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64.右手が恋人
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※下ネタ注意
+++
手首ちゃんを檻の中に設置し、私たち三人は近くの茂みに隠れて待機する。のだけど、私はふてくされて少しだけ離れた位置に居た。
「どうしたの、あきら」
「どーせ私は、魅力的じゃないですしぃぃ」
ぶーたれて口をとがらせていると、ルカが意に介した様子もなく(おぉい!!)捕獲作戦を進めていく。
「罠の設置は完了しましたが、ここからどうするんです? 通りかかるのを待つ間、主様をいじり続けます?」
「ヒマ潰しに上司を使わないで頂きたい」
真顔でツッコミを入れると、グリはそれなら心配ないよと立ち上がる。両手をメガホンの形にしたかと思うと、空に向かってやや棒読みで声を張り上げた。
「あー、こんなところにヘンな物がー」
反響する物もないので、声はそのまま宵闇の中に吸い込まれていった。しばらく待つも特に反応はなく、キラキラと輝く星たちが瞬く夜空をしばらく三人で見上げる。
……で? と、聞こうとしたところで私はそれに気づいた。いつの間に来たのか檻の中に巨大なリュックサックを背負った人物が入り込んでいる。見覚えのありすぎる背中はしゃがんで手首ちゃんを見分しているようだ。
(き、来た!)
(主様、そっちの紐をお願いします。同時に引きますよ、せーのっ)
ルカとタイミングを合わせてつっかえ棒と繋がっている紐を引き抜くと、ガシャーン!と重たい音を立てて檻が落ちた。やった!捕まえた!
「……」
ところが確保されてしまったというのに、ペロは意に介した様子もなく相変わらず手首ちゃんを掴んでじっと見続けている。あ……れ?
不審に思って耳をすますと、微かにあえぐような声が聞こえてきた。
「ハァハァハァハァ……嘘だロ、この世界にこんナ素晴らしい生き物が居たナんて、こんナ、こんナ……!」
興奮した様子の死神は、荒い息のままこちらに背を向けゴソゴソと前かがみになり下穿きを下ろ――はっ!?
(ちょ、ちょっと、あれ何してるの!?)
(何って、『ナニ』じゃないですか?)
平然と答えたバンパイアの言葉にクラリとする。いや、だって、手(単体)に性的興奮って、レベル高すぎ……
ここで我に返った私は、引き付けを起こしたように痙攣している専属メイドを視界に捕らえる。掴まれた彼女はそのままペロの下半身へと導かれ消えていった。
「ぎゃぁぁぁー!! 手首ちゃーん!!!」
それから数分後、間一髪(?)救出に成功した手首ちゃんは地面に倒れぐったりとしていた。ありがとう手首ちゃん、おつかれ手首ちゃん、後でお風呂入ってしっかり洗おうね。……でもごめん、正直いまのキミには触りたくないわ。
そしてペロはと言うと、荒縄で縛られ転がされた状態でもなお、手首ちゃんに熱い視線を送り続けていた。長い前髪で目は見えないけど何となく雰囲気でわかる。庇うように間に立っている私にその視線が突き刺さる。痛い。
「あああ~キミは僕の女神ダ!天使ダ! お願いだヨ、姿をよく見せてオくれ」
狂おしいほど切ない声で懇願するのだけど、その女神で××しようとした人なんかにうちの手首ちゃんはやれません。しっしっ
腰に手をあて仁王立ちした私は、先ほどからガン無視されていることも相まって強い声で呼びかける。
「ちょっと、求愛する前に私に何か言うことあるんじゃない?」
そこで初めてこちらの存在に気が付いたのか、ほっそりとした顎を地面から浮かせたペロは少しだけ首を傾げたあと「あ」と声を漏らした。
「マオちゃんダ」
「そう、あなたに悪徳商品売りつけられたマオちゃん、もといハーツイーズ国の魔王あきらです。こんばんは」
へ?と間抜けな声を漏らすその背中に、ドカッと足が置かれて踏みつけられる。荒縄の端を持ったグリはいつもの平坦な声で久しぶりの再会を喜ばなかった。
「出来れば会いたくなかったけど、久しぶり~」
「あだだだダ! 痛い痛い痛イっ、あっ、あっ、でもちょっとだけ気持ちい――ぐェッ」
うわぁ、本格的にヘンタイだぁ。
最後まで言わせず、死神様が頭を踏んづけて乗り越える。だからコイツは嫌なんだと小さく零した後、その目の前にしゃがんで小さく手を振った。
「なに、こっちじゃペロとか名乗ってるの? ¶Λォζ」
「Ёщ∞゛!」
聞き取れない発音に目を丸くしていると、気配に気づいたのかグリが首だけ振り向いて「俺の本名」と教えてくれた。
「死神の言語って、こっちの人の声帯じゃ発音できないから」
そうだったんだ。確かにグリム・リーパーで「グリ」っていうのは安直すぎるとは思ってたけど。あ、だからペロは片言なのか。こっちの言語を喋り慣れていないってわけね。
「まぁ便宜上、ここではペロで通しますよ。さてペロさん、こうなった以上素直に白状した方が身の為ですよ」
ここでそれまで黙っていた吸血鬼が、さながら尋問員のように冷徹な笑みを浮かべて彼の締め付けをきつくする。前々から思ってたんだけど、誰かを痛めつける時のルカほど生き生きしてる物はないよね……黒い官帽とか制服とか鞭とか持たせたら似合いそう。
(ちなみに言うと、現在ペロは見事な亀甲縛りをされている。手際よく縛り上げたのは他でもないこのドSの側近さんである……怖くてつっこめないけど、あのテクが私に向けられないことを祈るばかり)
「さて、我が国に悪徳商品を売りつけてくれた落とし前はどう着けて貰いましょうか」
どこかアブノーマルな雰囲気が漂う中、キッと顔を上げたペロは怒ったように言い放った。
「ちょっと待ってヨ! 悪徳商品とは聞き捨てならないネ! マオちゃんとは誠実な取り引きをしたつもりだヨ!!」
+++
てっ、手首でででで
あばっ あばばばばば
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手首ちゃんを檻の中に設置し、私たち三人は近くの茂みに隠れて待機する。のだけど、私はふてくされて少しだけ離れた位置に居た。
「どうしたの、あきら」
「どーせ私は、魅力的じゃないですしぃぃ」
ぶーたれて口をとがらせていると、ルカが意に介した様子もなく(おぉい!!)捕獲作戦を進めていく。
「罠の設置は完了しましたが、ここからどうするんです? 通りかかるのを待つ間、主様をいじり続けます?」
「ヒマ潰しに上司を使わないで頂きたい」
真顔でツッコミを入れると、グリはそれなら心配ないよと立ち上がる。両手をメガホンの形にしたかと思うと、空に向かってやや棒読みで声を張り上げた。
「あー、こんなところにヘンな物がー」
反響する物もないので、声はそのまま宵闇の中に吸い込まれていった。しばらく待つも特に反応はなく、キラキラと輝く星たちが瞬く夜空をしばらく三人で見上げる。
……で? と、聞こうとしたところで私はそれに気づいた。いつの間に来たのか檻の中に巨大なリュックサックを背負った人物が入り込んでいる。見覚えのありすぎる背中はしゃがんで手首ちゃんを見分しているようだ。
(き、来た!)
(主様、そっちの紐をお願いします。同時に引きますよ、せーのっ)
ルカとタイミングを合わせてつっかえ棒と繋がっている紐を引き抜くと、ガシャーン!と重たい音を立てて檻が落ちた。やった!捕まえた!
「……」
ところが確保されてしまったというのに、ペロは意に介した様子もなく相変わらず手首ちゃんを掴んでじっと見続けている。あ……れ?
不審に思って耳をすますと、微かにあえぐような声が聞こえてきた。
「ハァハァハァハァ……嘘だロ、この世界にこんナ素晴らしい生き物が居たナんて、こんナ、こんナ……!」
興奮した様子の死神は、荒い息のままこちらに背を向けゴソゴソと前かがみになり下穿きを下ろ――はっ!?
(ちょ、ちょっと、あれ何してるの!?)
(何って、『ナニ』じゃないですか?)
平然と答えたバンパイアの言葉にクラリとする。いや、だって、手(単体)に性的興奮って、レベル高すぎ……
ここで我に返った私は、引き付けを起こしたように痙攣している専属メイドを視界に捕らえる。掴まれた彼女はそのままペロの下半身へと導かれ消えていった。
「ぎゃぁぁぁー!! 手首ちゃーん!!!」
それから数分後、間一髪(?)救出に成功した手首ちゃんは地面に倒れぐったりとしていた。ありがとう手首ちゃん、おつかれ手首ちゃん、後でお風呂入ってしっかり洗おうね。……でもごめん、正直いまのキミには触りたくないわ。
そしてペロはと言うと、荒縄で縛られ転がされた状態でもなお、手首ちゃんに熱い視線を送り続けていた。長い前髪で目は見えないけど何となく雰囲気でわかる。庇うように間に立っている私にその視線が突き刺さる。痛い。
「あああ~キミは僕の女神ダ!天使ダ! お願いだヨ、姿をよく見せてオくれ」
狂おしいほど切ない声で懇願するのだけど、その女神で××しようとした人なんかにうちの手首ちゃんはやれません。しっしっ
腰に手をあて仁王立ちした私は、先ほどからガン無視されていることも相まって強い声で呼びかける。
「ちょっと、求愛する前に私に何か言うことあるんじゃない?」
そこで初めてこちらの存在に気が付いたのか、ほっそりとした顎を地面から浮かせたペロは少しだけ首を傾げたあと「あ」と声を漏らした。
「マオちゃんダ」
「そう、あなたに悪徳商品売りつけられたマオちゃん、もといハーツイーズ国の魔王あきらです。こんばんは」
へ?と間抜けな声を漏らすその背中に、ドカッと足が置かれて踏みつけられる。荒縄の端を持ったグリはいつもの平坦な声で久しぶりの再会を喜ばなかった。
「出来れば会いたくなかったけど、久しぶり~」
「あだだだダ! 痛い痛い痛イっ、あっ、あっ、でもちょっとだけ気持ちい――ぐェッ」
うわぁ、本格的にヘンタイだぁ。
最後まで言わせず、死神様が頭を踏んづけて乗り越える。だからコイツは嫌なんだと小さく零した後、その目の前にしゃがんで小さく手を振った。
「なに、こっちじゃペロとか名乗ってるの? ¶Λォζ」
「Ёщ∞゛!」
聞き取れない発音に目を丸くしていると、気配に気づいたのかグリが首だけ振り向いて「俺の本名」と教えてくれた。
「死神の言語って、こっちの人の声帯じゃ発音できないから」
そうだったんだ。確かにグリム・リーパーで「グリ」っていうのは安直すぎるとは思ってたけど。あ、だからペロは片言なのか。こっちの言語を喋り慣れていないってわけね。
「まぁ便宜上、ここではペロで通しますよ。さてペロさん、こうなった以上素直に白状した方が身の為ですよ」
ここでそれまで黙っていた吸血鬼が、さながら尋問員のように冷徹な笑みを浮かべて彼の締め付けをきつくする。前々から思ってたんだけど、誰かを痛めつける時のルカほど生き生きしてる物はないよね……黒い官帽とか制服とか鞭とか持たせたら似合いそう。
(ちなみに言うと、現在ペロは見事な亀甲縛りをされている。手際よく縛り上げたのは他でもないこのドSの側近さんである……怖くてつっこめないけど、あのテクが私に向けられないことを祈るばかり)
「さて、我が国に悪徳商品を売りつけてくれた落とし前はどう着けて貰いましょうか」
どこかアブノーマルな雰囲気が漂う中、キッと顔を上げたペロは怒ったように言い放った。
「ちょっと待ってヨ! 悪徳商品とは聞き捨てならないネ! マオちゃんとは誠実な取り引きをしたつもりだヨ!!」
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てっ、手首でででで
あばっ あばばばばば
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