば、効率が上がります」
「効率の問題ではない。今回、あれは使わぬ。それに変わりはない」
殿下は最後の言葉を強く言った。
「差し出口をいたしました」
ジェナスは目を伏せ、すぐに意見を控えた。
「いや。新技術の知見はおまえに頼る他はない。忌憚なく意見を述べてくれてかまわない。それから、使わないからといって、それらをおろそかに思っているのではない。今はまだ必要でないだけだ。それはわかってくれ」
「承知しております。ウィシュミシアの知識は、すべて宝剣の主殿の物。どうお使いになろうと自由にございます。お気遣いは無用でございます」
殿下は頷いた。話が一段落着いたのを見計らって、ソランは気になったことをジェナスに尋ねた。
「炸裂弾とはどういったものなのですか?」
「着弾、弾が目標物に当たることをそう呼んでいるのですが、それと同時に、弾自体が弾け飛ぶように細工したものです。それによって穴を開けるだけでなく、あたりのものを砕くことができます。つまり、破壊範囲が広くなるのです」
弾け飛ぶということは、あの弾を避けただけでは駄目だということだろう。あれが直接当たればもちろん即死だが、あの速度の破片に幾つも襲われたら、幾本もの矢に同時に狙われたのと同じなのではなかろうか。いいや、威力を考えたら、鎧も役に立たないだろう。効果は段違いに違いない。
「とても殺傷能力の高い物に思われるのですが」
「はい。着弾物にもよりますが、半径三メートル以内ならほぼ確実に戦闘能力を奪えます」
直径で六メートルならば、かなりの広範囲だ。密集陣形にそんなものを打ち込まれたら、あっという間に建て直しできないほどに瓦解してしまうだろう。馬や人では、最早太刀打ちできない。今までの常識が、何一つとして通用しなくなる。ソランは蒼褪めた。
「今回は人を殺すのが目的ではない。だから、使わぬ」
固い意志を感じさせる声で殿下が言った。
我らの目的は人殺しではないのだと。たとえ手段としてそれが必要だとしても。善悪の基準さえその手に握り、どれほどの強大な力を手にしたとしても、それに惑わされることはないと。
――この方には、切り拓き、築かねばならない未来の姿がはっきりと見えておられるのだ。
ソランは安心して体中に、いや、心にも温かい血が巡るのを感じた。
「なるべく派手に脅してやるのですね」
「そうだ。それで降伏を促す」
「降伏したら、どうなさるおつもりなのですか?」
「相手を見てから決める。信頼できそうなら食料を持たせて帰すが、そうでないなら頭を挿げ替える。イドリックはあちらに帰れば王族の血縁者らしいからな。あれに任す」
殿下は一つ大きく息を吐き、苦笑した。
「以上がおおまかな流れだが。まあ、実際はどんなに備えておいても色々と出てくるものだ。その時はおまえたちが頼りだ」
殿下は全員を見まわした。ジェナスの副官のエルンストまでも平等に。
「頼むぞ」
開け放しの信頼を示す。類稀なる、この人が。自然と心が引き寄せられ、どんな人間もそれに応えずにはいられるなくなる。
「はっ」
その場にいた誰もが、短く鋭い承諾の意を即座に示したのだった。
「畏まりました」
殿下は再びソランへと目を向けた。
「城壁を壊し、降伏してくるならよし、そうでなければ、町も大砲で破壊する。生き残って投降すれば受け入れるが、でなければ町と運命を共にしてもらうまでだな」
「少々よろしいでしょうか」
ジェナスが手を挙げ、口を挿んだ。
「なんだ」
「その場合、あの砲弾だけでは、かなりの数を打ち込まねばなりません。一日がかりでも無理かと思われますが」
「かまわん」
「ですが、炸裂弾を混ぜて使えば、効率が上がります」
「効率の問題ではない。今回、あれは使わぬ。それに変わりはない」
殿下は最後の言葉を強く言った。
「差し出口をいたしました」
ジェナスは目を伏せ、すぐに意見を控えた。
「いや。新技術の知見はおまえに頼る他はない。忌憚なく意見を述べてくれてかまわない。それから、使わないからといって、それらをおろそかに思っているのではない。今はまだ必要でないだけだ。それはわかってくれ」
「承知しております。ウィシュミシアの知識は、すべて宝剣の主殿の物。どうお使いになろうと自由にございます。お気遣いは無用でございます」
殿下は頷いた。話が一段落着いたのを見計らって、ソランは気になったことをジェナスに尋ねた。
「炸裂弾とはどういったものなのですか?」
「着弾、弾が目標物に当たることをそう呼んでいるのですが、それと同時に、弾自体が弾け飛ぶように細工したものです。それによって穴を開けるだけでなく、あたりのものを砕くことができます。つまり、破壊範囲が広くなるのです」
弾け飛ぶということは、あの弾を避けただけでは駄目だということだろう。あれが直接当たればもちろん即死だが、あの速度の破片に幾つも襲われたら、幾本もの矢に同時に狙われたのと同じなのではなかろうか。いいや、威力を考えたら、鎧も役に立たないだろう。効果は段違いに違いない。
「とても殺傷能力の高い物に思われるのですが」
「はい。着弾物にもよりますが、半径三メートル以内ならほぼ確実に戦闘能力を奪えます」
直径で六メートルならば、かなりの広範囲だ。密集陣形にそんなものを打ち込まれたら、あっという間に建て直しできないほどに瓦解してしまうだろう。馬や人では、最早太刀打ちできない。今までの常識が、何一つとして通用しなくなる。ソランは蒼褪めた。
「今回は人を殺すのが目的ではない。だから、使わぬ」
固い意志を感じさせる声で殿下が言った。
我らの目的は人殺しではないのだと。たとえ手段としてそれが必要だとしても。善悪の基準さえその手に握り、どれほどの強大な力を手にしたとしても、それに惑わされることはないと。
――この方には、切り拓き、築かねばならない未来の姿がはっきりと見えておられるのだ。
ソランは安心して体中に、いや、心にも温かい血が巡るのを感じた。
「なるべく派手に脅してやるのですね」
「そうだ。それで降伏を促す」
「降伏したら、どうなさるおつもりなのですか?」
「相手を見てから決める。信頼できそうなら食料を持たせて帰すが、そうでないなら頭を挿げ替える。イドリックはあちらに帰れば王族の血縁者らしいからな。あれに任す」
殿下は一つ大きく息を吐き、苦笑した。
「以上がおおまかな流れだが。まあ、実際はどんなに備えておいても色々と出てくるものだ。その時はおまえたちが頼りだ」
殿下は全員を見まわした。ジェナスの副官のエルンストまでも平等に。
「頼むぞ」
開け放しの信頼を示す。類稀なる、この人が。自然と心が引き寄せられ、どんな人間もそれに応えずにはいられるなくなる。
「はっ」
その場にいた誰もが、短く鋭い承諾の意を即座に示したのだった。
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