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9-みみとしっぽの大冒険
96.少女、巻きつかれる。
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一方その頃、上層では一人と一匹がそれぞれ奮闘していた。
(フルル、絶対助けるからね!)
(かったるい……)
そしてほぼ同時刻に、ある事に気づいて足を止める。
「微かだけど……匂いが」
鼻をピクッと動かしたウルフィは、大好きな幼なじみの匂いを頼りに辺りを調べる。すると大きな石の裏側に下層へと降りる穴を発見した。
「待てよ、何も歩いて探し回らなくても……生物が居るならば必ず空気の入れ替えは必要なわけで」
思いついたオズワルドは手持ちの魔女道具から煙を発生させるものを取り出す。すぐに白いケムリが通路に充満し、微かに流れ始めた。ケムリが移動していく先、つまり空気の流れをたどっていくと、ぽっかりと空いた大穴に吸い込まれていくのが見えてきた。
***
しばらく通路を進んでいたニチカは急に空気の流れが変わったような気がした。広い場所へ出たのだ。
広いホールのような空間で、ほんのりと明るい。ヒカリゴケが自生しているのだろうか? とはいえ、目をこらせば影がぼんやりわかるという程度で見通すのにはまるで役に立たなそうだ。
慎重に進んでいた少女は、掲げた杖の照らす先にボロ雑巾のような何かが落ちているのに気づき慌てて駆け寄る。
「フルル!」
ぐったりと横たわる彼女はヒト型から本来の獣の姿に戻っていた。気を失っているようで、少しだけ開かれた口からディザイアが滑り落ちた。
「いったい何が――」
ズルリ
その時、何の前触れもなく全身を包み込まれるような悪寒が走る。
ズリ ズリ……
(近くに、何か、居る?)
大型の生き物が這うような音が、気味悪く響く。せめて敵の位置を確かめようと耳を澄ますと、なぜか前から、後ろから、至る所から音が聞こえてきた。
(や、やだ! いつの間に!?)
すっかり複数の何かに包囲されてしまい、足がガクガクと震えだす。
ふと、明かりの届く範囲に壁が出現していることに気づいて注視する。それは滑らかな黄金色の壁で、ウロコがぬらぬらとこちらの明かりを反射してズロリと横に動――
その瞬間、ニチカは理解した。
自分たちは複数の敵に包囲されているのではない『恐ろしく巨大な一匹』に巻かれているのだと。
声の限り、叫んだ。
慌てて脱出しようと立ち上がるが、その前にシュルリと巻きつかれてしまう。グググと万力のような力で締め上げられ、杖がガランと下に落ちる。フルルと共に完全に拘束されてしまった。
(ダメ……抜け出せない)
その時、唐突に頭上から声が降ってきた。
――誰か居るのか!
聞き覚えのある声にそちらを見上げ、助けを呼ぶ。
「オズワルド! ここ、助けて!」
「ニチカ? なんでお前ここに――」
「説明は後でするから、早くーっ!!」
声を張り上げたせいか、うわんうわんと洞穴内に反響する。すると反対方向の天井からこちらも聞きなれた声がした。
「あれぇ、ご主人も居るの? これ、落ちても平気?」
「ウルフィっ、たぶん大丈夫だから降りてきて!!」
同時に二つの影が落ちてくる。タッと着地したオズワルドは大蛇に巻きつかれているニチカを見るとぎょっとしたように目を見開いた。
「なにやってんだ、燃やして蒲焼きにでもしろっ」
「む、む、むりぃ! 私ヘビだめぇぇ……」
動物全般は好きだが、爬虫類系はどうにも苦手だった。ヘビにも毛が生えていればいいのにと的外れな考えが浮かぶ。どうやらしっかり混乱しているらしい。
鎌首をもたげた黄色い瞳に見据えられ、金縛りに遭ったように動けなくなってしまう。嫌な汗がたらりと首筋を伝った。
グルリと回り込んできたウルフィが、横でぐったりしている白いオオカミの姿を見つけたらしく鋭く一声吠えた。
「フルル!」
「ロロ……? ひぃっ!? なにこれ!!」
ピクッと耳を動かした白オオカミは、ヘビの尾に巻き付かれている現状を知ると暴れ出した。だが当然ガッチリと捕まえられていて抜け出せそうにない。
シュウウウゥゥ……
針のような瞳孔が細められ、頭全体が少し後ろに引かれる。口が大きく開かれ、サーベルのような牙から何かの液体が滴るのが見えた。
(あ、これまずい)
迫りくるその瞬間はなぜかスローモーションのようで「そういえば解毒の魔法なんてあったかな」なんて妙に冷静に考えていた。
「ぁ……」
「させないっ!」
いきなり風圧が巻き起こり、目の前まで迫っていたヘビの頭に何かが体当たりする。ドサリと地に落ちた頭の横に、茶色のオオカミが着地した。
「ニチカとフルルは、僕が守るんだ」
「ウルフィ……!」
「だって、二人は大切な友達だからっ」
そこにいつものような気弱さはなく、低くうなる彼はその場にザッと構えた。
「さぁ、僕が相手だ!」
ところが、ヘビの反応はなくシーンと横たわっている。妙な間が空き、洞穴内は謎の静寂に包まれた。油断なく構えていたオズワルドがたまらずツッコミを入れる。
「……おい、起きろよ。せっかくカッコつけたウルフィが恥ずかしくなるだろ」
「って、え? 泣いてる?」
高い位置にいたニチカからはよく見えたのだが、地面に張り付けられた大蛇はシクシクと声を殺して泣いていた。それはもう号泣といって言いレベルで、見る間にその顔の辺りに水たまりができていく。
「あの、もしもーし?」
ボムッ
呼びかけた途端、ヘビは白いケムリに包まれた。それと同時に解放され、ニチカとフルルは地面に落下する。
「がふっ」
「いったーい!」
したたかに打ち付けた尻をさすっていると、晴れてきたケムリの向こうに小さく縮こまる人影が見えてきた。
「……」
「……」
皆一様に言葉を失う。
なぜならそこにいたのはヨレたスーツを着た冴えないオッさんが一人。くすんだ茶色の髪はボサボサで、年のころは三十半ばといったところか。そんないい年した男が人目も憚らずにおいおいと泣いている。
(なんなのこれ、どうしたらいいの)
この世界の不思議事情にも少しずつ慣れてきていた少女は、巨大な大蛇が人に変身するぐらいでは驚かない――というか、まぁ人型くらいにはなれるだろうなと実はアタリをつけていた。
だが、それだってとんでもない美形だとか、凄まじいオーラを持った、いわゆる人間離れしたものをイメージしていたのだ。それが
「ひ、ひぃ、虐めないで……」
この男はどうだ。モブ顔を自称している自分が言うのもアレだが、あれだけの大蛇から変身したにしてはインパクトに欠ける。顔立ちが悪いわけではないのだが、とにかく薄い。人込みに放り込まれたら二秒で見失う影の薄さだ。
「あなたが、グラグラ様……なんですか?」
そう尋ねた瞬間、男のぐしゃぐしゃになっていた顔がさらに歪む。決壊したかのように彼の泣きに火がついてしまった。
「うわぁぁ!?」
その途端、地面がすさまじい勢いで揺れ始める。立っていられなくなるほどの揺れにその場にいた全員が這いつくばった。
「当たり? これ当たりなの!?」
「少なくとも地震を引き起こしてるのはアイツだろおわっ!?」
すぐ横に落下してきた岩の塊にオズワルドが青ざめる。このままだと落盤する危険性があるかもしれない。
「と、とにかくここから出るかあの人を泣き止ませないと!」
「って言ったって、どうするのよぉ!?」
泣きそうなフルルの声のとおり、ますます揺れはひどくなっている。もはやどこかにすっとばされないように地面にしがみつくので精いっぱいだった。
「死ぬーっ!! 今度こそ死ぬー!!」
――大丈夫。
突然、聞き覚えのある男の声がする。
どこか人を喰ったような、それすらも懐かしいような声。
顔を上げたその先に、緑の髪の青年が浮かんでいた。
「ラン君!?」
『や、久しぶりー』
(フルル、絶対助けるからね!)
(かったるい……)
そしてほぼ同時刻に、ある事に気づいて足を止める。
「微かだけど……匂いが」
鼻をピクッと動かしたウルフィは、大好きな幼なじみの匂いを頼りに辺りを調べる。すると大きな石の裏側に下層へと降りる穴を発見した。
「待てよ、何も歩いて探し回らなくても……生物が居るならば必ず空気の入れ替えは必要なわけで」
思いついたオズワルドは手持ちの魔女道具から煙を発生させるものを取り出す。すぐに白いケムリが通路に充満し、微かに流れ始めた。ケムリが移動していく先、つまり空気の流れをたどっていくと、ぽっかりと空いた大穴に吸い込まれていくのが見えてきた。
***
しばらく通路を進んでいたニチカは急に空気の流れが変わったような気がした。広い場所へ出たのだ。
広いホールのような空間で、ほんのりと明るい。ヒカリゴケが自生しているのだろうか? とはいえ、目をこらせば影がぼんやりわかるという程度で見通すのにはまるで役に立たなそうだ。
慎重に進んでいた少女は、掲げた杖の照らす先にボロ雑巾のような何かが落ちているのに気づき慌てて駆け寄る。
「フルル!」
ぐったりと横たわる彼女はヒト型から本来の獣の姿に戻っていた。気を失っているようで、少しだけ開かれた口からディザイアが滑り落ちた。
「いったい何が――」
ズルリ
その時、何の前触れもなく全身を包み込まれるような悪寒が走る。
ズリ ズリ……
(近くに、何か、居る?)
大型の生き物が這うような音が、気味悪く響く。せめて敵の位置を確かめようと耳を澄ますと、なぜか前から、後ろから、至る所から音が聞こえてきた。
(や、やだ! いつの間に!?)
すっかり複数の何かに包囲されてしまい、足がガクガクと震えだす。
ふと、明かりの届く範囲に壁が出現していることに気づいて注視する。それは滑らかな黄金色の壁で、ウロコがぬらぬらとこちらの明かりを反射してズロリと横に動――
その瞬間、ニチカは理解した。
自分たちは複数の敵に包囲されているのではない『恐ろしく巨大な一匹』に巻かれているのだと。
声の限り、叫んだ。
慌てて脱出しようと立ち上がるが、その前にシュルリと巻きつかれてしまう。グググと万力のような力で締め上げられ、杖がガランと下に落ちる。フルルと共に完全に拘束されてしまった。
(ダメ……抜け出せない)
その時、唐突に頭上から声が降ってきた。
――誰か居るのか!
聞き覚えのある声にそちらを見上げ、助けを呼ぶ。
「オズワルド! ここ、助けて!」
「ニチカ? なんでお前ここに――」
「説明は後でするから、早くーっ!!」
声を張り上げたせいか、うわんうわんと洞穴内に反響する。すると反対方向の天井からこちらも聞きなれた声がした。
「あれぇ、ご主人も居るの? これ、落ちても平気?」
「ウルフィっ、たぶん大丈夫だから降りてきて!!」
同時に二つの影が落ちてくる。タッと着地したオズワルドは大蛇に巻きつかれているニチカを見るとぎょっとしたように目を見開いた。
「なにやってんだ、燃やして蒲焼きにでもしろっ」
「む、む、むりぃ! 私ヘビだめぇぇ……」
動物全般は好きだが、爬虫類系はどうにも苦手だった。ヘビにも毛が生えていればいいのにと的外れな考えが浮かぶ。どうやらしっかり混乱しているらしい。
鎌首をもたげた黄色い瞳に見据えられ、金縛りに遭ったように動けなくなってしまう。嫌な汗がたらりと首筋を伝った。
グルリと回り込んできたウルフィが、横でぐったりしている白いオオカミの姿を見つけたらしく鋭く一声吠えた。
「フルル!」
「ロロ……? ひぃっ!? なにこれ!!」
ピクッと耳を動かした白オオカミは、ヘビの尾に巻き付かれている現状を知ると暴れ出した。だが当然ガッチリと捕まえられていて抜け出せそうにない。
シュウウウゥゥ……
針のような瞳孔が細められ、頭全体が少し後ろに引かれる。口が大きく開かれ、サーベルのような牙から何かの液体が滴るのが見えた。
(あ、これまずい)
迫りくるその瞬間はなぜかスローモーションのようで「そういえば解毒の魔法なんてあったかな」なんて妙に冷静に考えていた。
「ぁ……」
「させないっ!」
いきなり風圧が巻き起こり、目の前まで迫っていたヘビの頭に何かが体当たりする。ドサリと地に落ちた頭の横に、茶色のオオカミが着地した。
「ニチカとフルルは、僕が守るんだ」
「ウルフィ……!」
「だって、二人は大切な友達だからっ」
そこにいつものような気弱さはなく、低くうなる彼はその場にザッと構えた。
「さぁ、僕が相手だ!」
ところが、ヘビの反応はなくシーンと横たわっている。妙な間が空き、洞穴内は謎の静寂に包まれた。油断なく構えていたオズワルドがたまらずツッコミを入れる。
「……おい、起きろよ。せっかくカッコつけたウルフィが恥ずかしくなるだろ」
「って、え? 泣いてる?」
高い位置にいたニチカからはよく見えたのだが、地面に張り付けられた大蛇はシクシクと声を殺して泣いていた。それはもう号泣といって言いレベルで、見る間にその顔の辺りに水たまりができていく。
「あの、もしもーし?」
ボムッ
呼びかけた途端、ヘビは白いケムリに包まれた。それと同時に解放され、ニチカとフルルは地面に落下する。
「がふっ」
「いったーい!」
したたかに打ち付けた尻をさすっていると、晴れてきたケムリの向こうに小さく縮こまる人影が見えてきた。
「……」
「……」
皆一様に言葉を失う。
なぜならそこにいたのはヨレたスーツを着た冴えないオッさんが一人。くすんだ茶色の髪はボサボサで、年のころは三十半ばといったところか。そんないい年した男が人目も憚らずにおいおいと泣いている。
(なんなのこれ、どうしたらいいの)
この世界の不思議事情にも少しずつ慣れてきていた少女は、巨大な大蛇が人に変身するぐらいでは驚かない――というか、まぁ人型くらいにはなれるだろうなと実はアタリをつけていた。
だが、それだってとんでもない美形だとか、凄まじいオーラを持った、いわゆる人間離れしたものをイメージしていたのだ。それが
「ひ、ひぃ、虐めないで……」
この男はどうだ。モブ顔を自称している自分が言うのもアレだが、あれだけの大蛇から変身したにしてはインパクトに欠ける。顔立ちが悪いわけではないのだが、とにかく薄い。人込みに放り込まれたら二秒で見失う影の薄さだ。
「あなたが、グラグラ様……なんですか?」
そう尋ねた瞬間、男のぐしゃぐしゃになっていた顔がさらに歪む。決壊したかのように彼の泣きに火がついてしまった。
「うわぁぁ!?」
その途端、地面がすさまじい勢いで揺れ始める。立っていられなくなるほどの揺れにその場にいた全員が這いつくばった。
「当たり? これ当たりなの!?」
「少なくとも地震を引き起こしてるのはアイツだろおわっ!?」
すぐ横に落下してきた岩の塊にオズワルドが青ざめる。このままだと落盤する危険性があるかもしれない。
「と、とにかくここから出るかあの人を泣き止ませないと!」
「って言ったって、どうするのよぉ!?」
泣きそうなフルルの声のとおり、ますます揺れはひどくなっている。もはやどこかにすっとばされないように地面にしがみつくので精いっぱいだった。
「死ぬーっ!! 今度こそ死ぬー!!」
――大丈夫。
突然、聞き覚えのある男の声がする。
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