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4-マキナ・ロジカル
33.少女、過敏になる。
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不思議な女性だった。後ろで優雅に結い上げたスミレ色の髪。長いまつ毛にふちどられた紫の目。なめらかな白い肌は陶器のようでどこか人間離れした雰囲気を醸し出して居る。年はニチカたちより二つ三つ上くらいだろうか。
「バイオレット……」
顔を曇らせたマキナだったが、その脇を通り過ぎざまに手早く命令を出した。
「この子は大切なお客様だから丁重に持てなすように。身体が冷えてるみたいだからお風呂と、あと着替えも用意してあげて」
「かしこまりました」
「それじゃニチカ。また後でね」
逃げるようにその場を後にしたマキナは、すぐに屋敷へと消えて行った。残されたニチカは恐る恐る横を見る。芯棒でも入ってるのではないかと思うほどピシッと立つ女性は、感情のない目でこちらを見ていた。
「あ、あのっ、私ニチカって言います。突然押しかけちゃってすみません」
「いえ、主人の意向ですので」
「主人って――バイオレットさんてマキナくんの奥さんなんですか!?」
「……」
突然の大声にも驚いた様子はなく、彼女はしばらくしてゆっくり首を振った。
「いいえ、わたくしはマキナ様にお使えする一介のメイドでございます。奥方などと恐れ多い」
「あ、なんだ、そうですか、ビックリした」
主従。ウルフィがオズワルドをご主人と呼ぶようなものだと気づいて納得する。これが本物のメイドさん……と感心して見つめていると、バイオレットは唐突にカミングアウトした。
「そもそもわたくしは人間ではありません」
「え」
平然ととんでもない事を言い放ったメイドはおもむろに前をはだけた。豊満なバストに慌てて目をそらそうとするが、胸元に埋まっている鉱石に目を奪われる。うっすらと淡い輝きを放つ紫の宝石はバイオレットの瞳と同じ色をしていた。
「これって……」
「わたくしはこのコアで動くホムンクルスでございます」
「ほむんくるす?」
「魔力で動く人形と思っていただいて差し支えありません」
機械的に説明を終えたメイドは、服を整え直すとニチカを屋敷へと案内した。
「余計な説明でお時間をお取りしました。すぐ湯殿をご用意いたします」
***
「ふぁぁぁ……きもちい」
思わず漏れ出る声が反響する中、ニチカはトプンと湯船に身体を浮かべる。少し熱めの湯に包まれて芯まで冷え切っていた身体がとろけていくようだ。
「やっぱりーお風呂はさいこうだよねぇ、持ち運びできるお風呂とかあればいいのになぁ」
ご機嫌に揺れながら湯をすくっては流れ落ちる感覚を楽しむ。バスタブは西洋の猫足タイプで部屋の真ん中に置かれている。どこで身体を洗ったものかと少し悩んで、栓を抜いた。少しずつ下がっていく水位に撫でられているような感覚になる。
「もったいない気もするけど、外で洗ったらびしゃびしゃになっちゃうもんね」
ザパリと立ち上がり浴槽の中でシャワー栓を開ける。花の香りのするシャンプーを取り頭を丹念に洗い、次にたっぷりと泡立てた石けんを身体に滑らせる。
「んっ……」
途端になぜか全身が粟立つような感覚が走り無意識の内に声を漏らしてしまう。その事にハッと気づいたニチカは、顔を真っ赤にして今度は豪快に爪を立てて洗い出した。
(わーっ!! なんて声だしてるんだ私!! これじゃまるでヘンタイ……)
はたと気づいて動きを止める。桜花国を出てすぐに師匠と交わした会話が蘇ってきた。
***
『解毒方法はなかったが、フェイクラヴァーに関係しそうな記述はあった』
『本当? どんな内容だった?』
先を歩く背中を小走りで追いかけながらニチカは問いかける。自分の代わりに書物を調べてくれたのはどうやら本当だったようだ。そのことに感謝しながら続きを促す。
『桜花国は元々娼婦の寄せ集めと言うのは知ってるか?』
『あっ、由良様に聞いたよ。他の街から逃げてきた女の人たちが最初だったって』
『その逃げ出してきた娼婦の中に、種に寄生された女が居たらしい。媚薬として主人に飲まされた典型例だな』
『それ……どうなったの?』
嫌な予感がしながらも聞くと、師匠はそっけなく憐れな女の結末を語った。
『しばらくは男を取って凌いで居たらしいが、桜花国の基礎が固められた頃に運命だと受け入れて自害したらしい。穏やかな死に顔だったそうだ』
『……治療法、なかったんだ』
うつむいてギュッと手を握る。未だ腹の中に巣食う種は今のところオズワルドの応急処置の甲斐あって大人しくしている。だが解決法が見つからない限り、これから先もずっと内側から喰い破られる恐怖に怯えて生きていかなければならない。その事実が重くのしかかる。
そんな弟子の様子をちらりと見たオズワルドだったが、特に慰めの言葉を吐くでもなく淡々と報告を続けた。
『書物はその女の手記で種の効果についてまとめられていた。まず日に一度異性の体液を摂取しなければ発芽して死ぬ。これは知ってるな?』
『毎日おびえてます』
『安心しろ、毎日 死ぬほど 愛してやるから』
視線だけをこちらに流した師匠は「死ぬほど」の部分だけやけに節をつけて言い放つ。なぜか意味深に聞こえてカァッと熱がこみ上げて来た。
『皮肉っぽく言うなぁ! あと冗談でも死ぬとかやめて! 今そのキーワード敏感だからっ』
『そう、敏感。それが副作用の一つ目』
『え?』
予想外の話の跳び方に瞬く。何がどう敏感になるというのか。
『種の目的は男の体液だ。エサが与えられないと宿主を強制的に発情させる』
『はっ、えっ、なに!?』
聞き間違いかと思ったのに、思いたかったのに、男は懇切丁寧に言い直してくれやがった。
『発情。異性を引き寄せるフェロモンを出して宿主におびき寄せるんだな。当然、搾取しやすいように女側も感じ易く――』
『へ、ヘンタイっ!!』
真っ赤になったニチカは思わず吐き捨てる。すぐさま機嫌を急降下させた声と絶対零度の視線が返って来た。
『……お前な、せっかく貴重な情報をやってるっていうのに』
『あぁぁ嘘ですオズワルド様! 続きをどうぞ!』
『まったく。つまりお前のような色気もクソもねぇガキンチョでも、種が飢餓状態の時は男がホイホイ寄ってくるってことだ。気をつけろよ』
『うん、わかっ……ガキンチョって言うなぁ!』
***
(つまり種のお腹が減り始めてきたってサインなの?)
シャワーを勢いよく流し豪快に泡を落としていく。湯殿から上がったニチカは用意されていたバスローブを羽織り魔導球をポケットに入れる。それからバイオレットを探すため廊下に出て隣の部屋から順番にノックをして開けていく。
幸いにも彼女は二つ隣の部屋に居た。衣料がカゴに積まれているところを見ると洗濯場なのだろうか。
「あぁ居たバイオレットさん。私の服洗っちゃいました?」
「いいえ、これからです。何かお忘れ物でも?」
「ありがとうございます、えっと確かスカートのポケットに……」
衣服を受け取ったニチカは制服のスカートから丸い包み紙を取り出した。川に落ちたときに流されてなかったと安心する。魔導球は死に物狂いで掴んでいたため無事だったが、近々ちゃんとした入れ物を用意した方が良いだろう。
「よろしいですか? フタをしめなければなりませんので」
「あ、すみません。お願いします」
スカートを返したニチカは、バイオレットのそばにあったものに目を丸くした。
「それって、洗濯機ですか?」
「バイオレット……」
顔を曇らせたマキナだったが、その脇を通り過ぎざまに手早く命令を出した。
「この子は大切なお客様だから丁重に持てなすように。身体が冷えてるみたいだからお風呂と、あと着替えも用意してあげて」
「かしこまりました」
「それじゃニチカ。また後でね」
逃げるようにその場を後にしたマキナは、すぐに屋敷へと消えて行った。残されたニチカは恐る恐る横を見る。芯棒でも入ってるのではないかと思うほどピシッと立つ女性は、感情のない目でこちらを見ていた。
「あ、あのっ、私ニチカって言います。突然押しかけちゃってすみません」
「いえ、主人の意向ですので」
「主人って――バイオレットさんてマキナくんの奥さんなんですか!?」
「……」
突然の大声にも驚いた様子はなく、彼女はしばらくしてゆっくり首を振った。
「いいえ、わたくしはマキナ様にお使えする一介のメイドでございます。奥方などと恐れ多い」
「あ、なんだ、そうですか、ビックリした」
主従。ウルフィがオズワルドをご主人と呼ぶようなものだと気づいて納得する。これが本物のメイドさん……と感心して見つめていると、バイオレットは唐突にカミングアウトした。
「そもそもわたくしは人間ではありません」
「え」
平然ととんでもない事を言い放ったメイドはおもむろに前をはだけた。豊満なバストに慌てて目をそらそうとするが、胸元に埋まっている鉱石に目を奪われる。うっすらと淡い輝きを放つ紫の宝石はバイオレットの瞳と同じ色をしていた。
「これって……」
「わたくしはこのコアで動くホムンクルスでございます」
「ほむんくるす?」
「魔力で動く人形と思っていただいて差し支えありません」
機械的に説明を終えたメイドは、服を整え直すとニチカを屋敷へと案内した。
「余計な説明でお時間をお取りしました。すぐ湯殿をご用意いたします」
***
「ふぁぁぁ……きもちい」
思わず漏れ出る声が反響する中、ニチカはトプンと湯船に身体を浮かべる。少し熱めの湯に包まれて芯まで冷え切っていた身体がとろけていくようだ。
「やっぱりーお風呂はさいこうだよねぇ、持ち運びできるお風呂とかあればいいのになぁ」
ご機嫌に揺れながら湯をすくっては流れ落ちる感覚を楽しむ。バスタブは西洋の猫足タイプで部屋の真ん中に置かれている。どこで身体を洗ったものかと少し悩んで、栓を抜いた。少しずつ下がっていく水位に撫でられているような感覚になる。
「もったいない気もするけど、外で洗ったらびしゃびしゃになっちゃうもんね」
ザパリと立ち上がり浴槽の中でシャワー栓を開ける。花の香りのするシャンプーを取り頭を丹念に洗い、次にたっぷりと泡立てた石けんを身体に滑らせる。
「んっ……」
途端になぜか全身が粟立つような感覚が走り無意識の内に声を漏らしてしまう。その事にハッと気づいたニチカは、顔を真っ赤にして今度は豪快に爪を立てて洗い出した。
(わーっ!! なんて声だしてるんだ私!! これじゃまるでヘンタイ……)
はたと気づいて動きを止める。桜花国を出てすぐに師匠と交わした会話が蘇ってきた。
***
『解毒方法はなかったが、フェイクラヴァーに関係しそうな記述はあった』
『本当? どんな内容だった?』
先を歩く背中を小走りで追いかけながらニチカは問いかける。自分の代わりに書物を調べてくれたのはどうやら本当だったようだ。そのことに感謝しながら続きを促す。
『桜花国は元々娼婦の寄せ集めと言うのは知ってるか?』
『あっ、由良様に聞いたよ。他の街から逃げてきた女の人たちが最初だったって』
『その逃げ出してきた娼婦の中に、種に寄生された女が居たらしい。媚薬として主人に飲まされた典型例だな』
『それ……どうなったの?』
嫌な予感がしながらも聞くと、師匠はそっけなく憐れな女の結末を語った。
『しばらくは男を取って凌いで居たらしいが、桜花国の基礎が固められた頃に運命だと受け入れて自害したらしい。穏やかな死に顔だったそうだ』
『……治療法、なかったんだ』
うつむいてギュッと手を握る。未だ腹の中に巣食う種は今のところオズワルドの応急処置の甲斐あって大人しくしている。だが解決法が見つからない限り、これから先もずっと内側から喰い破られる恐怖に怯えて生きていかなければならない。その事実が重くのしかかる。
そんな弟子の様子をちらりと見たオズワルドだったが、特に慰めの言葉を吐くでもなく淡々と報告を続けた。
『書物はその女の手記で種の効果についてまとめられていた。まず日に一度異性の体液を摂取しなければ発芽して死ぬ。これは知ってるな?』
『毎日おびえてます』
『安心しろ、毎日 死ぬほど 愛してやるから』
視線だけをこちらに流した師匠は「死ぬほど」の部分だけやけに節をつけて言い放つ。なぜか意味深に聞こえてカァッと熱がこみ上げて来た。
『皮肉っぽく言うなぁ! あと冗談でも死ぬとかやめて! 今そのキーワード敏感だからっ』
『そう、敏感。それが副作用の一つ目』
『え?』
予想外の話の跳び方に瞬く。何がどう敏感になるというのか。
『種の目的は男の体液だ。エサが与えられないと宿主を強制的に発情させる』
『はっ、えっ、なに!?』
聞き間違いかと思ったのに、思いたかったのに、男は懇切丁寧に言い直してくれやがった。
『発情。異性を引き寄せるフェロモンを出して宿主におびき寄せるんだな。当然、搾取しやすいように女側も感じ易く――』
『へ、ヘンタイっ!!』
真っ赤になったニチカは思わず吐き捨てる。すぐさま機嫌を急降下させた声と絶対零度の視線が返って来た。
『……お前な、せっかく貴重な情報をやってるっていうのに』
『あぁぁ嘘ですオズワルド様! 続きをどうぞ!』
『まったく。つまりお前のような色気もクソもねぇガキンチョでも、種が飢餓状態の時は男がホイホイ寄ってくるってことだ。気をつけろよ』
『うん、わかっ……ガキンチョって言うなぁ!』
***
(つまり種のお腹が減り始めてきたってサインなの?)
シャワーを勢いよく流し豪快に泡を落としていく。湯殿から上がったニチカは用意されていたバスローブを羽織り魔導球をポケットに入れる。それからバイオレットを探すため廊下に出て隣の部屋から順番にノックをして開けていく。
幸いにも彼女は二つ隣の部屋に居た。衣料がカゴに積まれているところを見ると洗濯場なのだろうか。
「あぁ居たバイオレットさん。私の服洗っちゃいました?」
「いいえ、これからです。何かお忘れ物でも?」
「ありがとうございます、えっと確かスカートのポケットに……」
衣服を受け取ったニチカは制服のスカートから丸い包み紙を取り出した。川に落ちたときに流されてなかったと安心する。魔導球は死に物狂いで掴んでいたため無事だったが、近々ちゃんとした入れ物を用意した方が良いだろう。
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