108 / 156
10-水面にて跳ね空
108.少女、再びフラグを回収する。
しおりを挟む
ランバールが呟くと同時に、部屋の入り口が荒々しく開かれた。黒い集団の後ろから見慣れた彼女が進み出てハッとしたように目を見開く。
その人物は何か言いたげなグッと言葉を呑み込んだかと思うと、視線を逸らしてうつむいた。
「シャル……お前」
オズワルドが何かを言う前に協会の魔女たちが一斉に杖や銃を構える。警告もなしにいきなり攻撃が始まった。
「っ!」
発射された光線や弾丸を転がって避け窓を開け放つ。ここが外なら土魔法で障壁でも作るのだがあいにく室内だ。すでに隣の部屋の窓を破壊しているのでこれ以上の迷惑はかけたくない。
「夕飯食べたかったー!!」
ランバールの嘆きを横に聞きながら、師匠の袖をひっつかんで窓から飛び出す。落下しながらホウキを巨大化させ地面につくスレスレでぐんっと上昇をかけた。
「しゃーないオレ煽動! 奴らをまき次第、昼に会った水の女神様ンとこに向かうっス! じゃ後でっ」
「えっ、ラン君!?」
「『隠れ玉』ッ」
聞き返す前に後ろのオズワルドがお得意の魔女道具を発動させる。意図を汲み取ったニチカは水路の水面ギリギリまで降りジッと身を潜めた。
「ヒャーッハァ! 魔女さんこちらァ!」
まるで曲芸飛行をするようにランバールが宙を舞う。追ってきた魔女たちはホウキでその後を追い、男たちも走りながらそちらを追った。
(大丈夫かな、やっぱり私も手伝いに行った方が……)
(やめとけ、足引っ張りたくないなら尚更)
(うぅ)
ランバールはわざと建物より高く飛び上がり、街の防御システムである水鉄砲を発動させている。何人かの魔女がそれに巻き込まれて落ちた。
(すごい、完璧に見切ってる)
(……半分楽しんでないか、あれ)
さきほどから彼は爆笑しっぱなしだ、テンションが振り切れておかしなことになっているらしい。その笑い声に煽られた魔女たちはますます苛立ち後を追う。
そろそろ街の住人も異変に気づきはじめたようでなんだなんだと窓から顔を出し始めていた。
(いいタイミングだ、行くぞ)
(行くって……水の女神様で落ち合うって行ってたけど、それ何処のこと? 精霊様の居場所が分かったの?)
(昼に会っただろ。あっちだ)
そう言われてもまるで心当たりがない。
だが言われるまま進んだ少女は目の前に現れた物に納得した。人もまばらの広場で待ち構えていたのはあの美しい噴水だった。
「どうしよう、一旦この街から出る?」
タッと降り立ったニチカは人目を気にしながらひとまず噴水の影に隠れようとする。
「ん、あれ」
するとそこに正面からは見えなかった井戸が有ることに気づいた。腰の高さほどのそれはやけに古臭く、石垣には苔が生えている。
「うわ、深い。落ちたら上がって来られなそう」
「何か嫌な思い出が蘇ってくる……」
遠い目をする師匠はさて置き、空を見上げれば遠くの方でまだ追いかけっこをやっている。今のうちに逃げる算段を。と考えた少女は、ふいに井戸の底で何かが光ったような気がして覗き込んだ。
「?」
「そこで落ちたら『お約束大賞』の称号をつけるからな」
「失礼なっ、いくら私だってそうそうお話みたいな展開にはならないって――」
だがニチカは忘れていた。フラグを立てた時点でそれは起こるべくして起こるものだったのだ。
空にランバールが居た事。
そのランがハイテンションになっていた事。
その騒ぎを不注意にも背中に回してしまったこと。
役満である。
「あ」
本当にごく自然に、その声は後ろから聞こえた。
「え?」
振り向くと彼が居た。
器用にもホウキに後ろ座りをしており、首だけをこちらにひねる体勢で視線がかち合う。
次の瞬間、派手な音を立てて3人は井戸ごと落ちていった。
しばらくして水音が上がる。
シン、と静まり返った広場は、次の瞬間ハチの巣をつついたような騒ぎになった。
***
「っ……」
ぴちょんと、顔に水滴があたる感覚で少女は目を開けた。うっすらと開けた視界には青白く光る洞窟が映り込んでくる。白いつららのような石がいくつもぶら下がり、そこからまた一滴落ちてきて髪の毛に当たり弾けた。
「うぅ、今度こそ死んだかと思った」
震える声を出しながら上体を起こす。手をついた石は白くなめらかで、その表面を流れる水はゆっくりと流れを作っているようだ。
「だいぶ流されたけど、今どのあたりなんだろう……」
そう呟いて先ほど自分が吐き出されたトンネルを振り仰ぐ。
井戸に落ちた瞬間、溺れるかと覚悟したのだが、表面に張られていた水を通過すると後はもうウォータースライダーのごとく流された。どうやら井戸は見せかけで、この鍾乳洞へ来るための抜け穴になっていたようだ。
流される途中、道がいくつも枝分かれしていてオズワルドとランバールとは途中ではぐれてしまった。彼らも同じようにこの鍾乳洞のどこかに吐き出されているのだろうか。
「もうっ、なんでどこの街もこう変な仕掛けばっかりなのよ」
子供の秘密基地じゃないんだから、と立ち上がったニチカは辺りを見回す。
鍾乳洞はトンネルのようになっていて、高さは自分を縦に4人分重ねたほど、幅は両手を広げて5人分と言ったところだろうか。それが左右にそれぞれ曲がりくねって道が続いている。全体が白い石で出来ているので怖いというよりは神々しい。そして光源はないはずなのに不思議と明るい。
なぜだろうと首を傾げた瞬間、ふわりと綿胞子のような白いものが上から落ちてきて水に溶けた。かすかにそこだけ明るくなったような気がしてだいぶ前の事を思い出す。
ホウェールのマリアが隠れていた洞窟もこんな風に自然の明かりが灯っていなかっただろうか。とすると、この光は自生しているヒカリゴケが出している光なのかもしれない。あの時は緑で今は青っぽい光だが。
「確かに幻想的ではあるけど……」
うっとりと見惚れるには今の状況は不安すぎた。ホウキで飛んでドドドドと流れる水の管を逆走しても良いが、戻ったところで待ち構えているのは魔女協会の連中である。ならこのまま別の道を探した方が良くないだろうか? それに
「水のマナがいっぱい、なんだよねぇ」
目をこらさないでもそこら中を青い蝶が飛び交っているのが感じられる。
もしかすると、もしかするのかもしれない。
(井戸に落ちて正解だったかも。水の精霊さまも探してみよう)
じゃぶじゃぶと緩やかな流れに逆らって上流へと歩き出す。
「寒……」
水に半分身体が浸かっていたのでひんやりとする。いつものようにケープを掻き合わせようとして、宿に置いてきてしまったことを思い出した。
「シャルロッテさん……」
あの時の彼女の表情が忘れられない。バレた後ろめたさというよりは、悪いことをして見つかった子供のように怯えた顔をしていた。
(何か事情があるのかもしれない、脅されてるとか)
また甘っちょろい考えだと笑われるかもしれないが、今回ばかりは迷わなかった。
(あんなに優しい人なんだもの、信じなきゃ!)
そう考えながら自分と同じくらいの大きさの石筍を警戒しながら回り込む。すると、少し開けた場所に出た。
20メートルほどの幅広の川。その中州に転がっている物を見たニチカはぽかんと口を開けて固まった。
「も、もご、むぐ、ぜんぜん、足りないよぉぉ~」
いやまて落ち着け。確かに昼間別れた時からしばらく見ていなかったが、それでもこの短時間でここまで急成長するものだろうか? それともあれか、よく似てはいるがこれはまったくの別個体という可能性も――うん、そうだ。そうに違いない。
「あ、あれぇ? ニチカ? ニチカだあああ!! おーい!!」
「ウルフィーっ!!?」
名前を呼ばれたことにより、疑惑が確信に変わってしまった。
慌ててそちらに駆け寄ると、普段の二十倍ほどに巨大化したオオカミがごろんと転がりこちらに顔を向けた。
「ど、どうしたのそれ……何があったの……」
そう言いたくなるのも仕方のないことだった。何せ今の彼は腹がパンパンにはちきれんばかりに膨らみ破裂寸前の風船のようになっている。ギャグアニメでもなかなかお目にかかれない冗談のような光景である。
よっこらしょ、と転がったウルフィは途方に暮れたようにこちらを見下ろしてきた。影がかかりちょっと怖い。
「なんかねぇぇ、お屋敷で出されたオヤツをねぇぇ、食べた時からぁぁ、お腹が減って減ってしょうがないんだ」
「えっ」
その時、ドサドサと何かが彼の横に落ちて来る。見上げればニチカが落ちてきたのと同じようなダストホールから、大量の魚の死骸が投げ込まれたところだった。
「ごはんんんん!!」
待ってましたと言わんばかりにウルフィがそれをむさぼり始める。その腹にぼんやりと妖しい紫の光が透けたような気がして息を呑む。
「おわーっ!? なにそれウル君!?」
「今度は何をやらかしたんだお前……」
タイミング良くはぐれていた仲間たちも集結する。ニチカは涙目になりながら訴えた。
「どうしよう、ウルフィが魔水晶食べちゃったみたいなのっ!!」
その人物は何か言いたげなグッと言葉を呑み込んだかと思うと、視線を逸らしてうつむいた。
「シャル……お前」
オズワルドが何かを言う前に協会の魔女たちが一斉に杖や銃を構える。警告もなしにいきなり攻撃が始まった。
「っ!」
発射された光線や弾丸を転がって避け窓を開け放つ。ここが外なら土魔法で障壁でも作るのだがあいにく室内だ。すでに隣の部屋の窓を破壊しているのでこれ以上の迷惑はかけたくない。
「夕飯食べたかったー!!」
ランバールの嘆きを横に聞きながら、師匠の袖をひっつかんで窓から飛び出す。落下しながらホウキを巨大化させ地面につくスレスレでぐんっと上昇をかけた。
「しゃーないオレ煽動! 奴らをまき次第、昼に会った水の女神様ンとこに向かうっス! じゃ後でっ」
「えっ、ラン君!?」
「『隠れ玉』ッ」
聞き返す前に後ろのオズワルドがお得意の魔女道具を発動させる。意図を汲み取ったニチカは水路の水面ギリギリまで降りジッと身を潜めた。
「ヒャーッハァ! 魔女さんこちらァ!」
まるで曲芸飛行をするようにランバールが宙を舞う。追ってきた魔女たちはホウキでその後を追い、男たちも走りながらそちらを追った。
(大丈夫かな、やっぱり私も手伝いに行った方が……)
(やめとけ、足引っ張りたくないなら尚更)
(うぅ)
ランバールはわざと建物より高く飛び上がり、街の防御システムである水鉄砲を発動させている。何人かの魔女がそれに巻き込まれて落ちた。
(すごい、完璧に見切ってる)
(……半分楽しんでないか、あれ)
さきほどから彼は爆笑しっぱなしだ、テンションが振り切れておかしなことになっているらしい。その笑い声に煽られた魔女たちはますます苛立ち後を追う。
そろそろ街の住人も異変に気づきはじめたようでなんだなんだと窓から顔を出し始めていた。
(いいタイミングだ、行くぞ)
(行くって……水の女神様で落ち合うって行ってたけど、それ何処のこと? 精霊様の居場所が分かったの?)
(昼に会っただろ。あっちだ)
そう言われてもまるで心当たりがない。
だが言われるまま進んだ少女は目の前に現れた物に納得した。人もまばらの広場で待ち構えていたのはあの美しい噴水だった。
「どうしよう、一旦この街から出る?」
タッと降り立ったニチカは人目を気にしながらひとまず噴水の影に隠れようとする。
「ん、あれ」
するとそこに正面からは見えなかった井戸が有ることに気づいた。腰の高さほどのそれはやけに古臭く、石垣には苔が生えている。
「うわ、深い。落ちたら上がって来られなそう」
「何か嫌な思い出が蘇ってくる……」
遠い目をする師匠はさて置き、空を見上げれば遠くの方でまだ追いかけっこをやっている。今のうちに逃げる算段を。と考えた少女は、ふいに井戸の底で何かが光ったような気がして覗き込んだ。
「?」
「そこで落ちたら『お約束大賞』の称号をつけるからな」
「失礼なっ、いくら私だってそうそうお話みたいな展開にはならないって――」
だがニチカは忘れていた。フラグを立てた時点でそれは起こるべくして起こるものだったのだ。
空にランバールが居た事。
そのランがハイテンションになっていた事。
その騒ぎを不注意にも背中に回してしまったこと。
役満である。
「あ」
本当にごく自然に、その声は後ろから聞こえた。
「え?」
振り向くと彼が居た。
器用にもホウキに後ろ座りをしており、首だけをこちらにひねる体勢で視線がかち合う。
次の瞬間、派手な音を立てて3人は井戸ごと落ちていった。
しばらくして水音が上がる。
シン、と静まり返った広場は、次の瞬間ハチの巣をつついたような騒ぎになった。
***
「っ……」
ぴちょんと、顔に水滴があたる感覚で少女は目を開けた。うっすらと開けた視界には青白く光る洞窟が映り込んでくる。白いつららのような石がいくつもぶら下がり、そこからまた一滴落ちてきて髪の毛に当たり弾けた。
「うぅ、今度こそ死んだかと思った」
震える声を出しながら上体を起こす。手をついた石は白くなめらかで、その表面を流れる水はゆっくりと流れを作っているようだ。
「だいぶ流されたけど、今どのあたりなんだろう……」
そう呟いて先ほど自分が吐き出されたトンネルを振り仰ぐ。
井戸に落ちた瞬間、溺れるかと覚悟したのだが、表面に張られていた水を通過すると後はもうウォータースライダーのごとく流された。どうやら井戸は見せかけで、この鍾乳洞へ来るための抜け穴になっていたようだ。
流される途中、道がいくつも枝分かれしていてオズワルドとランバールとは途中ではぐれてしまった。彼らも同じようにこの鍾乳洞のどこかに吐き出されているのだろうか。
「もうっ、なんでどこの街もこう変な仕掛けばっかりなのよ」
子供の秘密基地じゃないんだから、と立ち上がったニチカは辺りを見回す。
鍾乳洞はトンネルのようになっていて、高さは自分を縦に4人分重ねたほど、幅は両手を広げて5人分と言ったところだろうか。それが左右にそれぞれ曲がりくねって道が続いている。全体が白い石で出来ているので怖いというよりは神々しい。そして光源はないはずなのに不思議と明るい。
なぜだろうと首を傾げた瞬間、ふわりと綿胞子のような白いものが上から落ちてきて水に溶けた。かすかにそこだけ明るくなったような気がしてだいぶ前の事を思い出す。
ホウェールのマリアが隠れていた洞窟もこんな風に自然の明かりが灯っていなかっただろうか。とすると、この光は自生しているヒカリゴケが出している光なのかもしれない。あの時は緑で今は青っぽい光だが。
「確かに幻想的ではあるけど……」
うっとりと見惚れるには今の状況は不安すぎた。ホウキで飛んでドドドドと流れる水の管を逆走しても良いが、戻ったところで待ち構えているのは魔女協会の連中である。ならこのまま別の道を探した方が良くないだろうか? それに
「水のマナがいっぱい、なんだよねぇ」
目をこらさないでもそこら中を青い蝶が飛び交っているのが感じられる。
もしかすると、もしかするのかもしれない。
(井戸に落ちて正解だったかも。水の精霊さまも探してみよう)
じゃぶじゃぶと緩やかな流れに逆らって上流へと歩き出す。
「寒……」
水に半分身体が浸かっていたのでひんやりとする。いつものようにケープを掻き合わせようとして、宿に置いてきてしまったことを思い出した。
「シャルロッテさん……」
あの時の彼女の表情が忘れられない。バレた後ろめたさというよりは、悪いことをして見つかった子供のように怯えた顔をしていた。
(何か事情があるのかもしれない、脅されてるとか)
また甘っちょろい考えだと笑われるかもしれないが、今回ばかりは迷わなかった。
(あんなに優しい人なんだもの、信じなきゃ!)
そう考えながら自分と同じくらいの大きさの石筍を警戒しながら回り込む。すると、少し開けた場所に出た。
20メートルほどの幅広の川。その中州に転がっている物を見たニチカはぽかんと口を開けて固まった。
「も、もご、むぐ、ぜんぜん、足りないよぉぉ~」
いやまて落ち着け。確かに昼間別れた時からしばらく見ていなかったが、それでもこの短時間でここまで急成長するものだろうか? それともあれか、よく似てはいるがこれはまったくの別個体という可能性も――うん、そうだ。そうに違いない。
「あ、あれぇ? ニチカ? ニチカだあああ!! おーい!!」
「ウルフィーっ!!?」
名前を呼ばれたことにより、疑惑が確信に変わってしまった。
慌ててそちらに駆け寄ると、普段の二十倍ほどに巨大化したオオカミがごろんと転がりこちらに顔を向けた。
「ど、どうしたのそれ……何があったの……」
そう言いたくなるのも仕方のないことだった。何せ今の彼は腹がパンパンにはちきれんばかりに膨らみ破裂寸前の風船のようになっている。ギャグアニメでもなかなかお目にかかれない冗談のような光景である。
よっこらしょ、と転がったウルフィは途方に暮れたようにこちらを見下ろしてきた。影がかかりちょっと怖い。
「なんかねぇぇ、お屋敷で出されたオヤツをねぇぇ、食べた時からぁぁ、お腹が減って減ってしょうがないんだ」
「えっ」
その時、ドサドサと何かが彼の横に落ちて来る。見上げればニチカが落ちてきたのと同じようなダストホールから、大量の魚の死骸が投げ込まれたところだった。
「ごはんんんん!!」
待ってましたと言わんばかりにウルフィがそれをむさぼり始める。その腹にぼんやりと妖しい紫の光が透けたような気がして息を呑む。
「おわーっ!? なにそれウル君!?」
「今度は何をやらかしたんだお前……」
タイミング良くはぐれていた仲間たちも集結する。ニチカは涙目になりながら訴えた。
「どうしよう、ウルフィが魔水晶食べちゃったみたいなのっ!!」
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる