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第7話
保護障壁
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俺はまず、あたりをしっかり視認するために、体を起こした。
そして、最小限の魔力ですむように保護障壁の形を変えた。俺たちのまわりぎりぎりに半円状のものを張り、あとは地面の上を平面的にゆっくり広げていく。
障壁は当たったものが魔力だった場合は即座に吸収するが、物質の場合は手当たり次第に弾き飛ばす。そして、それでも退かない場合、対象物を分解し、障壁を構成する魔力に変換してしまう特徴を持つ。
つまり、人間に当たれば弾き飛ばすはずなんだが、その衝撃で気を失って倒れたり動けなくなったところに無理矢理押し進めると、人間さえも分解吸収してしまう恐れがあるのだ。
それをさけるために、人のいない地中で鋼の柱を始末することにした。
まあ、本当に地中だと地面をごりごり削って、よけいに魔力を消費するから、地面の上すれすれの設定だ。もしもの時も、これなら靴底を削るくらいだ。そのくらいは大目に見てもらうしかない。
目の端で、男がもぞりと動いた。立ち上がったりすると障壁に当たる。注意をしようかと思ったが、勝手にぴたりと止まった。息を呑む気配。掠れた悲鳴に近い声があがった。
「王子、これはっ」
「じっとしてろ」
障壁内は静かだ。外と空気が繋がっていないために振動が伝わらず、したがって外の音も聞こえない。
だから、男は俺が上から退いて動けるようになるまで、何が起こっているのか気付かなかったのだろう。
障壁の外では、次々と鋼の柱がこちらに倒れこんできていた。
木を切り倒すのと同じ理屈だ。先に大きく抉った方向へ倒れるように、魔法から遮断され、それ以上成長できなくなった柱は、支えのなくなった方へと倒れる。
下敷きになったら間違いなく死ぬとしか思えないものが、頭上数十センチくらいのところまで、四方八方から次から次へと倒れ掛かってくるのだ。
保護障壁に当たって分解吸収されるとわかっていても、俺だって怖い。その際に発する稲光も不穏さを煽る効果満点で、さらに恐怖がつのる。
吸収した分、少し楽になるが、消費量にはとても追いつく量ではない。苦しいことに違いはなかった。
いったい、どこまでどうなっているのか。
柱のせいで、外の様子がわからないのがもどかしい。
未だ発動が続いているらしいのをみると、ロズニスは興奮状態で暴走しているのかもしれなかった。それが最も気掛かりだ。暴走の末に自滅した魔法使いは、過去に何人もいる。
ロズニスを失うなんて、考えたくもなかった。
彼女の面影が脳裏に浮かぶたびに焦燥感に心臓が炙られ、気持ちが上擦りそうになる。
俺はそれを、ルシアン、と心の中で呼びかけては、静めた。
俺は一人じゃない。あいつがこの外にいる。事態を収拾しようと、手を尽くしてくれている。だから、俺は俺のできることをする。絶対に、この場を、持ちこたえてみせる。
ああ、でも、くそ、体に力が入らない。
俺は体が力を失うのにまかせて、崩れ落ちた。体を支える体力さえ惜しかった。
ところが、地に打ちつけるかと思った体は、途中で抱きとめられた。
「王子!?」
「気が散る。黙ってろ」
支えられたおかげで、視界が確保されたのはありがたかったが、礼を言う余力はなかった。言葉少なに必要事項だけを伝え、朦朧として霞む目をこらし、ロズニスとルシアンがいたはずの方向を注視する。
どこだ。
「ロズニス。ルシアン」
思わず二人を呼んだその時、柱の列に切れ間ができたのが見えた。
ようやくロズニスの魔法は止まったらしかった。
切れ間はすぐに広がり、すべての柱が倒れ落ちる。
そして、その先には。
後ろからロズニスを抱き締めるルシアンがいて、俺は安堵と同時に胸に走った強い痛みに、目をつぶった。
そして、最小限の魔力ですむように保護障壁の形を変えた。俺たちのまわりぎりぎりに半円状のものを張り、あとは地面の上を平面的にゆっくり広げていく。
障壁は当たったものが魔力だった場合は即座に吸収するが、物質の場合は手当たり次第に弾き飛ばす。そして、それでも退かない場合、対象物を分解し、障壁を構成する魔力に変換してしまう特徴を持つ。
つまり、人間に当たれば弾き飛ばすはずなんだが、その衝撃で気を失って倒れたり動けなくなったところに無理矢理押し進めると、人間さえも分解吸収してしまう恐れがあるのだ。
それをさけるために、人のいない地中で鋼の柱を始末することにした。
まあ、本当に地中だと地面をごりごり削って、よけいに魔力を消費するから、地面の上すれすれの設定だ。もしもの時も、これなら靴底を削るくらいだ。そのくらいは大目に見てもらうしかない。
目の端で、男がもぞりと動いた。立ち上がったりすると障壁に当たる。注意をしようかと思ったが、勝手にぴたりと止まった。息を呑む気配。掠れた悲鳴に近い声があがった。
「王子、これはっ」
「じっとしてろ」
障壁内は静かだ。外と空気が繋がっていないために振動が伝わらず、したがって外の音も聞こえない。
だから、男は俺が上から退いて動けるようになるまで、何が起こっているのか気付かなかったのだろう。
障壁の外では、次々と鋼の柱がこちらに倒れこんできていた。
木を切り倒すのと同じ理屈だ。先に大きく抉った方向へ倒れるように、魔法から遮断され、それ以上成長できなくなった柱は、支えのなくなった方へと倒れる。
下敷きになったら間違いなく死ぬとしか思えないものが、頭上数十センチくらいのところまで、四方八方から次から次へと倒れ掛かってくるのだ。
保護障壁に当たって分解吸収されるとわかっていても、俺だって怖い。その際に発する稲光も不穏さを煽る効果満点で、さらに恐怖がつのる。
吸収した分、少し楽になるが、消費量にはとても追いつく量ではない。苦しいことに違いはなかった。
いったい、どこまでどうなっているのか。
柱のせいで、外の様子がわからないのがもどかしい。
未だ発動が続いているらしいのをみると、ロズニスは興奮状態で暴走しているのかもしれなかった。それが最も気掛かりだ。暴走の末に自滅した魔法使いは、過去に何人もいる。
ロズニスを失うなんて、考えたくもなかった。
彼女の面影が脳裏に浮かぶたびに焦燥感に心臓が炙られ、気持ちが上擦りそうになる。
俺はそれを、ルシアン、と心の中で呼びかけては、静めた。
俺は一人じゃない。あいつがこの外にいる。事態を収拾しようと、手を尽くしてくれている。だから、俺は俺のできることをする。絶対に、この場を、持ちこたえてみせる。
ああ、でも、くそ、体に力が入らない。
俺は体が力を失うのにまかせて、崩れ落ちた。体を支える体力さえ惜しかった。
ところが、地に打ちつけるかと思った体は、途中で抱きとめられた。
「王子!?」
「気が散る。黙ってろ」
支えられたおかげで、視界が確保されたのはありがたかったが、礼を言う余力はなかった。言葉少なに必要事項だけを伝え、朦朧として霞む目をこらし、ロズニスとルシアンがいたはずの方向を注視する。
どこだ。
「ロズニス。ルシアン」
思わず二人を呼んだその時、柱の列に切れ間ができたのが見えた。
ようやくロズニスの魔法は止まったらしかった。
切れ間はすぐに広がり、すべての柱が倒れ落ちる。
そして、その先には。
後ろからロズニスを抱き締めるルシアンがいて、俺は安堵と同時に胸に走った強い痛みに、目をつぶった。
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