66 / 156
6-フライアウェイ!
66.少女、デッドヒートする。
しおりを挟む
「邪魔!」
「うわっ」
すでに飛び立つライバル達に続こうとしたニチカだったが、急に後ろからドンッと突き飛ばされ危うく落ちそうになってしまう。見上げれば、先ほどの青いドレスの美女がフフンと笑いながら飛び去っていくところだった。風のマナを引き寄せた美女は一気に加速してあっという間にトップ集団に行ってしまう。
「~~~っ!」
さすがにカチンと来たニチカは、ゲートから飛び出し右手をまっすぐに前に構える。
「風のマナたちよ、力を貸して!」
ひらりと現れた光の蝶がホウキに溶け込みポゥッと緑に光る。グンッと一気に加速した少女は中堅組を追い抜いていき、そのままトップ集団の後ろにピタリとつけた。
『さーてまずは第一のチェックポイント! メガネ橋だよ』
実況の声に行く手を見下ろせば、街中を走る水路に橋が掛かっている。そのメガネのような高架下に薄い緑の光が張られていた。ためらわずにそこに突っ込んでいく先頭集団に続き、ニチカも後を追う。橋を抜けたところで手首のリストがポーンと音を立てる。見れば一番左の玉が点灯していた。
「なるほど、こうやって通過していくのね」
独り言をつぶやいて空中旋回する。道順は光の矢印が表示されているので大丈夫だ。続いて空中に張られた光の壁に突っ込み二個目を点灯させる。
と、ここでニチカのすぐ前を飛ぶ男女二人が小競り合いを始めた。驚いて少し距離を取ると、彼らは美しい顔を歪ませ互いを罵り始める。
「さっきから邪魔なのよ! このブサイク!」
「なんだと! そっちこそ豚が服着て飛んでるクセに!」
よく見れば彼らだけではなかった。トップ集団が罵り合いをしながら飛んでいる。みな美形なだけに見たくなかった物を見てしまったような、そんな残念感がすさまじい。
(な、なに? これじゃ全然美しくも優雅でもないじゃない)
そう思ったのは風のマナ達も同じだったのか、彼らのホウキから緑の光が放出される。途端にスピードが落ちゆっくりと落下していった。
「ちくしょーっ! テメェのせいだぞっ」
「何なのよこれは! いつもと違うじゃない!」
わめけばわめくほど風のマナが離れていく。ついに五人が水路に落ちてしまった。実況がここぞとばかりに声を張る。
『おぉーっとこれは予想外! 優勝候補がいきなり脱落だぁ!』
波乱の展開に観衆がどよめく。これはチャンスだ。ニチカは一気に順位を上げようと気合を入れる。だが、いきなり後ろから突風に煽られつんのめりそうになってしまった。何とか体勢を維持し後ろを振り向くと、派手な髪飾りで金髪をポニーテールにまとめ上げた同い年くらいの美少女がピタリと後ろにつけていた。やや体型に合ってないセクシー系の衣装がずり落ちそうになっている。彼女は追撃とばかりに風で煽り始め、ニチカはその攻撃から逃れようと斜め下にホウキの柄先を入れた。
「ちょっと、妨害は禁止なんじゃなかったの!?」
「おバカさんねぇ! ただの事故よ、事故」
そんなことをしなくとも、その顔なら自分より充分有利なはずなのに――
「「ずるいっ!」」
「私より美少女のくせして!」
「私より可愛い服なんか着て!」
金髪美少女とほぼ同時に叫ぶと、ガクンとスピードが落ちる。ハッとしたニチカは言い返したいのを堪えて無理やり軌道を変えた。
「ちょっと! 話は終わってないわよ!」
後ろから飛んでくる声にも振り向かず住宅街に突っ込む。ニチカは観客の声援も耳に入らないほどに、自分の中にふつふつと湧き上がる感情と戦うのに必死だった。
(おかしいよ、こんな嫉妬するなんて――『嫉妬』?)
まさかと思い目を凝らす。驚いたことに自分の身体をいつの間にか薄い紫のもやが取り巻いている。それだけではない、街全体が気づかれない程度にうっすら霧がかっているではないか。
「うそっ! いつの間に?」
慌てて振り払うと、少しだけ落ち着きを取り戻す。間違いない、この妖しい紫の光はファントムの仕掛けて来た罠だ。まさかと思い、辺りの観客たちを飛びながら観察すると……不安は的中した。街のあちこちでいがみ合いが発生し始めていたのだ。普段は奥底に潜めている人々の嫉妬心が表に出てしまう。
「あぁ、私もレースに出れるくらい美人だったら……」
「お前いつもムカつくんだよ! ちょっと金持ってるからって偉そうに!」
「お隣の夫婦はいつも楽しそうよね、それにくらべて家の亭主ときたら!」
住宅の壁に張られたチェックポイントをタンッと蹴りながらも、ニチカは魔水晶を探していた。負の感情の発生源が必ずどこかにあるはずだ。だが役場の冴えない実況の声がスピーカーからダダ漏れてきて気分が引きずられてしまう。
『レースも中盤に差し掛かって来ました――が、そういえば聞いてくださいよ……僕の幼なじみが先月結婚しましてね……奥さんがそりゃあもうすごい美人で、ちくしょう……俺も結婚したい……』
だがそんな実況などすでに誰も聞いていなかった。街では殴り合いが発生し、あちこちで乱闘騒ぎが起きている。
「何これ、どうなってんの!?」
戸惑いながらもレースは止まらない。地面スレスレのチェックポイントを撫でるように触れ、商店街の横断幕下のポイントを通過する。再び住宅街に戻ってきたところで、ニチカは前方の屋根に立つ黒い影を見つけた。助けを求めてその名を呼ぶ。
「オズワルドっ!」
師匠はすれ違いざまに小さな袋を投げ上げた。それをキャッチしたニチカは飛び続けながら中を覗き込んでみる。そこには見覚えのある青い髪飾りが入っていた。
「これって……!」
手早く髪飾りを着けると、少しだけノイズが混じった不機嫌そうな声が頭の中に響いた。
『あのナルシスト! 何が「ヘンな物は侵入を許さない」だ、下は乱闘騒ぎですごいことになってるぞ』
「すごいっ、この髪飾り通信機の役割も果たすの?」
『酔った勢いで昨日改良した。あの風の通信機を参考にさせてもらったが、狙い通りレース中でも風属性は使えるようだな』
酔った勢いでこんなものを開発しないで欲しい。自分のお粗末な魔女道具を頭の隅に追いやったニチカは飛び続けながら叫んだ。
「それより大変だよ! 魔水晶がどこかにあるみたいなの!」
『だろうな、でなければこんなことになってる説明がつかん』
向かい合わせに二枚、壁に貼られているチェックポイントをタタンッと蹴りながら通過する、これで七か所。オズワルドの声が届く。
『上から何か見えないか?』
「そう言われても~……」
あえて少しコースから外れ、高度を上げたニチカはハッとした。街の中心、時計塔の先端に取り付けられた風のオーブが禍々しく紫色に光っている。
「あったぁ!? っていうかゴールだし!」
寄りによってなんてところに。愕然とする弟子をよそに、師匠はいたって冷静に指示を出した。
『さっきの袋にもう一つ入ってるだろ』
「え」
慌てて探ると、黒い筒状の物が出て来た。昨日ホウキに仕込めないかと言っていた加速ブースターだ。質問しかけたニチカをさえぎり、オズワルドはとんでもない事を言い出した。
『出口を塞いで噴射エネルギーを詰まらせるようにしてある。横の赤いレバーを引いたら一分後に爆発するはずだ』
「ばっ、バクダンんん!?」
慌てて取り落としそうになるのを何とかキャッチする。降下したニチカは八つ目のポイントを通過した。師匠が鋭く指示を出す。
『一度オーブに触ったら後は用済みだ、破壊しちまえ!』
「っ、わかった!」
この際、四の五の言ってる余裕はない。このテロ……いや、爆破に巻き込まない為にも、なんとしても自分がまっさきに風のオーブにたどり着かなければ。
(早く、早く――!!)
念じるニチカの眼が鮮やかなコバルトグリーンに染まり、一気に加速する。まごついていた先頭の二人をなぎ倒す勢いで抜き去った少女は、九つ目のチェックポイントに突っ込んだ。
『お、おぉ!? ついにゴールに王手! みなさまご覧下さい!』
あまりの快進撃に我に返ったらしい実況が叫ぶ。街の人たちは罵りあうのをやめ空を見上げた。風のマナを引き連れた少女が、緑の光の尾を引くように通過する。ワッと歓声が上がり紫のオーラを少しだけ押し晴らした。
(後はあのてっぺん! 時計塔の先っ)
その下まで来た少女は、力の限り叫んだ。
「みんなっ、下がってぇぇぇ!!」
ブワッと風が発生し、ゴール付近に居た観客を吹き飛ばす。
(よしっ)
なんとかギリギリ安全圏を確認したニチカは、爆弾のレバーを引いた。そのまま時計塔の壁面ギリギリを滑るように急上昇する。
(あと少し、あと――)
緑と紫が渦を巻くオーブを視界に捕らえる。右手を伸ばしそれに触れようとした、時だった
「えっ」
急に失速し、後一歩のところで手が届かない。見れば乗っているホウキが、バラバラと崩れ落ちていくところだった。
「う、うそ、やだっ」
遥か上空に投げ出された少女は、カウントダウンを始めた爆弾を抱えたまま自由落下を始めた。
「きゃああああああ!!!」
「うわっ」
すでに飛び立つライバル達に続こうとしたニチカだったが、急に後ろからドンッと突き飛ばされ危うく落ちそうになってしまう。見上げれば、先ほどの青いドレスの美女がフフンと笑いながら飛び去っていくところだった。風のマナを引き寄せた美女は一気に加速してあっという間にトップ集団に行ってしまう。
「~~~っ!」
さすがにカチンと来たニチカは、ゲートから飛び出し右手をまっすぐに前に構える。
「風のマナたちよ、力を貸して!」
ひらりと現れた光の蝶がホウキに溶け込みポゥッと緑に光る。グンッと一気に加速した少女は中堅組を追い抜いていき、そのままトップ集団の後ろにピタリとつけた。
『さーてまずは第一のチェックポイント! メガネ橋だよ』
実況の声に行く手を見下ろせば、街中を走る水路に橋が掛かっている。そのメガネのような高架下に薄い緑の光が張られていた。ためらわずにそこに突っ込んでいく先頭集団に続き、ニチカも後を追う。橋を抜けたところで手首のリストがポーンと音を立てる。見れば一番左の玉が点灯していた。
「なるほど、こうやって通過していくのね」
独り言をつぶやいて空中旋回する。道順は光の矢印が表示されているので大丈夫だ。続いて空中に張られた光の壁に突っ込み二個目を点灯させる。
と、ここでニチカのすぐ前を飛ぶ男女二人が小競り合いを始めた。驚いて少し距離を取ると、彼らは美しい顔を歪ませ互いを罵り始める。
「さっきから邪魔なのよ! このブサイク!」
「なんだと! そっちこそ豚が服着て飛んでるクセに!」
よく見れば彼らだけではなかった。トップ集団が罵り合いをしながら飛んでいる。みな美形なだけに見たくなかった物を見てしまったような、そんな残念感がすさまじい。
(な、なに? これじゃ全然美しくも優雅でもないじゃない)
そう思ったのは風のマナ達も同じだったのか、彼らのホウキから緑の光が放出される。途端にスピードが落ちゆっくりと落下していった。
「ちくしょーっ! テメェのせいだぞっ」
「何なのよこれは! いつもと違うじゃない!」
わめけばわめくほど風のマナが離れていく。ついに五人が水路に落ちてしまった。実況がここぞとばかりに声を張る。
『おぉーっとこれは予想外! 優勝候補がいきなり脱落だぁ!』
波乱の展開に観衆がどよめく。これはチャンスだ。ニチカは一気に順位を上げようと気合を入れる。だが、いきなり後ろから突風に煽られつんのめりそうになってしまった。何とか体勢を維持し後ろを振り向くと、派手な髪飾りで金髪をポニーテールにまとめ上げた同い年くらいの美少女がピタリと後ろにつけていた。やや体型に合ってないセクシー系の衣装がずり落ちそうになっている。彼女は追撃とばかりに風で煽り始め、ニチカはその攻撃から逃れようと斜め下にホウキの柄先を入れた。
「ちょっと、妨害は禁止なんじゃなかったの!?」
「おバカさんねぇ! ただの事故よ、事故」
そんなことをしなくとも、その顔なら自分より充分有利なはずなのに――
「「ずるいっ!」」
「私より美少女のくせして!」
「私より可愛い服なんか着て!」
金髪美少女とほぼ同時に叫ぶと、ガクンとスピードが落ちる。ハッとしたニチカは言い返したいのを堪えて無理やり軌道を変えた。
「ちょっと! 話は終わってないわよ!」
後ろから飛んでくる声にも振り向かず住宅街に突っ込む。ニチカは観客の声援も耳に入らないほどに、自分の中にふつふつと湧き上がる感情と戦うのに必死だった。
(おかしいよ、こんな嫉妬するなんて――『嫉妬』?)
まさかと思い目を凝らす。驚いたことに自分の身体をいつの間にか薄い紫のもやが取り巻いている。それだけではない、街全体が気づかれない程度にうっすら霧がかっているではないか。
「うそっ! いつの間に?」
慌てて振り払うと、少しだけ落ち着きを取り戻す。間違いない、この妖しい紫の光はファントムの仕掛けて来た罠だ。まさかと思い、辺りの観客たちを飛びながら観察すると……不安は的中した。街のあちこちでいがみ合いが発生し始めていたのだ。普段は奥底に潜めている人々の嫉妬心が表に出てしまう。
「あぁ、私もレースに出れるくらい美人だったら……」
「お前いつもムカつくんだよ! ちょっと金持ってるからって偉そうに!」
「お隣の夫婦はいつも楽しそうよね、それにくらべて家の亭主ときたら!」
住宅の壁に張られたチェックポイントをタンッと蹴りながらも、ニチカは魔水晶を探していた。負の感情の発生源が必ずどこかにあるはずだ。だが役場の冴えない実況の声がスピーカーからダダ漏れてきて気分が引きずられてしまう。
『レースも中盤に差し掛かって来ました――が、そういえば聞いてくださいよ……僕の幼なじみが先月結婚しましてね……奥さんがそりゃあもうすごい美人で、ちくしょう……俺も結婚したい……』
だがそんな実況などすでに誰も聞いていなかった。街では殴り合いが発生し、あちこちで乱闘騒ぎが起きている。
「何これ、どうなってんの!?」
戸惑いながらもレースは止まらない。地面スレスレのチェックポイントを撫でるように触れ、商店街の横断幕下のポイントを通過する。再び住宅街に戻ってきたところで、ニチカは前方の屋根に立つ黒い影を見つけた。助けを求めてその名を呼ぶ。
「オズワルドっ!」
師匠はすれ違いざまに小さな袋を投げ上げた。それをキャッチしたニチカは飛び続けながら中を覗き込んでみる。そこには見覚えのある青い髪飾りが入っていた。
「これって……!」
手早く髪飾りを着けると、少しだけノイズが混じった不機嫌そうな声が頭の中に響いた。
『あのナルシスト! 何が「ヘンな物は侵入を許さない」だ、下は乱闘騒ぎですごいことになってるぞ』
「すごいっ、この髪飾り通信機の役割も果たすの?」
『酔った勢いで昨日改良した。あの風の通信機を参考にさせてもらったが、狙い通りレース中でも風属性は使えるようだな』
酔った勢いでこんなものを開発しないで欲しい。自分のお粗末な魔女道具を頭の隅に追いやったニチカは飛び続けながら叫んだ。
「それより大変だよ! 魔水晶がどこかにあるみたいなの!」
『だろうな、でなければこんなことになってる説明がつかん』
向かい合わせに二枚、壁に貼られているチェックポイントをタタンッと蹴りながら通過する、これで七か所。オズワルドの声が届く。
『上から何か見えないか?』
「そう言われても~……」
あえて少しコースから外れ、高度を上げたニチカはハッとした。街の中心、時計塔の先端に取り付けられた風のオーブが禍々しく紫色に光っている。
「あったぁ!? っていうかゴールだし!」
寄りによってなんてところに。愕然とする弟子をよそに、師匠はいたって冷静に指示を出した。
『さっきの袋にもう一つ入ってるだろ』
「え」
慌てて探ると、黒い筒状の物が出て来た。昨日ホウキに仕込めないかと言っていた加速ブースターだ。質問しかけたニチカをさえぎり、オズワルドはとんでもない事を言い出した。
『出口を塞いで噴射エネルギーを詰まらせるようにしてある。横の赤いレバーを引いたら一分後に爆発するはずだ』
「ばっ、バクダンんん!?」
慌てて取り落としそうになるのを何とかキャッチする。降下したニチカは八つ目のポイントを通過した。師匠が鋭く指示を出す。
『一度オーブに触ったら後は用済みだ、破壊しちまえ!』
「っ、わかった!」
この際、四の五の言ってる余裕はない。このテロ……いや、爆破に巻き込まない為にも、なんとしても自分がまっさきに風のオーブにたどり着かなければ。
(早く、早く――!!)
念じるニチカの眼が鮮やかなコバルトグリーンに染まり、一気に加速する。まごついていた先頭の二人をなぎ倒す勢いで抜き去った少女は、九つ目のチェックポイントに突っ込んだ。
『お、おぉ!? ついにゴールに王手! みなさまご覧下さい!』
あまりの快進撃に我に返ったらしい実況が叫ぶ。街の人たちは罵りあうのをやめ空を見上げた。風のマナを引き連れた少女が、緑の光の尾を引くように通過する。ワッと歓声が上がり紫のオーラを少しだけ押し晴らした。
(後はあのてっぺん! 時計塔の先っ)
その下まで来た少女は、力の限り叫んだ。
「みんなっ、下がってぇぇぇ!!」
ブワッと風が発生し、ゴール付近に居た観客を吹き飛ばす。
(よしっ)
なんとかギリギリ安全圏を確認したニチカは、爆弾のレバーを引いた。そのまま時計塔の壁面ギリギリを滑るように急上昇する。
(あと少し、あと――)
緑と紫が渦を巻くオーブを視界に捕らえる。右手を伸ばしそれに触れようとした、時だった
「えっ」
急に失速し、後一歩のところで手が届かない。見れば乗っているホウキが、バラバラと崩れ落ちていくところだった。
「う、うそ、やだっ」
遥か上空に投げ出された少女は、カウントダウンを始めた爆弾を抱えたまま自由落下を始めた。
「きゃああああああ!!!」
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる