召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~

紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ

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66.とれたて・ピチピチ・海の幸

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 身の潔白を主張するペロの言い分を聞き終えたちょうどその頃、丘のふもとから上がってきた小柄な影がこちらに向かって大きく手を振りながら声をあげた。

「アキラさまぁー、逃げちゃったマンドラゴルァ、ぷー兄ぃが全部捕まえてくれたよー」
「えっ、本当!?」

 ちょうどよかった、こちらも対処法を聞き終えたところだと言いかけて、彼の後ろにずららーっと連なっているブツを見た私はうわっと声を漏らした。頭の草で数珠繋ぎになったマンドラゴルァ達が、ピクリともせずに引きずられている。

「頭の草を縛るでしょ?」
「知ってたの?」
「ううん、偶然発見しただけ」

 ニコッと笑ったライムは一番目を渡してくれる。って、あちゃぁ、三体目以降が引きずられて大根おろしみたいになってる。

 まぁ、よく洗えば食べれるかなんて考えていると、床に転がされた人物を発見した少年はあーっ!と指さしながらその眼前にしゃがみこんだ。

「これがウワサの死神さん? うわぁー、ポポル達が言ってた通りホントにうさんくさーい!」
「どうモ、ペロだヨ。手首ちゃんのフィアンセになったノ、よろしくネ」

 一方的な婚約宣言に、手首ちゃんがギョッとしたように固まる。そしてものすごい勢いで手をブンブンと振り始めた。必死だ……。

「あれ、そういえばラスプは?」

 マンドラゴルァを捕まえてくれた張本人が居ないと見回した私は、いつの間にか丘のふもとにぽつんと影が現れているのに気が付いた。今日は朔なのでよく見えないけど……ラスプ? でもそれにしてはシルエットが変だ。お年寄りみたいに腰を曲げて、背中の上に大きな荷物を乗っけているように見える。夜目が効く人外さんたちにはその距離でも見えたようで、両隣にいたルカとグリからそれぞれ驚きの声が上がった。なに、あれ。

「ビックリでしょ、ボクもまさか森の中で会うとは思わなかったよー」
「ライムおまえぇぇ、少しは手伝え……っての!!」

 恨みがましい声を出しながら丘を登ってきた彼は、背負っていた荷物をほとんど投げ捨てるように地面に落とした。水を張った桶に入っていた人物を見た私はポカンと口を開ける。

 ふちにもたれて目を回していたのは、波打つ藍色?青色?の、髪を背中に流した女の子――なんだけど、腰から下が明らかにヒトではない。張りのある筒状の下半身は下に行くにつれてキュッと締まり、規則正しく貼られたタイルのようなウロコがわずかな星明かりを反射してキラキラと輝いている。優美な白い尾ひれが桶の中でゆらゆらと揺れていて、そう、これはまさに

「に、人魚ぉ!?」

 おとぎ話のヒロインで有名な種族の登場に、思わず大きな声を出してしまう。返事をするようにぽちょり、と尾ひれが水面を打った。


 ***


 とりあえず中に運び込もうと言うことで、タライに入った人魚さんは城の入口近くに作られた医務室へと担ぎ込まれた。

 ところが目立った外傷はなく、ただ単に干上がっていただけらしい彼女はそれから数分もしない内に目を覚ました。ぽやぽやと微笑んだかと思うと、口の前で両手の指先を合わせながら間延びした声で話し出す。

「いやはや~お騒がせ致しました~、まさかお城にたどり着く前に手持ちの水が無くなってしまうとはぁ~」

 明るいところで見た彼女は、まさに人魚のお姫様と呼ぶにふさわしい容姿をしていた。深い海のような青色のふわふわ髪には細かい真珠のアクセサリーが散りばめられ、浅葱色のぱっちりとした瞳はアクアマリンのよう。下半身の魚部分はぷりっとして何とも美味しそ――じゃなくて、荒波にも負けず引き締まっていることがわかる。さぞかし刺身にしたら――ではなく、海では優雅に泳いで、濃い目の甘口で煮付けても――フライにして――シンプルに塩焼きでも――だあぁぁ、もう! しばらくおさかな食べてないから思考がどうしてもそっちに!

「主様、よだれ」
「ちっ、違いますーっ、これは心の汗ですー!」
「目ではなく口から出るんですか」

 ルカのツッコミは聞かなかった事にして、相変わらずぽやんとした表情を浮かべている人魚さんに向き直る。頭の上に「?」とでも浮かんでいそうな彼女は、くっ、巨乳だな! 全体的に肉付きがよくてぽっちゃりとしているけど、ムチムチしてて何て言うんだろう、健康的な色気って言うのかな? グラビアアイドルみたいな体型だ。あ、貝ブラじゃなくて普通にレザーっぽい胸当てなんだ。

「改めまして~、人魚族の『一番尾』、ピアジェと申します~」

 一点の曇りもない太陽みたいな笑顔で手を差し出されて握り替えす。吸いつくようになめらかな肌ざわりなんだけど、やっぱりちょっとだけヒトとは違うようでひんやりと冷たい。不思議な触感に手をグッパしていると、なぜかホッとしたようにピアジェは胸をなでおろした。

「新生魔王様のウワサはデマだったんですねぇ、出会いがしらに食べられるかと思ってちょっとだけビクビクしてました~」
「えっ、嘘、なにその噂!?」

 ないないない! どんな尾ひれが付いて回ってるのよ、人魚だけに――ってやかましいわ!

 心中で一人ツッコミを入れ、腰に手をあてて怒ったような仕草をしてみせる。まったくもう、間違った情報が出回る前に正さないと。

「あのね、いくら魔王とは言え面会に来る人を片っ端からムシャムシャ食べるわけないでしょ」
「ですよねぇ、こんな華奢な方なのに、どこからそんなウワサが出たんでしょう? 軽く二十人前は平らげるとか、脚がついてればテーブルでも食べるとか」
「……」

+++

手首です。前回はお見苦しいところをお見せして申し訳ございませんでした…
ペロ…様は、処分保留ということで、今夜一晩は例の檻に入れて外で放置されるようです。
彼のようなタイプの方とは初めてお会いしましたので動揺してしまいましたが、メイドとしてのおもてなしは最低限させて頂くつもりです。えぇ
……がんばります。
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