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EX-延長戦
とある姉によるえげつない所業-前編-
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ランバール少年のここ最近の関心は、もっぱらとある姉弟《きょうだい》に向けられていた。
輝く金の髪が美しい姉と、青い瞳が印象的な黒髪の弟が、編入という形でここエルミナージュ魔法学校に入学してきたのはつい数カ月前の事だった。
二人は顔の造りは似ては居ないものの、どちらも違ったタイプの美形でとにかく人目を惹く。彼らの事はランバールに限らず全校生徒が注目していた。
姉の方は明るく朗らかで、入ってきたその日に半数の生徒に名前が知れ渡るくらいに社交的だった。魔女科に所属している割には製作が苦手らしいが、飛行術にズバ抜けた才能を持っており、飛行レース部の部長が土下座して入部を頼んだとの噂がまことしやかに流れていた。
その弟である少年。どちらかと言うとランバールはこちらに強い関心があった。その関心はあまりよくない意味でだったが。姉とは反対にもの静かな少年は、ランバールから言わせてもらうとひたすらに暗かった。友達を作るつもりなど毛頭ないのか、その視線はほとんど本に向けられている。
ここからが謎で仕方ないのだが、彼は恐ろしく女子生徒に人気があった。ミステリアスなのがたまらないとか、クールでカッコいいだとか
確かに美形なのは認めるがそこまで騒ぐことだろうか? いや、気になっていた女子がその追っかけ集団に混ざっているのを見たからとかそういう理由ではない、ないのだ。
なのに好意の視線を向けられている本人は彼女たちをとことん無視している。それがまた腹が立つ。
まだまだある。彼は魔女道具作りの才能を恐ろしいほどに秘めているらしく、入学後すぐに飛び級をしてしまったのだ。数年前に風の精霊シルミアに放り込まれた自分をさっさと追い越し、今や上級生に混じって講義を受けている。
校長の直弟子になった事もムカつく。
自分より少しだけ背が高いところも輪にかけてムカつく。
あぁもう、まったくいけ好かない男だ。
だからちょっかいをかけることにした。何せ彼と姉の経歴には謎が多い。これは何かあると、ランバールは直感的に感じ取っていたのだ。
「セ・ン・パ・イ」
ザッと、廊下を通りかかったところで目の前に飛び降りてやる。一瞬驚いたような顔で足を止めた少年――オズワルドはハァとため息をついて横をすり抜けた。
「おっと、つれないなァ。ねーねーどこ行くんッスかぁ? オレも連れてって下さいよー」
その後ろを付いていきながら軽く話し掛ける。それでもオズワルドは振り向かない。ランバールは頭の後ろで手を組みながら、さてどの方面から探り出してやろうかと考える。
「もうすぐ夏の休暇じゃないッスかぁ~、センパイはお姉さんつれて実家に帰省とかしないんスか?」
彼の魔力はどこかひやりとするような清涼感のある匂いだ。加えてこの地方ではそうそう見ない青い瞳に抜けるような白い肌。水のマナに好かれているところを見ると――
「それとも帰れないほど遠方だったり? オレ南方育ちなんで雪とか見たこと無いんスよねぇ~、連れてってくれたりしません? 北の方」
カマを掛けるような言葉にようやく彼は振り向く。射抜かれてしまいそうな鋭い視線をこちらに寄越したかと思うとスゥッとその姿が掻き消えた。
「おわ、魔女道具? すっげー、さすが飛び級するだけの事はあるッスねー」
おそらくまだその辺りには居るであろう彼にわざと聞こえるよう、ランバールはニヤリと笑いながら言った。
「アンタのその悲劇きどりの面《ツラ》がムカつくんだよ、取り繕った皮を剥いでやるから覚悟しとけ」
***
背後のソファから重たいため息が響く。
机に向かって作業をしていたシャルロッテは、のけぞるようにそちらを振り返った。視線の先ではオズワルドが頭を抱えてうめき声をあげている。
「やぁぁもう、せっかくの姉弟水入らずの憩いの時間なのに、そんな空気が澱むようなため息やめてくんない?」
「憩いの時間に、なんで補習の課題やってるんだ」
至極真っ当な意見に、シャルロッテは解き掛けの問題集を宙にバサァッと投げ出した。
「しょーがないじゃないっ、全然わかんないわよこんなの~」
「……【問1】途中式違う。【問3】魔法陣にラクガキをするな。他はせめて解く努力をしろ」
「うぁーん」
へろへろと突っ伏した彼女は首だけを器用にこちらに向けると、で?と問いかけた。
「何をため息なんかついちゃってるわけ?」
「……」
床に落ちた課題を拾い上げたオズワルドは、解答欄を片手間に埋めながらぼそりと呟いた。
「……講義は楽しい。でも周りがうるさい、うざいヤツが居る」
「ははーん、周囲になじめず孤立してるわけだ」
座したまま椅子を持ち上げたシャルロッテは180度向きを変える。その言葉に眉を寄せた弟は羽ペンの動きを止めた。
「ヘイトを集めるのは分かってたけどここまでとは思わなかった、俺はアンタみたいに馬鹿を演じるとか出来ないし」
「ちょっと失礼ね、私が馬鹿なのは本当よ! 演技でやるわけないでしょっ」
どのポイントを怒っているんだ、自信満々に馬鹿宣言をしないでくれ。そう言い掛けるが、彼女がこんな苦労をするはめになった原因が自分にある事を思い出し俯く。
「なら魔導師科に入ればよかったじゃないか。あんたはそっちの方が適正あっただろうに、わざわざ俺に合わせて魔女科に入らなくても……」
「もうっ、それについては散々話し合ったでしょ。これからは二人助け合って生きて行くのよ、できるだけ近くに居たほうが良いじゃない」
「……」
まただ、また負い目が増えていく。
しばらくの沈黙の後、弟はどうしても分からないことを尋ねてみた。
「シャルロッテ」
「あら、名前呼んでくれるなんて珍しい」
「……アンタはもう『シャルロッテ』なんだろ? なら俺とはもう赤の他人だ。自由に生きて良いのに、どうして」
最後まで言い切ることが出来ずに、オズワルドの言葉尻が消えていく。
それを困ったように笑いながら見ていた姉は、立ち上がると彼の横に勢いよく腰掛けた。その頬を突っつきながら肩にもたれかかる。
「やーんオズちゃん優しーんだからぁ。心配しなくってもこれは私の意思でやってることよ。だからそんなに卑屈にならないで~、ねぇねぇ」
「やめろ、触るな、うざい」
うっとおしそうに振り払われ、シャルロッテは柔らかく微笑んだ。
「片割れに頼まれたんだもの。いつかあなたを支えてくれる人が現れて、そしてオズちゃんもその人を大切に思えるまで、お姉ちゃんは側に居るからね」
彼女の脳裏につい数ヶ月前の記憶が蘇える。
忌み子と嫌われ、腫れ物のように扱われていた少年を自分も遠巻きに見ていた。あまつさえ残酷な言葉を吐いたことさえある。
だが彼と生家を脱し接していく内に分かったのは、彼がどこにでも居るごく普通の少年だということだった。
とても繊細で傷つきやすい心を、棘のある態度で隠しているだけの少年だ。
「……なんだよそれ、意味が分からない」
困惑したかのような顔を見ていた姉は、雰囲気を変えるかのように再び突っつき始めた。
「あれだけモテるんだから彼女の一人でも作りなさいよー、そしたらちょっとは世界も変わるわよ」
うぇ、と顔を歪ませたオズワルドは姉を引き剥がしながら言った。
「あの、見てくれだけに騙されてるヤツらを? 冗談じゃない、俺の本性がどんなだかも知らないくせに」
そこでふっと瞳を陰らせた少年は、まるで自分に言い聞かせるかのように呟いた。
「人なんか好きにならない。俺にはそんな資格もない、俺がリッカにした事を知ったら逃げていくに決まってる」
本当の俺を好きになってくれるヤツなんか現れるはずないだろ。と、小さく続けられた言葉にシャルロッテは目を瞬いた。
(こりゃあ重傷ね……)
こればかりは時間が解決してくれるのを祈るしかないだろう。これ以上この場で傷口を広げる必要はない。
「まぁいいわ、ところでウザいヤツって?」
「魔導師科の緑の男」
「あぁ、あの子有名よね。風の精霊シルミアの秘蔵っ子なんだって」
シャルロッテはいつだったか校舎内ですれ違ったことを思い出す。
彼は一瞬目が合うと動きを止め、ニッとこちらに笑みを浮かべるとそのまま行ってしまったのだ。その瞳の奥にある冷酷さと言うか、観察されているかのような不快感があったのを覚えている。
「やたらと絡んで挑発してくる。俺たちの周囲を探ってるみたいだ」
「それまずいわね、実家の事とかバレたら色々面倒よ」
そうでなくても入学許可証を偽造して不正入学しているのだ。尻尾を掴ませるわけにはいかない。
うーんと考えていたシャルロッテは、パッと目を開けるとさも名案が浮かんだとばかりに瞳を輝かせた。
「わかったわ! ここはお姉ちゃんに一つドーンと任せなさいな!」
「……?」
オズワルドはその意図が読めなかったが、特に反対するようなことはしなかった。
自分にも被害が降りかかる事など、この時点ではまったく予想だにしていなかったのだ。
輝く金の髪が美しい姉と、青い瞳が印象的な黒髪の弟が、編入という形でここエルミナージュ魔法学校に入学してきたのはつい数カ月前の事だった。
二人は顔の造りは似ては居ないものの、どちらも違ったタイプの美形でとにかく人目を惹く。彼らの事はランバールに限らず全校生徒が注目していた。
姉の方は明るく朗らかで、入ってきたその日に半数の生徒に名前が知れ渡るくらいに社交的だった。魔女科に所属している割には製作が苦手らしいが、飛行術にズバ抜けた才能を持っており、飛行レース部の部長が土下座して入部を頼んだとの噂がまことしやかに流れていた。
その弟である少年。どちらかと言うとランバールはこちらに強い関心があった。その関心はあまりよくない意味でだったが。姉とは反対にもの静かな少年は、ランバールから言わせてもらうとひたすらに暗かった。友達を作るつもりなど毛頭ないのか、その視線はほとんど本に向けられている。
ここからが謎で仕方ないのだが、彼は恐ろしく女子生徒に人気があった。ミステリアスなのがたまらないとか、クールでカッコいいだとか
確かに美形なのは認めるがそこまで騒ぐことだろうか? いや、気になっていた女子がその追っかけ集団に混ざっているのを見たからとかそういう理由ではない、ないのだ。
なのに好意の視線を向けられている本人は彼女たちをとことん無視している。それがまた腹が立つ。
まだまだある。彼は魔女道具作りの才能を恐ろしいほどに秘めているらしく、入学後すぐに飛び級をしてしまったのだ。数年前に風の精霊シルミアに放り込まれた自分をさっさと追い越し、今や上級生に混じって講義を受けている。
校長の直弟子になった事もムカつく。
自分より少しだけ背が高いところも輪にかけてムカつく。
あぁもう、まったくいけ好かない男だ。
だからちょっかいをかけることにした。何せ彼と姉の経歴には謎が多い。これは何かあると、ランバールは直感的に感じ取っていたのだ。
「セ・ン・パ・イ」
ザッと、廊下を通りかかったところで目の前に飛び降りてやる。一瞬驚いたような顔で足を止めた少年――オズワルドはハァとため息をついて横をすり抜けた。
「おっと、つれないなァ。ねーねーどこ行くんッスかぁ? オレも連れてって下さいよー」
その後ろを付いていきながら軽く話し掛ける。それでもオズワルドは振り向かない。ランバールは頭の後ろで手を組みながら、さてどの方面から探り出してやろうかと考える。
「もうすぐ夏の休暇じゃないッスかぁ~、センパイはお姉さんつれて実家に帰省とかしないんスか?」
彼の魔力はどこかひやりとするような清涼感のある匂いだ。加えてこの地方ではそうそう見ない青い瞳に抜けるような白い肌。水のマナに好かれているところを見ると――
「それとも帰れないほど遠方だったり? オレ南方育ちなんで雪とか見たこと無いんスよねぇ~、連れてってくれたりしません? 北の方」
カマを掛けるような言葉にようやく彼は振り向く。射抜かれてしまいそうな鋭い視線をこちらに寄越したかと思うとスゥッとその姿が掻き消えた。
「おわ、魔女道具? すっげー、さすが飛び級するだけの事はあるッスねー」
おそらくまだその辺りには居るであろう彼にわざと聞こえるよう、ランバールはニヤリと笑いながら言った。
「アンタのその悲劇きどりの面《ツラ》がムカつくんだよ、取り繕った皮を剥いでやるから覚悟しとけ」
***
背後のソファから重たいため息が響く。
机に向かって作業をしていたシャルロッテは、のけぞるようにそちらを振り返った。視線の先ではオズワルドが頭を抱えてうめき声をあげている。
「やぁぁもう、せっかくの姉弟水入らずの憩いの時間なのに、そんな空気が澱むようなため息やめてくんない?」
「憩いの時間に、なんで補習の課題やってるんだ」
至極真っ当な意見に、シャルロッテは解き掛けの問題集を宙にバサァッと投げ出した。
「しょーがないじゃないっ、全然わかんないわよこんなの~」
「……【問1】途中式違う。【問3】魔法陣にラクガキをするな。他はせめて解く努力をしろ」
「うぁーん」
へろへろと突っ伏した彼女は首だけを器用にこちらに向けると、で?と問いかけた。
「何をため息なんかついちゃってるわけ?」
「……」
床に落ちた課題を拾い上げたオズワルドは、解答欄を片手間に埋めながらぼそりと呟いた。
「……講義は楽しい。でも周りがうるさい、うざいヤツが居る」
「ははーん、周囲になじめず孤立してるわけだ」
座したまま椅子を持ち上げたシャルロッテは180度向きを変える。その言葉に眉を寄せた弟は羽ペンの動きを止めた。
「ヘイトを集めるのは分かってたけどここまでとは思わなかった、俺はアンタみたいに馬鹿を演じるとか出来ないし」
「ちょっと失礼ね、私が馬鹿なのは本当よ! 演技でやるわけないでしょっ」
どのポイントを怒っているんだ、自信満々に馬鹿宣言をしないでくれ。そう言い掛けるが、彼女がこんな苦労をするはめになった原因が自分にある事を思い出し俯く。
「なら魔導師科に入ればよかったじゃないか。あんたはそっちの方が適正あっただろうに、わざわざ俺に合わせて魔女科に入らなくても……」
「もうっ、それについては散々話し合ったでしょ。これからは二人助け合って生きて行くのよ、できるだけ近くに居たほうが良いじゃない」
「……」
まただ、また負い目が増えていく。
しばらくの沈黙の後、弟はどうしても分からないことを尋ねてみた。
「シャルロッテ」
「あら、名前呼んでくれるなんて珍しい」
「……アンタはもう『シャルロッテ』なんだろ? なら俺とはもう赤の他人だ。自由に生きて良いのに、どうして」
最後まで言い切ることが出来ずに、オズワルドの言葉尻が消えていく。
それを困ったように笑いながら見ていた姉は、立ち上がると彼の横に勢いよく腰掛けた。その頬を突っつきながら肩にもたれかかる。
「やーんオズちゃん優しーんだからぁ。心配しなくってもこれは私の意思でやってることよ。だからそんなに卑屈にならないで~、ねぇねぇ」
「やめろ、触るな、うざい」
うっとおしそうに振り払われ、シャルロッテは柔らかく微笑んだ。
「片割れに頼まれたんだもの。いつかあなたを支えてくれる人が現れて、そしてオズちゃんもその人を大切に思えるまで、お姉ちゃんは側に居るからね」
彼女の脳裏につい数ヶ月前の記憶が蘇える。
忌み子と嫌われ、腫れ物のように扱われていた少年を自分も遠巻きに見ていた。あまつさえ残酷な言葉を吐いたことさえある。
だが彼と生家を脱し接していく内に分かったのは、彼がどこにでも居るごく普通の少年だということだった。
とても繊細で傷つきやすい心を、棘のある態度で隠しているだけの少年だ。
「……なんだよそれ、意味が分からない」
困惑したかのような顔を見ていた姉は、雰囲気を変えるかのように再び突っつき始めた。
「あれだけモテるんだから彼女の一人でも作りなさいよー、そしたらちょっとは世界も変わるわよ」
うぇ、と顔を歪ませたオズワルドは姉を引き剥がしながら言った。
「あの、見てくれだけに騙されてるヤツらを? 冗談じゃない、俺の本性がどんなだかも知らないくせに」
そこでふっと瞳を陰らせた少年は、まるで自分に言い聞かせるかのように呟いた。
「人なんか好きにならない。俺にはそんな資格もない、俺がリッカにした事を知ったら逃げていくに決まってる」
本当の俺を好きになってくれるヤツなんか現れるはずないだろ。と、小さく続けられた言葉にシャルロッテは目を瞬いた。
(こりゃあ重傷ね……)
こればかりは時間が解決してくれるのを祈るしかないだろう。これ以上この場で傷口を広げる必要はない。
「まぁいいわ、ところでウザいヤツって?」
「魔導師科の緑の男」
「あぁ、あの子有名よね。風の精霊シルミアの秘蔵っ子なんだって」
シャルロッテはいつだったか校舎内ですれ違ったことを思い出す。
彼は一瞬目が合うと動きを止め、ニッとこちらに笑みを浮かべるとそのまま行ってしまったのだ。その瞳の奥にある冷酷さと言うか、観察されているかのような不快感があったのを覚えている。
「やたらと絡んで挑発してくる。俺たちの周囲を探ってるみたいだ」
「それまずいわね、実家の事とかバレたら色々面倒よ」
そうでなくても入学許可証を偽造して不正入学しているのだ。尻尾を掴ませるわけにはいかない。
うーんと考えていたシャルロッテは、パッと目を開けるとさも名案が浮かんだとばかりに瞳を輝かせた。
「わかったわ! ここはお姉ちゃんに一つドーンと任せなさいな!」
「……?」
オズワルドはその意図が読めなかったが、特に反対するようなことはしなかった。
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