しかたなく英雄的最後を迎えた魔法使いの受難

伊簑木サイ

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第7話

味方1

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 師匠の弟子は、ロズニス、ルシアン、俺の三人になった。毎日師匠の研究室で、三人で研究と研鑽にいそしむ日々が始まった。

 ただし、帰ってきてからも何やら師匠は忙しいらしく、ほとんど研究室にいない。
 用事の合間に時々ここに顔を出しては、『くれぐれも危ないことはしないように。ブラッド様、頼みましたぞ』と、特に俺に注意しているのか、俺に他の二人を押し付けているのか判断つかないことを、毎回判を押したように言い置いていく。
 まあ、気持ちはわかる。確かに俺は問題児かもしれないが、密かな厄介さは、二人の方が上回っているからだ。
 なんていうのか、二人ともフリーダムだよな、いろいろと。俺には真似できないって、本気で思うもん。

 そんなわけで、今日も三人で同じテーブルにつきつつ、それぞれに興味の赴くまま、別の課題に取り組んでいた。
 俺は連絡玉の改良。ていうか、魔力の圧縮技術の開発。思いつくままに、見開きのノートにアイディアを書き殴っていた。
 すると、

「ブラッド、ちょっと土の魔力ちょうだい」

 ルシアンに話しかけられる。俺はペンを置いて、そちらに向き直った。上の空で返事してると、危険なことになりかねないからだ。

「いいけど、今度はなんだ」
「これと同じものを生成したいんだけど、精査できるほど魔力が練れなくて。精度がいるものは、やっぱり魔力にムラがあると、うまくいかないね」

 ルシアンは掌の中にあるものを見せてくれた。アダマスの原石だ。今のところ、地上で最も硬い物質だ。
 また、いきなり難しいところから始めてんな。

「生成じゃなくて、変化からやったらどうだ。そうしているうちに、物質の特徴が掴めるから。対象物を理解できてなきゃ、生成は無理だぞ」
「うん。だから、理解するのに、精査したいの」

 言っていることは、正しい。
 ルシアンは系統こそ違うが、俺以上の魔法の使い手だ。なにしろ、前世で王都を覆うほど巨大な魔法陣を、大地に焼き付けることができたのだ。
 その魔法使いが、冷静に必要なことを俺に要求している。
 切っ掛けさえあれば、手順や段階を経ないで高みに一気に到達できるだけの才能が、ルシアンにはあるのだろう。
 そう。俺の体を創造したように。
 それを不意に思い出し、俺は苦笑した。人体が創造できて、鉱物を生成できないわけがない。

「わかった」

 テーブルの上で右手を差し伸べる。そこへ、左の掌を合わせるようにしてルシアンが重ね、お互いに指を絡めて握り合った。
 俺は目をつぶり、意識を集中して、ムラのない調子を揃えた魔力を送る。
 しばらくそうしていると、ふ、とルシアンの手から力が抜けた。次の瞬間、美しく調えられた魔力が流れるのを感じて、俺は手を離した。

 目を開け、見守る先で、さっきまで繋いでいた掌に、小さな粒が現れ出でる。
 アダマスなのだろう。原石ゆえに鈍く濁って見えるそれが、徐々に大きくなっていく。やがて、一握り分もある大きさになったところで、ゴン、と音をたててテーブルの上に落ちて転がった。
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