145 / 156
終章-ひねくれ師匠と本当の私
145.少女、罵倒する。
しおりを挟む
今日も一日の始まりが訪れる。
数日前、雲の上で死闘が繰り広げられたとも知らずに、地上では平穏な朝を迎えていた。闇のマナ達の横行で精神のバランスを崩していた魔物たちも少しずつ沈静化しているようだ。
世界はゆっくりと正常に戻りつつあった。
「とかだったら良いのになぁぁぁ」
情けない声を上げながらユーナが机に突っ伏す。頼まれていた魔女道具を持ってきたオズワルドはその背後から呆れたように声をかけた。
「何の話だ」
「あっ、黒ちっち! 例のブツは!?」
「ほら、二本目以降は最低でも四時間空けろよ」
「助かルンバー!」
「一本5百な」
「高ェーッ! でも効くから止めらんねぇヒャッハー!!」
小瓶の蓋を小気味よくきゅぽんっと開けたユーナは、付属のストローを突っ込み僅かに水色のついた中の液体を一息にすすり上げる。ごくごくと飲み干し、さながらオヤジのような息を吐く姿は到底女神には見えない。見えてたまるか。
「っぷはー! 染みるー! っしゃ、これであと数時間は頑張れそう!」
シャキッと効果音でも付きそうに姿勢を正した彼女はストローを咥えたまま机の端をトントンと軽く二回叩いた。すぐさま白い平面に世界を上から見下ろしたような風景が現れる。
「ここと、ここと、ここはオッケー。こっちの澱みはさっき風のマナを流し込んだから1時間後にもう一回チェック。っあ゛ー! ここ見落としてた最悪!」
イライラとしながら手元のボードに書き込むと、一瞬光った文字は転送され消えた。バシンとペンを叩きつけてモニターチェックに戻るユーナは口を尖らせ愚痴をこぼした。
「ホント闇のマナをばら撒くとか迷惑極まりないわ! バランス調整するこっちの身にもなれってんだ。マジやったヤツ豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいいのに」
一拍置いた彼女は、ワッと突っ伏した。
「僕だーっ!! 豆腐持ってきてえええ!!」
「これほど自業自得という言葉が似あうケースもないな」
「黒すけ冷たい!!」
あの激闘から数日。ユーナは自分が蒔いた厄介ごとの処理に追われていた。
各地に溜まっている闇のマナを適当に散らし、元の濃度に戻す。口で言えば簡単な作業のように聞こえるが実際は気の遠くなるような作業だ。詳細は省く。
ぐりりと首だけをひねったユーナは、机の傍らに置かれたガラス管を見上げた。
「こっちの身体に戻れば、だいぶラクできるんだけどなー」
その青い光を湛えた液体の中には、静かに目を閉じる女性の身体が浮かんでいた。黒く長い髪が水中でたゆたい、不思議な模様を描いている。
同じようにそれを見上げていたオズワルドは容赦なく言った。
「後悔するなら最初から壊さなければ済む話だろう。後先考えずに感情だけで動くからそうなるんだ」
「うぐ、それ言われるとツラぁ……」
耳が痛いとぼやいた彼女は上体を起こし、さしたる悲壮感もなく続けた。
「まぁ僕だって本来の肉体が良いから、一段落したらゆっくり器の修復方法でも探すさ」
そう呟き胸元にかけた小さなクリスタルを持ち上げる。
「それまでにはコイツも反省してるだろうしね」
微かに煌いたそれを少し遠ざけ、ユーナは顔をしかめた。
「うわ、肌身離さず一緒になれて本望とか言ってる。引くわー」
「意思の疎通ができるのか?」
「僕にだけ通じるみたい。おいイニ、キミだけラクしてずるいぞ。声援とか要らないから……愛の言葉はもっと要らん」
やり取りを見ながらオズワルドはその時の事を思い出していた。
***
「あ……あぁ……」
幸せの弾丸を撃ちこまれたイニは戦意を喪失し、ただ呆然と床に座り込む。
歩み寄ったニチカが転がった器を拾い上げた瞬間、光にほどけ身体に吸収された。
(おかえり)
魂が肉体にしっかりと定着したことを確認した少女は、振り向いて座り込む神に手を差し出した。
「こんな乱暴な方法じゃなくてさ、ユーナ様を元の身体に戻す方法みんなで考えようよ」
ゆるく笑うその優しさが偽善や憐れみではないことをイニは分かっていた。なぜなら撃ち込まれた気持ちが全てを伝えていたから。
あの燃え盛る部屋で死にたいと願った女の子が、ただの材料としか見ていなかった人間が、自分に手を差し伸べている。
「どうして君はそんなに――」
震える指先が触れようとしたその時、視界が右に90度カクンと傾いた。
「え」
そのまま右側頭部に衝撃が伝わる。
状況を理解できない内に、ドウと音をたて首の無い身体が目の前に倒れてきた。
シワ一つ無い白い礼服。見覚えのありすぎる体躯。自分の身体だ。
ヒュッと息を呑むような音が響き、ニチカが青ざめた顔で一歩下がる。
噴水のように噴き出す血が辺りを赤く染めていった。
やがてその池の中をピシャと踏み込みながら誰かがやってくる。
彼女はひょいと自分を――今や首だけになった自分を持ち上げると目の高さまで持ち上げた。
「やっと届いた。まだ意識はあるんだろう? イニ」
ユーナの眼差しはどこまでも穏やかだった。ドクドクと自分から噴き出る血が彼女の腕を赤く染め上げていく。
「僕もキミも長く生きすぎたんだよ。そろそろ引き際だ」
少しずつ視界が白んでいく。
声は出なかった、声帯も息を送り出すための肺も下で転がっている身体の方に置いてきてしまった。
それでもイニは舌を動かした。愛しいその名を呼ぶために。
……ぅナ
ユーな
ゆー ぁ
それを見ていた彼女は少しだけ困ったように微笑んだ。首を抱いて優しく諭すように語りかける。
「大丈夫だよ、僕もすぐに後を追うから」
おやすみイニ。
柔らかい声にまどろむように意識が落ちていく。最愛の人に抱かれたイニを、最後に満たしたのはこれ以上ないほどの幸福感だった。
彼はそっと目を閉じ、生命活動を止めた。
「……」
それを確認したユーナはヒュッと右手を振り上げる。すぐさま闇のエネルギー弾が彼女の頭上に現れた。
「あ……ユーナ様やめて!」
意図を感じ取ったニチカが叫ぶも、彼女は穏やかに微笑み続けていた。
「ほんとキミ達には迷惑をかけたね。悪役はまとめてここで消えるさ」
「そなた何を考えている!」
「思いとどまるんじゃユーナ!」
我に返った精霊達が止めるも、凄まじい重力波は少しずつ降り始めていた。
「大丈夫、キミ達ならやっていけるよ」
少しだけ疲れたような声に辺りは静まり返る。
永き時を生きた女神は、幕を下ろそうとしていた
さぁ、フィナーレだ――
「逃げるんですか?」
だが、静かに突き刺さる声がホールに響く。
ふ、と目を開けたユーナは少女を見た。
戦いでボロボロになったニチカだったが、目だけは恐ろしいほどに澄み切ってこちらを見ていた。あぁ、自分もかつてはこんな目をしていたかもしれないと、思わせるようなまっすぐな瞳だ。
「死んで、何になるんですか。それって何か私たちのプラスになるんですか」
拳をぎゅっと握りこんだ彼女はキレていた。怒りをむりやり抑え込もうとしているが言葉の端々から怒気がにじみ出ている。
「死んで責任を取る? そんなんされたってこっちは一ミリも嬉しくないんですよ。だって死体は働いてくれないから! 闇のマナだって魔物が暴れまわってるのだってまだまだ問題は山積みで……フェイクラヴァーだってそう!」
限界とばかりにフロアに足を叩き付けた少女は、率直な気持ちを叫んだ。
「死んで逃げるな! せめて全部蹴りを付けてから死ねーっ!!」
***
「死ねなんて説得があるかよ」
苦笑いでこぼした感想に、ツンツンとクリスタルを苛めていたユーナが反応する。
「あぁ、ニッちゃんの説得? あれにはビックリした。言われてみればその通りなんだけどさ」
涙ながらに命の大切さを切々と訴えるならわかるが、その後の彼女から飛び出したのは罵詈雑言と苦情の嵐だ。感動もへったくれもない。
「正直、僕も場の雰囲気に酔ってた感はあった。物語りで言うならラストシーンだし、元凶はここで死んどかなきゃ! みたいな」
「小説の読みすぎだ」
あれだけ罵倒されれば消えるわけにもいかなくて――結局、思いとどまったユーナは離れかけていたイニの魂を回収してクリスタルに宿らせた。肌身離さず共に居られて彼は嬉しそうだ。
ここで仰ぐように首を後ろに反らしたユーナはニヤニヤと笑い出した。
「んーふーふー、でもお師匠サマは寂しくなるんじゃない? 可愛い弟子はこれから僕の右腕だもんね~」
数日前、雲の上で死闘が繰り広げられたとも知らずに、地上では平穏な朝を迎えていた。闇のマナ達の横行で精神のバランスを崩していた魔物たちも少しずつ沈静化しているようだ。
世界はゆっくりと正常に戻りつつあった。
「とかだったら良いのになぁぁぁ」
情けない声を上げながらユーナが机に突っ伏す。頼まれていた魔女道具を持ってきたオズワルドはその背後から呆れたように声をかけた。
「何の話だ」
「あっ、黒ちっち! 例のブツは!?」
「ほら、二本目以降は最低でも四時間空けろよ」
「助かルンバー!」
「一本5百な」
「高ェーッ! でも効くから止めらんねぇヒャッハー!!」
小瓶の蓋を小気味よくきゅぽんっと開けたユーナは、付属のストローを突っ込み僅かに水色のついた中の液体を一息にすすり上げる。ごくごくと飲み干し、さながらオヤジのような息を吐く姿は到底女神には見えない。見えてたまるか。
「っぷはー! 染みるー! っしゃ、これであと数時間は頑張れそう!」
シャキッと効果音でも付きそうに姿勢を正した彼女はストローを咥えたまま机の端をトントンと軽く二回叩いた。すぐさま白い平面に世界を上から見下ろしたような風景が現れる。
「ここと、ここと、ここはオッケー。こっちの澱みはさっき風のマナを流し込んだから1時間後にもう一回チェック。っあ゛ー! ここ見落としてた最悪!」
イライラとしながら手元のボードに書き込むと、一瞬光った文字は転送され消えた。バシンとペンを叩きつけてモニターチェックに戻るユーナは口を尖らせ愚痴をこぼした。
「ホント闇のマナをばら撒くとか迷惑極まりないわ! バランス調整するこっちの身にもなれってんだ。マジやったヤツ豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいいのに」
一拍置いた彼女は、ワッと突っ伏した。
「僕だーっ!! 豆腐持ってきてえええ!!」
「これほど自業自得という言葉が似あうケースもないな」
「黒すけ冷たい!!」
あの激闘から数日。ユーナは自分が蒔いた厄介ごとの処理に追われていた。
各地に溜まっている闇のマナを適当に散らし、元の濃度に戻す。口で言えば簡単な作業のように聞こえるが実際は気の遠くなるような作業だ。詳細は省く。
ぐりりと首だけをひねったユーナは、机の傍らに置かれたガラス管を見上げた。
「こっちの身体に戻れば、だいぶラクできるんだけどなー」
その青い光を湛えた液体の中には、静かに目を閉じる女性の身体が浮かんでいた。黒く長い髪が水中でたゆたい、不思議な模様を描いている。
同じようにそれを見上げていたオズワルドは容赦なく言った。
「後悔するなら最初から壊さなければ済む話だろう。後先考えずに感情だけで動くからそうなるんだ」
「うぐ、それ言われるとツラぁ……」
耳が痛いとぼやいた彼女は上体を起こし、さしたる悲壮感もなく続けた。
「まぁ僕だって本来の肉体が良いから、一段落したらゆっくり器の修復方法でも探すさ」
そう呟き胸元にかけた小さなクリスタルを持ち上げる。
「それまでにはコイツも反省してるだろうしね」
微かに煌いたそれを少し遠ざけ、ユーナは顔をしかめた。
「うわ、肌身離さず一緒になれて本望とか言ってる。引くわー」
「意思の疎通ができるのか?」
「僕にだけ通じるみたい。おいイニ、キミだけラクしてずるいぞ。声援とか要らないから……愛の言葉はもっと要らん」
やり取りを見ながらオズワルドはその時の事を思い出していた。
***
「あ……あぁ……」
幸せの弾丸を撃ちこまれたイニは戦意を喪失し、ただ呆然と床に座り込む。
歩み寄ったニチカが転がった器を拾い上げた瞬間、光にほどけ身体に吸収された。
(おかえり)
魂が肉体にしっかりと定着したことを確認した少女は、振り向いて座り込む神に手を差し出した。
「こんな乱暴な方法じゃなくてさ、ユーナ様を元の身体に戻す方法みんなで考えようよ」
ゆるく笑うその優しさが偽善や憐れみではないことをイニは分かっていた。なぜなら撃ち込まれた気持ちが全てを伝えていたから。
あの燃え盛る部屋で死にたいと願った女の子が、ただの材料としか見ていなかった人間が、自分に手を差し伸べている。
「どうして君はそんなに――」
震える指先が触れようとしたその時、視界が右に90度カクンと傾いた。
「え」
そのまま右側頭部に衝撃が伝わる。
状況を理解できない内に、ドウと音をたて首の無い身体が目の前に倒れてきた。
シワ一つ無い白い礼服。見覚えのありすぎる体躯。自分の身体だ。
ヒュッと息を呑むような音が響き、ニチカが青ざめた顔で一歩下がる。
噴水のように噴き出す血が辺りを赤く染めていった。
やがてその池の中をピシャと踏み込みながら誰かがやってくる。
彼女はひょいと自分を――今や首だけになった自分を持ち上げると目の高さまで持ち上げた。
「やっと届いた。まだ意識はあるんだろう? イニ」
ユーナの眼差しはどこまでも穏やかだった。ドクドクと自分から噴き出る血が彼女の腕を赤く染め上げていく。
「僕もキミも長く生きすぎたんだよ。そろそろ引き際だ」
少しずつ視界が白んでいく。
声は出なかった、声帯も息を送り出すための肺も下で転がっている身体の方に置いてきてしまった。
それでもイニは舌を動かした。愛しいその名を呼ぶために。
……ぅナ
ユーな
ゆー ぁ
それを見ていた彼女は少しだけ困ったように微笑んだ。首を抱いて優しく諭すように語りかける。
「大丈夫だよ、僕もすぐに後を追うから」
おやすみイニ。
柔らかい声にまどろむように意識が落ちていく。最愛の人に抱かれたイニを、最後に満たしたのはこれ以上ないほどの幸福感だった。
彼はそっと目を閉じ、生命活動を止めた。
「……」
それを確認したユーナはヒュッと右手を振り上げる。すぐさま闇のエネルギー弾が彼女の頭上に現れた。
「あ……ユーナ様やめて!」
意図を感じ取ったニチカが叫ぶも、彼女は穏やかに微笑み続けていた。
「ほんとキミ達には迷惑をかけたね。悪役はまとめてここで消えるさ」
「そなた何を考えている!」
「思いとどまるんじゃユーナ!」
我に返った精霊達が止めるも、凄まじい重力波は少しずつ降り始めていた。
「大丈夫、キミ達ならやっていけるよ」
少しだけ疲れたような声に辺りは静まり返る。
永き時を生きた女神は、幕を下ろそうとしていた
さぁ、フィナーレだ――
「逃げるんですか?」
だが、静かに突き刺さる声がホールに響く。
ふ、と目を開けたユーナは少女を見た。
戦いでボロボロになったニチカだったが、目だけは恐ろしいほどに澄み切ってこちらを見ていた。あぁ、自分もかつてはこんな目をしていたかもしれないと、思わせるようなまっすぐな瞳だ。
「死んで、何になるんですか。それって何か私たちのプラスになるんですか」
拳をぎゅっと握りこんだ彼女はキレていた。怒りをむりやり抑え込もうとしているが言葉の端々から怒気がにじみ出ている。
「死んで責任を取る? そんなんされたってこっちは一ミリも嬉しくないんですよ。だって死体は働いてくれないから! 闇のマナだって魔物が暴れまわってるのだってまだまだ問題は山積みで……フェイクラヴァーだってそう!」
限界とばかりにフロアに足を叩き付けた少女は、率直な気持ちを叫んだ。
「死んで逃げるな! せめて全部蹴りを付けてから死ねーっ!!」
***
「死ねなんて説得があるかよ」
苦笑いでこぼした感想に、ツンツンとクリスタルを苛めていたユーナが反応する。
「あぁ、ニッちゃんの説得? あれにはビックリした。言われてみればその通りなんだけどさ」
涙ながらに命の大切さを切々と訴えるならわかるが、その後の彼女から飛び出したのは罵詈雑言と苦情の嵐だ。感動もへったくれもない。
「正直、僕も場の雰囲気に酔ってた感はあった。物語りで言うならラストシーンだし、元凶はここで死んどかなきゃ! みたいな」
「小説の読みすぎだ」
あれだけ罵倒されれば消えるわけにもいかなくて――結局、思いとどまったユーナは離れかけていたイニの魂を回収してクリスタルに宿らせた。肌身離さず共に居られて彼は嬉しそうだ。
ここで仰ぐように首を後ろに反らしたユーナはニヤニヤと笑い出した。
「んーふーふー、でもお師匠サマは寂しくなるんじゃない? 可愛い弟子はこれから僕の右腕だもんね~」
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる