142 / 156
13-決戦
142.少女、擦りあう。
しおりを挟む
「なっ……!!」
それは、その言い方ではまるで――
制止しようとするのだが、その前に抱え込まれ横向きに倒れこむ。苦しくはないが腰と背に回された腕に力強く引き寄せられ、二人の身体は寸分の隙間もなくピタリと合わせられた。
「う……あぅ……」
言葉にならない声が漏れ出る。これだけ密着していたら早鐘を打つ心臓がバレてしまいそうだ。いや確実にバレている。
トクン トクン トクン
これは自分の鼓動だろうか? それ、とも?
「――」
「え……」
知らない言語で何かを囁かれた気がしたが、聞き返す前に診察が始まった。
「!」
身体の内側を何かに擦り上げられているような、体験したことのない感覚が駆け巡る。ぞわぞわとまでは行かないが、まるで全身を羽根で撫でられているかのようなくすぐったさだ。
「あ……あっ……」
ピクッと跳ねたニチカを見たオズワルドは、さらに魔力を送り込み循環させる。
「ね、ねぇっ、これっ、いけない事なんじゃ……ひぁっ!」
「……」
「何か言ってよ! 絶対おかしいって、だって気持ちい――」
涙を散らして訴えたその時、ひと際強い波に浚われる。頭の中が一瞬真っ白になって魂が吹き飛んだかと思った。
「っっっ……!!」
目の前の身体に必死でしがみつき、何とかいなそうとする。
チカチカと頭の中で星が瞬き、逝ってしまったのかと本気で思い込みじわりと涙がせり上がって来る。
だが少女は生きていた。しばらくすると昂揚感は少しずつ収まっていく。
荒い呼吸を整えながら見上げると、少しだけ息を乱した師匠がこちらを見つめていた。
「……」
「……」
「もう一回――」
「ふざけるなぁっ! 不安定だって言ってんのに何わざわざ飛ばすような真似してんのよっ!!」
死んだかと思った、半ばそうキレながら入り込んでくる流れの量を一定量制限すようイメージする。マナ操作の仕方はよく分からなかったがチッと舌打ちが聞こえたところからすると上手く行ったようだ。
「もう無理ホント無理。何だったの今の」
「だからただの診察だって」
「うそ! うそ! 絶対うそ! 明確な悪意を感じたもの!」
悪意ではなく、どちらかと言うと好意から来るものなのだが。
そう言い掛けるが、腕の中でむくれたように見上げてくる少女に黙る。悪くない。
頬を膨らませていたニチカだったが、ポスッと頭を埋めるとくぐもった声でこう言った。
「恋人でもないくせに、こんな真似しないでよ」
「恋人でもないくせに、そうやって抱きつくのは良いのか?」
痛いところを突かれたのか黙り込む。
しばらくすると離れるどころか余計に顔を埋めてきた。
「良くないけど、今夜はこうしないと許さない」
「…………」
またそうやって煽るようなことを。
やめよう、今夜はやめよう。さすがに自分も寝不足で体力が落ちている。
葛藤している内に穏やかな寝息が聞こえて来る。安らかな表情を浮かべるニチカは安心しきっているようだった。
「……何の生殺しだこれ」
そう不満を漏らしつつも、自分にも少しずつ眠りの波が押し寄せて来る。
少女が倒れて以降、まともに睡眠をとっていなかったがようやく熟睡できそうだ。
腕の中の暖かい存在を抱えなおし、オズワルドは心地よい気だるさの中に沈んでいった。
その晩、二人は夢も見ないほどに深く眠った。
ただただ 心地よかった。
***
夜明け前のほの暗い世界。東の空が少しずつ明るくなるにつれて、濃紫色の空が薄まっていく。研究塔のとがった屋根に腰掛けながら、ユーナはそれをぼんやりと見ていた。
しばらくして黒い風が巻き起こり黒竜が姿を現す。彼は器用に塔の先端部分に絡まるよう掴まった。
「やぁヴニおはよう。ついに結婚式だよ、フラワーガールでもやってみるかい?」
ふふっと笑いながらその鼻先を撫でてやる。ヴァドニールは目を細めて小さく鳴いた。
「笑えるよねぇ、僕が花嫁だってさ。想像もしてなかったよ」
この世界に召還され、初めて彼に会った日の事を思い出そうとする。
余りにも遠い記憶だ。思い出すことは出来るがその時なにを感じたかなど覚えていない。
「長く生きすぎたんだ、僕もあいつも」
気の遠くなるような年月を重ね、最終的にたどりついた結末がこれでは笑うしかない。
「ハッピーエンドのその先か。シンデレラも白雪姫も、王子様と末永く幸せに暮らしたって絶対ウソだよね。性格の不一致とかで破綻してるって絶対」
かつてのヒロインが盲目の愛にくらんだ王子を成敗する。ユーナの物語はそんな結末を迎えるはずだ。上手く行けば、だが。
「さてと、うだうだしててもしょうがないっ」
晴れ晴れとした表情のユーナは立ち上がりトンッと屋根を蹴った。ほぼ同時に塔から離れた黒竜が落下していく彼女を空中で受け止める。
高らかに鳴いた竜は少し下の開けた屋上に降り立つ。驚いた顔をしたニチカに向かってユーナは手を差し伸べた。
「行こう! 最終決戦だよ!」
***
つい一週間ほど前に昇った天界目指して、一行は上昇を続けていた。
黒竜ヴァドニールに乗るのは女神ユーナ、ニチカとオズワルドの師弟、ウルフィ、そして四大精霊たち。寄り添うようにホウキで飛んでいるのはシャルロッテとランバールの飛行組。黒竜の定員と自力で空までいけるメンバーを絞った結果、この面子に落ち着いたのだ。
最終決戦を目の前にして、皆は緊張の面持ちに包まれて――
「では、この善き日を祝しまして僭越ながら土の精霊ノックオックがスピーチを」
包まれ……
「ねぇ待って、みんなグラス持った?」
「あのね、あのね、サンドイッチあるんだ~、ウィルさんが持たせてくれたんだよ」
「ノッくん手短に頼むよー、君の話は内容皆無のくせにダラダラ長いんだから」
「そなたあいかわらず箸の持ち方が下手くそだな、ここはこう持って」
「だからそちはわらわのオカンか! ええい離せっ、火が暑苦しいのじゃ!」
……。
「ニチカちゃ~ん、悪いけど串焼き投げてくれない?」
「オレコロコロ焼き! さんきゅーっ」
「何をぼんやりしてる、腹でも痛いのか?」
オズワルドの言葉を横に、すっくと立ち上がったニチカは力の限りツッコミを入れた。
「なに宴会始めとるんじゃああああ!!」
近くを通りかかった鳥がビクッと跳ね、そして落ちていった。
きょとんとした一行を見回して少女はこの状況のおかしさを必死に自覚させようとする。
「おかしくない!? これから最終決戦なのよ!? 宴会を、しかも飛んでる竜の上で始めるとか何事!?」
「宴会違う、決起会」
「そこはどうでもいい!」
ユーナの訂正を一刀両断の元に斬り捨てニチカは頭を抱える。
「なにこれ私がおかしいの!? この世界の人たちはこれが常識なの!? 助けて神さまぁぁ!!」
「その神を今から倒しに行くんだろうが」
「ノぉぉぉ!!」
もしかしたら自分の死因はツッコミ死になるかもしれない。
そんな心配を抱えていると師匠が袖を掴んで座らせた。
「落ち着け、一見そうは見えないかもしれないが、これらは有用な魔女道具ばかりなんだ。まず体力増強用のドーピング剤。食べるだけで疲労が溜まるのを翌日以降に先送りしてくれる」
「重箱に入ったおせちにしか見えない」
「次に精神を安定させる働きのある敷布」
「ピクニック用のレジャーシートかな?」
「竜の角につけた旗には俺の『隠れ玉』の成分を染み込ませてある」
「『大漁』って書いてあるんだけど」
「グラスの中身は全て精神高揚剤」
「お水下さい!」
どう見ても春のお花見会でしかない光景に(桜が舞っていれば完璧だ)ニチカはもう一度叫んだ。
「ビジュアルどうにかならなかったの!? 遊びに行くんじゃないんだからさぁ!」
そういうとオズワルドは奥でエーテルを仰ぎまくる人物をクイッと指した。
「俺に言うな、デザインは全部あっちの女神担当だ」
視線に気がついた女神はブイッと指を二本立てて見せた。
「匠とお呼び!」
「ユーナ様ぁぁぁ!!」
師匠も大概だが、それ以上の絶望的センスだ。
ぷつんと糸が切れたニチカはがっくりと膝を尽く。
そうだ、この人は魔水晶にでかでかと『えっちぃの』とか書く人だった。
ゼェハァと息をつくその肩を叩き、ユーナはケラケラと笑ってこう言った。
「リラックスした?」
意外な言葉に顔をあげ目を見開く。
彼女は知っていたのだろうか、竜で飛び立った時からどうしようもない不安に襲われていた事を。何もかも投げ出して飛び降りたくなった事を。
震える手がホウキに伸びそうになった時、「じゃ、ここらで始めようか」と赤い敷布を広げたのは他でもないこの女神だった。
「君の切り札は精神が安定した状態で一番の効力を発揮する。いつも通りの君でいることを心がけるんだ」
その言葉に腰のポーチを上から押さえる。
「できるかい?」
『器』を奪われたニチカは魔導を発動させることができない。
それをカバーするため、ある魔女道具をオズワルドとユーナの二人掛かりで用意してくれた。
これさえあれば、もしかしたらイニを止められるかもしれない。全ては自分にかかっている。
そのプレッシャーを少しでも和らげようとしてくれたユーナに微笑んでみせる。
「大丈夫です。やってみせます」
やるしかない。器を取り返さなければ。
それは、その言い方ではまるで――
制止しようとするのだが、その前に抱え込まれ横向きに倒れこむ。苦しくはないが腰と背に回された腕に力強く引き寄せられ、二人の身体は寸分の隙間もなくピタリと合わせられた。
「う……あぅ……」
言葉にならない声が漏れ出る。これだけ密着していたら早鐘を打つ心臓がバレてしまいそうだ。いや確実にバレている。
トクン トクン トクン
これは自分の鼓動だろうか? それ、とも?
「――」
「え……」
知らない言語で何かを囁かれた気がしたが、聞き返す前に診察が始まった。
「!」
身体の内側を何かに擦り上げられているような、体験したことのない感覚が駆け巡る。ぞわぞわとまでは行かないが、まるで全身を羽根で撫でられているかのようなくすぐったさだ。
「あ……あっ……」
ピクッと跳ねたニチカを見たオズワルドは、さらに魔力を送り込み循環させる。
「ね、ねぇっ、これっ、いけない事なんじゃ……ひぁっ!」
「……」
「何か言ってよ! 絶対おかしいって、だって気持ちい――」
涙を散らして訴えたその時、ひと際強い波に浚われる。頭の中が一瞬真っ白になって魂が吹き飛んだかと思った。
「っっっ……!!」
目の前の身体に必死でしがみつき、何とかいなそうとする。
チカチカと頭の中で星が瞬き、逝ってしまったのかと本気で思い込みじわりと涙がせり上がって来る。
だが少女は生きていた。しばらくすると昂揚感は少しずつ収まっていく。
荒い呼吸を整えながら見上げると、少しだけ息を乱した師匠がこちらを見つめていた。
「……」
「……」
「もう一回――」
「ふざけるなぁっ! 不安定だって言ってんのに何わざわざ飛ばすような真似してんのよっ!!」
死んだかと思った、半ばそうキレながら入り込んでくる流れの量を一定量制限すようイメージする。マナ操作の仕方はよく分からなかったがチッと舌打ちが聞こえたところからすると上手く行ったようだ。
「もう無理ホント無理。何だったの今の」
「だからただの診察だって」
「うそ! うそ! 絶対うそ! 明確な悪意を感じたもの!」
悪意ではなく、どちらかと言うと好意から来るものなのだが。
そう言い掛けるが、腕の中でむくれたように見上げてくる少女に黙る。悪くない。
頬を膨らませていたニチカだったが、ポスッと頭を埋めるとくぐもった声でこう言った。
「恋人でもないくせに、こんな真似しないでよ」
「恋人でもないくせに、そうやって抱きつくのは良いのか?」
痛いところを突かれたのか黙り込む。
しばらくすると離れるどころか余計に顔を埋めてきた。
「良くないけど、今夜はこうしないと許さない」
「…………」
またそうやって煽るようなことを。
やめよう、今夜はやめよう。さすがに自分も寝不足で体力が落ちている。
葛藤している内に穏やかな寝息が聞こえて来る。安らかな表情を浮かべるニチカは安心しきっているようだった。
「……何の生殺しだこれ」
そう不満を漏らしつつも、自分にも少しずつ眠りの波が押し寄せて来る。
少女が倒れて以降、まともに睡眠をとっていなかったがようやく熟睡できそうだ。
腕の中の暖かい存在を抱えなおし、オズワルドは心地よい気だるさの中に沈んでいった。
その晩、二人は夢も見ないほどに深く眠った。
ただただ 心地よかった。
***
夜明け前のほの暗い世界。東の空が少しずつ明るくなるにつれて、濃紫色の空が薄まっていく。研究塔のとがった屋根に腰掛けながら、ユーナはそれをぼんやりと見ていた。
しばらくして黒い風が巻き起こり黒竜が姿を現す。彼は器用に塔の先端部分に絡まるよう掴まった。
「やぁヴニおはよう。ついに結婚式だよ、フラワーガールでもやってみるかい?」
ふふっと笑いながらその鼻先を撫でてやる。ヴァドニールは目を細めて小さく鳴いた。
「笑えるよねぇ、僕が花嫁だってさ。想像もしてなかったよ」
この世界に召還され、初めて彼に会った日の事を思い出そうとする。
余りにも遠い記憶だ。思い出すことは出来るがその時なにを感じたかなど覚えていない。
「長く生きすぎたんだ、僕もあいつも」
気の遠くなるような年月を重ね、最終的にたどりついた結末がこれでは笑うしかない。
「ハッピーエンドのその先か。シンデレラも白雪姫も、王子様と末永く幸せに暮らしたって絶対ウソだよね。性格の不一致とかで破綻してるって絶対」
かつてのヒロインが盲目の愛にくらんだ王子を成敗する。ユーナの物語はそんな結末を迎えるはずだ。上手く行けば、だが。
「さてと、うだうだしててもしょうがないっ」
晴れ晴れとした表情のユーナは立ち上がりトンッと屋根を蹴った。ほぼ同時に塔から離れた黒竜が落下していく彼女を空中で受け止める。
高らかに鳴いた竜は少し下の開けた屋上に降り立つ。驚いた顔をしたニチカに向かってユーナは手を差し伸べた。
「行こう! 最終決戦だよ!」
***
つい一週間ほど前に昇った天界目指して、一行は上昇を続けていた。
黒竜ヴァドニールに乗るのは女神ユーナ、ニチカとオズワルドの師弟、ウルフィ、そして四大精霊たち。寄り添うようにホウキで飛んでいるのはシャルロッテとランバールの飛行組。黒竜の定員と自力で空までいけるメンバーを絞った結果、この面子に落ち着いたのだ。
最終決戦を目の前にして、皆は緊張の面持ちに包まれて――
「では、この善き日を祝しまして僭越ながら土の精霊ノックオックがスピーチを」
包まれ……
「ねぇ待って、みんなグラス持った?」
「あのね、あのね、サンドイッチあるんだ~、ウィルさんが持たせてくれたんだよ」
「ノッくん手短に頼むよー、君の話は内容皆無のくせにダラダラ長いんだから」
「そなたあいかわらず箸の持ち方が下手くそだな、ここはこう持って」
「だからそちはわらわのオカンか! ええい離せっ、火が暑苦しいのじゃ!」
……。
「ニチカちゃ~ん、悪いけど串焼き投げてくれない?」
「オレコロコロ焼き! さんきゅーっ」
「何をぼんやりしてる、腹でも痛いのか?」
オズワルドの言葉を横に、すっくと立ち上がったニチカは力の限りツッコミを入れた。
「なに宴会始めとるんじゃああああ!!」
近くを通りかかった鳥がビクッと跳ね、そして落ちていった。
きょとんとした一行を見回して少女はこの状況のおかしさを必死に自覚させようとする。
「おかしくない!? これから最終決戦なのよ!? 宴会を、しかも飛んでる竜の上で始めるとか何事!?」
「宴会違う、決起会」
「そこはどうでもいい!」
ユーナの訂正を一刀両断の元に斬り捨てニチカは頭を抱える。
「なにこれ私がおかしいの!? この世界の人たちはこれが常識なの!? 助けて神さまぁぁ!!」
「その神を今から倒しに行くんだろうが」
「ノぉぉぉ!!」
もしかしたら自分の死因はツッコミ死になるかもしれない。
そんな心配を抱えていると師匠が袖を掴んで座らせた。
「落ち着け、一見そうは見えないかもしれないが、これらは有用な魔女道具ばかりなんだ。まず体力増強用のドーピング剤。食べるだけで疲労が溜まるのを翌日以降に先送りしてくれる」
「重箱に入ったおせちにしか見えない」
「次に精神を安定させる働きのある敷布」
「ピクニック用のレジャーシートかな?」
「竜の角につけた旗には俺の『隠れ玉』の成分を染み込ませてある」
「『大漁』って書いてあるんだけど」
「グラスの中身は全て精神高揚剤」
「お水下さい!」
どう見ても春のお花見会でしかない光景に(桜が舞っていれば完璧だ)ニチカはもう一度叫んだ。
「ビジュアルどうにかならなかったの!? 遊びに行くんじゃないんだからさぁ!」
そういうとオズワルドは奥でエーテルを仰ぎまくる人物をクイッと指した。
「俺に言うな、デザインは全部あっちの女神担当だ」
視線に気がついた女神はブイッと指を二本立てて見せた。
「匠とお呼び!」
「ユーナ様ぁぁぁ!!」
師匠も大概だが、それ以上の絶望的センスだ。
ぷつんと糸が切れたニチカはがっくりと膝を尽く。
そうだ、この人は魔水晶にでかでかと『えっちぃの』とか書く人だった。
ゼェハァと息をつくその肩を叩き、ユーナはケラケラと笑ってこう言った。
「リラックスした?」
意外な言葉に顔をあげ目を見開く。
彼女は知っていたのだろうか、竜で飛び立った時からどうしようもない不安に襲われていた事を。何もかも投げ出して飛び降りたくなった事を。
震える手がホウキに伸びそうになった時、「じゃ、ここらで始めようか」と赤い敷布を広げたのは他でもないこの女神だった。
「君の切り札は精神が安定した状態で一番の効力を発揮する。いつも通りの君でいることを心がけるんだ」
その言葉に腰のポーチを上から押さえる。
「できるかい?」
『器』を奪われたニチカは魔導を発動させることができない。
それをカバーするため、ある魔女道具をオズワルドとユーナの二人掛かりで用意してくれた。
これさえあれば、もしかしたらイニを止められるかもしれない。全ては自分にかかっている。
そのプレッシャーを少しでも和らげようとしてくれたユーナに微笑んでみせる。
「大丈夫です。やってみせます」
やるしかない。器を取り返さなければ。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる