56 / 156
幕間2-霧の中で
56.少女、落ち込む。
しおりを挟む
パニックになりそうな気持ちをなんとか抑え込む。ここで叫んでマモノを引き寄せたら一大事だ。素早く辺りに視線を走らせながら目まぐるしく頭を回転させる。
(ホウキで上空に抜けてみんなを探す? ううん、これだけ霧が深いんだもの見えるわけがない。先にこの谷を越えて出口で待つ? ダメだ、出口が一つとは限らないし、そもそも一気に飛んでいけるだけの技量が私にはない)
どう動くか迷っていたその時、なんの前触れもなく首すじに何者かが触れて来た。
「ひっ!」
硬直したニチカは動けなかった。後ろに誰か居る……? その『誰か』は、腰に腕を回してきた。そこで確信する、こんな事をするのは一人しか居ない。思ったより近くに居たことに安堵しながらニチカは声を荒げた。
「ランバール! 悪ふざけはやめて」
『……』
ところがその人物は押し黙ったまま全身に手を這わせて来る。そのことに恐怖を感じて足がすくむ。
「な、何か言ってよ」
『……』
「ねぇったら!」
霧はますます濃くなってきて、すでに自分の足元すら見えない。まさか、全くの別人?
「いい加減に……っ」
勇気を出して振り払おうとした瞬間、ニチカの内ももにぺたりと何かが触れる。手はそのままズズズとスカートの中を這い上がってきた。その感覚に思わず叫ぶ。
「うっ、うわぁぁああっ!!」
とっさに腰の魔導球を外して前に構える。瞬時に杖の形状に変化したのを見て、ただ絶叫する。
『なんでもいいから、とにかく風ぇーッッ!!』
荒っぽい命令にも関わらず、いや必死だったからこそ大量の緑のマナがかき集められ、ニチカを中心に外側に向かって吹き荒れた。その場だけぽっかりと霧が晴れて、頭上から陽の光が差し込む。
「へっ?」
そしてようやく少女は現状を目の当たりにする。
ペタッ、コロッ
ペタッ、コロッ
ペタッ、コロッ
足と言わず服と言わず、彼女の身体に大量にまとわりついていたのは、白い半透明の生き物だった。餅のようなボディはつるりとした大福型で、光沢のある表面はゼリーのようにぷるぷるしている。つぶらな瞳はうるうるとしていて、しきりにピィピィと鳴いて何かを訴えているようだった。
「な、なにあなた達……?」
クッションにしたら程よい大きさのそれを一匹手に取ってみる。ひんやりとした触感がなんとも心地いい。
『コロロッ』
『ぺたん! ペタァァ』
「いっ、ちょっ……」
再び伸し掛かってきた大群に押し倒される。謎の生物におぼれそうになったその時だった。
――お、おぉぉーい
頭上から聞きなれた声が降ってきてなんとか上半身を起こす。見上げれば崖の上からウルフィたちがこちらを見下ろしていた。希望を見出してニチカは顔を輝かせる。
「みんな!」
ところが大量のマモノに埋もれる少女を見ていた仲間たちは、それぞれピントのずれた感想を口にした。パタパタと尻尾をふるウルフィが真っ先に言う。
「ニチカ、それお友達? 楽しそうだね~」
「楽しくなんかないからっ、早く助けて!」
その横で、崖を降りてきながらオズワルドがぼそりと呟く。
「……ずいぶんマニアックなプレイだな」
「違うんですけど! これのどこを見たらそういう感想が出るわけ!?」
極めつけはランバールだった。爽やかな笑みを浮かべながらとんでもない事を言う。
「オレはスライム系より、どっちかっていうと触手の方がそそる――」
「この変態どもめがああああっ!!」
***
ようやく救出されたニチカは、改めて襲って来た(?)マモノを見つめた。言葉が通じるかは分からないが問いかけてみる。
「危害を加えようとしたわけじゃないのよね?」
ウルウルとした眼差しを向けてくるスライムたちは、整列してこちらを一心に見つめてくる。その姿は小動物らしくもあり、動物が好きなニチカはキュンとする。
「ちょっとかわいい……かも」
「ペタコロンは臆病な性格で、人前に現れてもすぐ逃げ出すようなマモノなんだけど、こいつら逃げないね」
「ペタコロン?」
ランバールの何気ない言葉を聞きとがめる。首をひねった少女は難しい顔をして考え込んだ。
「なんだろう、どこかで聞いたような」
「気のせいだろ」
それまで黙って居たオズワルドが急に話をさえぎる。彼はペタコロンたちを一瞥すると興味なさげに言い放った。
「そんなヤツらに構ってる暇はないんだ。また霧もかかってきたし先を急ぐぞ」
「またそういう薄情な……」
確実にこの白まんじゅう達は助けを求めている。このまま見捨てて行くのはどうしても気が引ける。ニチカは師匠の袖をつかんで引き留めた。
「ちょっとだけ調べていこうよ、ね?」
「ニチカにさんせーっ」
「センパーイ、情けは人の為ならずってゆーじゃないですかぁ」
ウルフィとランバールも賛同してくれる。オズワルドは重いため息をついて口を開いた。
「人じゃなくてマモノだろ……」
意見は三対一。時間の無駄だと割り切った彼はそれ以上の反対はしなかった。さっさと片付けてしまおうと屈んでペタコロンをつつき出す。
「おいぺったんこ。何が悩みだ、エサ場でも荒らされたか? 天敵でも出たか? それとも単にこのおせっかいなお人よしの勘違いか?」
「おせっかいって、失礼ね!」
憤慨して拳を振り上げたニチカは、引っかかっていたことを思い出した。
「それに思い出した! あなた出会った当初、私のことペタコロン呼ばわりしたでしょ、これのどこが私に似てるのよ!」
少女は手も足もない人外生物を顔のそばに持ち上げて訴える。しばらく両者を見比べていた仲間たちは感想を言った。
「そっくりじゃないか」と、師匠。
「ぽやっとしてるところが似てるかなぁ~」そうウルフィが続け、
「醸し出す雰囲気が近いね」ランバールがトドメを刺す。
「!!!」
ニチカはショックでペタコロンをぼとりと落とす。膝をついた彼女は激しく落ち込んだ。
「ひ、人から見た私って、こうなの?」
『ペタぺタコロロ、ぺたころろー』
なぐさめる様に白まんじゅうたちがニチカを取り囲んで飛び回る。可愛くて癒されるが複雑な心境だった。
「わっ!」
急にペタコロン達は少女を押し始め、どこかへ連れて行こうとした。慌てて立ち上がり導かれるまま岩陰と足を進める……と、ひときわ巨大な岩を回り込んだところでぼよんっと何かにぶつかった。
「うぐっ」
反動でしりもちをついてしまう。少女の後ろからついてきた仲間たちはあ然として言葉を失った。
「え、なに」
自分がぶつかった物を見上げたニチカもまた、声を失う。
霧の中でうっすら見えてきたのは、見上げるほどに大きな白いまんじゅうボディだった。しかも一体ではない、岩場だとばかり思っていた周囲の影はすべてペタコロンをそのまま数十倍にもしたようなペタコロン(大)だったのだ。ポカンとしていたランバールが視線をそらさず発言する。
「センパーイ、なんですかねーこれ、突然変異?」
「いや、おそらくは成体……だと思うんだが、ペタコロンってここまで巨体化するのか」
どうやらこの世界の常識からしても、このサイズは予想外らしい。そこかしこに転がされている彼らは、一歩も動かずにわずかな収縮を繰り返していた。
「寝てるの?」
声を出すのが憚られて、ニチカはそっと言う。だが怖いもの知らずのウルフィが躊躇なく起こしにかかった。
「おはよー、朝だよーっ」
その前足でぷるぷるの表面をぐいっと押し込むが、ぼよんっと弾き返されてしまう。
「ひゃああ!」
ゴロゴロ転がったオオカミは、別のペタコロン(大)にぶつかり、ピンボールよろしくあちこちを転がっていく。すぐにその姿が巨体の向こうに消えていった。ニチカは手を伸ばし、オズワルドは呆れ、そしてランバールは指をさして笑い転げる。
「あああ……」
「何やってんだアイツは……」
「あっひゃっひゃ! ウル君すげーっ」
不思議な事にこれほど騒いでもペタコロン(大)が起きる気配はなかった。相変わらず気持ちよさそうに目を閉じている。
「なるほど、つまりこれをどうにかして欲しいと」
オズワルドがそう問いかけると、少し離れたところにいたペタコロン達は瞳を潤ませてじっと見上げて来た。調査モードになった男は顎に手をやり観察を続ける。
「睡眠薬でも盛られたか?」
「けど、そんなことして何になるんスかねー」
「とにかく、起こしてみようよ」
ニチカの提案で、手分けしてありとあらゆる方法で起こしに掛かることになった。
まず揺すってみる、ダメ。少し強めに叩いてみる、まるで手ごたえナシ。すぐ側で大声を出してみる、虚しく谷底に反響するだけ。冷たい魔法瓶の水をかけてみる、おどろきの吸収力。
「なにこれ、ものすごい勢いで吸収していくんだけど……」
「これは新しい発見だな、ペタコロンを干してカラカラにしたら部屋の湿気を吸い取ってくれる道具に――」
「なに怖いこと考えてんの!?」
妙なアイデアをひらめく師匠を一喝し、ニチカは次なる手段を考えた。少し荒っぽいが、火であぶってみる。
「……沸騰してきた」
「煮立ってるねー」
自分の内包している水分が煮立ってるというのに、ペタコロン(大)は相変わらず平気な顔をして眠りこけている。ここまでやっても目を覚まさない。手詰まりになったその時だった。
――おおーい、みんなー、こっちにヘンなものがあるよー
(ホウキで上空に抜けてみんなを探す? ううん、これだけ霧が深いんだもの見えるわけがない。先にこの谷を越えて出口で待つ? ダメだ、出口が一つとは限らないし、そもそも一気に飛んでいけるだけの技量が私にはない)
どう動くか迷っていたその時、なんの前触れもなく首すじに何者かが触れて来た。
「ひっ!」
硬直したニチカは動けなかった。後ろに誰か居る……? その『誰か』は、腰に腕を回してきた。そこで確信する、こんな事をするのは一人しか居ない。思ったより近くに居たことに安堵しながらニチカは声を荒げた。
「ランバール! 悪ふざけはやめて」
『……』
ところがその人物は押し黙ったまま全身に手を這わせて来る。そのことに恐怖を感じて足がすくむ。
「な、何か言ってよ」
『……』
「ねぇったら!」
霧はますます濃くなってきて、すでに自分の足元すら見えない。まさか、全くの別人?
「いい加減に……っ」
勇気を出して振り払おうとした瞬間、ニチカの内ももにぺたりと何かが触れる。手はそのままズズズとスカートの中を這い上がってきた。その感覚に思わず叫ぶ。
「うっ、うわぁぁああっ!!」
とっさに腰の魔導球を外して前に構える。瞬時に杖の形状に変化したのを見て、ただ絶叫する。
『なんでもいいから、とにかく風ぇーッッ!!』
荒っぽい命令にも関わらず、いや必死だったからこそ大量の緑のマナがかき集められ、ニチカを中心に外側に向かって吹き荒れた。その場だけぽっかりと霧が晴れて、頭上から陽の光が差し込む。
「へっ?」
そしてようやく少女は現状を目の当たりにする。
ペタッ、コロッ
ペタッ、コロッ
ペタッ、コロッ
足と言わず服と言わず、彼女の身体に大量にまとわりついていたのは、白い半透明の生き物だった。餅のようなボディはつるりとした大福型で、光沢のある表面はゼリーのようにぷるぷるしている。つぶらな瞳はうるうるとしていて、しきりにピィピィと鳴いて何かを訴えているようだった。
「な、なにあなた達……?」
クッションにしたら程よい大きさのそれを一匹手に取ってみる。ひんやりとした触感がなんとも心地いい。
『コロロッ』
『ぺたん! ペタァァ』
「いっ、ちょっ……」
再び伸し掛かってきた大群に押し倒される。謎の生物におぼれそうになったその時だった。
――お、おぉぉーい
頭上から聞きなれた声が降ってきてなんとか上半身を起こす。見上げれば崖の上からウルフィたちがこちらを見下ろしていた。希望を見出してニチカは顔を輝かせる。
「みんな!」
ところが大量のマモノに埋もれる少女を見ていた仲間たちは、それぞれピントのずれた感想を口にした。パタパタと尻尾をふるウルフィが真っ先に言う。
「ニチカ、それお友達? 楽しそうだね~」
「楽しくなんかないからっ、早く助けて!」
その横で、崖を降りてきながらオズワルドがぼそりと呟く。
「……ずいぶんマニアックなプレイだな」
「違うんですけど! これのどこを見たらそういう感想が出るわけ!?」
極めつけはランバールだった。爽やかな笑みを浮かべながらとんでもない事を言う。
「オレはスライム系より、どっちかっていうと触手の方がそそる――」
「この変態どもめがああああっ!!」
***
ようやく救出されたニチカは、改めて襲って来た(?)マモノを見つめた。言葉が通じるかは分からないが問いかけてみる。
「危害を加えようとしたわけじゃないのよね?」
ウルウルとした眼差しを向けてくるスライムたちは、整列してこちらを一心に見つめてくる。その姿は小動物らしくもあり、動物が好きなニチカはキュンとする。
「ちょっとかわいい……かも」
「ペタコロンは臆病な性格で、人前に現れてもすぐ逃げ出すようなマモノなんだけど、こいつら逃げないね」
「ペタコロン?」
ランバールの何気ない言葉を聞きとがめる。首をひねった少女は難しい顔をして考え込んだ。
「なんだろう、どこかで聞いたような」
「気のせいだろ」
それまで黙って居たオズワルドが急に話をさえぎる。彼はペタコロンたちを一瞥すると興味なさげに言い放った。
「そんなヤツらに構ってる暇はないんだ。また霧もかかってきたし先を急ぐぞ」
「またそういう薄情な……」
確実にこの白まんじゅう達は助けを求めている。このまま見捨てて行くのはどうしても気が引ける。ニチカは師匠の袖をつかんで引き留めた。
「ちょっとだけ調べていこうよ、ね?」
「ニチカにさんせーっ」
「センパーイ、情けは人の為ならずってゆーじゃないですかぁ」
ウルフィとランバールも賛同してくれる。オズワルドは重いため息をついて口を開いた。
「人じゃなくてマモノだろ……」
意見は三対一。時間の無駄だと割り切った彼はそれ以上の反対はしなかった。さっさと片付けてしまおうと屈んでペタコロンをつつき出す。
「おいぺったんこ。何が悩みだ、エサ場でも荒らされたか? 天敵でも出たか? それとも単にこのおせっかいなお人よしの勘違いか?」
「おせっかいって、失礼ね!」
憤慨して拳を振り上げたニチカは、引っかかっていたことを思い出した。
「それに思い出した! あなた出会った当初、私のことペタコロン呼ばわりしたでしょ、これのどこが私に似てるのよ!」
少女は手も足もない人外生物を顔のそばに持ち上げて訴える。しばらく両者を見比べていた仲間たちは感想を言った。
「そっくりじゃないか」と、師匠。
「ぽやっとしてるところが似てるかなぁ~」そうウルフィが続け、
「醸し出す雰囲気が近いね」ランバールがトドメを刺す。
「!!!」
ニチカはショックでペタコロンをぼとりと落とす。膝をついた彼女は激しく落ち込んだ。
「ひ、人から見た私って、こうなの?」
『ペタぺタコロロ、ぺたころろー』
なぐさめる様に白まんじゅうたちがニチカを取り囲んで飛び回る。可愛くて癒されるが複雑な心境だった。
「わっ!」
急にペタコロン達は少女を押し始め、どこかへ連れて行こうとした。慌てて立ち上がり導かれるまま岩陰と足を進める……と、ひときわ巨大な岩を回り込んだところでぼよんっと何かにぶつかった。
「うぐっ」
反動でしりもちをついてしまう。少女の後ろからついてきた仲間たちはあ然として言葉を失った。
「え、なに」
自分がぶつかった物を見上げたニチカもまた、声を失う。
霧の中でうっすら見えてきたのは、見上げるほどに大きな白いまんじゅうボディだった。しかも一体ではない、岩場だとばかり思っていた周囲の影はすべてペタコロンをそのまま数十倍にもしたようなペタコロン(大)だったのだ。ポカンとしていたランバールが視線をそらさず発言する。
「センパーイ、なんですかねーこれ、突然変異?」
「いや、おそらくは成体……だと思うんだが、ペタコロンってここまで巨体化するのか」
どうやらこの世界の常識からしても、このサイズは予想外らしい。そこかしこに転がされている彼らは、一歩も動かずにわずかな収縮を繰り返していた。
「寝てるの?」
声を出すのが憚られて、ニチカはそっと言う。だが怖いもの知らずのウルフィが躊躇なく起こしにかかった。
「おはよー、朝だよーっ」
その前足でぷるぷるの表面をぐいっと押し込むが、ぼよんっと弾き返されてしまう。
「ひゃああ!」
ゴロゴロ転がったオオカミは、別のペタコロン(大)にぶつかり、ピンボールよろしくあちこちを転がっていく。すぐにその姿が巨体の向こうに消えていった。ニチカは手を伸ばし、オズワルドは呆れ、そしてランバールは指をさして笑い転げる。
「あああ……」
「何やってんだアイツは……」
「あっひゃっひゃ! ウル君すげーっ」
不思議な事にこれほど騒いでもペタコロン(大)が起きる気配はなかった。相変わらず気持ちよさそうに目を閉じている。
「なるほど、つまりこれをどうにかして欲しいと」
オズワルドがそう問いかけると、少し離れたところにいたペタコロン達は瞳を潤ませてじっと見上げて来た。調査モードになった男は顎に手をやり観察を続ける。
「睡眠薬でも盛られたか?」
「けど、そんなことして何になるんスかねー」
「とにかく、起こしてみようよ」
ニチカの提案で、手分けしてありとあらゆる方法で起こしに掛かることになった。
まず揺すってみる、ダメ。少し強めに叩いてみる、まるで手ごたえナシ。すぐ側で大声を出してみる、虚しく谷底に反響するだけ。冷たい魔法瓶の水をかけてみる、おどろきの吸収力。
「なにこれ、ものすごい勢いで吸収していくんだけど……」
「これは新しい発見だな、ペタコロンを干してカラカラにしたら部屋の湿気を吸い取ってくれる道具に――」
「なに怖いこと考えてんの!?」
妙なアイデアをひらめく師匠を一喝し、ニチカは次なる手段を考えた。少し荒っぽいが、火であぶってみる。
「……沸騰してきた」
「煮立ってるねー」
自分の内包している水分が煮立ってるというのに、ペタコロン(大)は相変わらず平気な顔をして眠りこけている。ここまでやっても目を覚まさない。手詰まりになったその時だった。
――おおーい、みんなー、こっちにヘンなものがあるよー
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる